メディア終端ポイントの概要
メディア終端ポイントは、コール保留、コール転送、コール パーク、会議などの補助サービスを拡張します。これらの機能は、コールが H.323 エンドポイントにルーティングされる場合は、MTP がないと使用できません。一部の H.323 ゲートウェイ上で補助コール サービスを使用可能にするには、コールに MTP を使用する必要が生じることがあります。ただし、通常、Cisco IOS ゲートウェイは MTP を必要としません。
Cisco IP Voice Media Streaming Application MTP は、2 種類の全二重 G.711
Coder-Decoder(CODEC)ストリーム接続を使用します。MTP は、2 つの接続間でメディア ストリームのブリッジ処理を行います。ブリッジ処理では、一方の接続の入力ストリームから受信したストリーミング データが他方の接続の出力ストリームに進み、他方の接続の受信ストリーミング データが逆に一方の出力ストリームに進みます。さらに、MTP は、2 つの接続の要求に応じて、a-law から mu-law へトランスコーディング(およびその逆のトランスコーディング)、およびパケット サイズの調整を行います。
各 MTP は、デバイス プールに属しています。デバイス プールには、優先順に配列された Cisco CallManager のリストが指定されており、デバイス プールのメンバーであるデバイスが CallManager に登録しようとするときは、そのリストの順に行う必要があります。このリストは、Cisco CallManager グループを示します。リストの最初の Cisco CallManager が、デバイスのプライマリ Cisco CallManager です。
MTP デバイスは、プライマリ Cisco CallManager が使用可能ならば常にその Cisco CallManager に登録され、サポートしている MTP リソース数を Cisco CallManager に通知します。Cisco CallManager は、MTP リソースを制御します。複数の MTP を、同一の Cisco CallManager に登録できます。ある特定の Cisco CallManager に複数の MTP が登録されている場合、その Cisco CallManager は、各 MTP のリソース セットを制御します。また、必要に応じてネットワーク システム全体に MTP を分散させることもできます。
たとえば、MTP サーバ 1 が、48 個の MTP リソース用に設定されているとします。MTP サーバ 2 は、24 個のリソース用に設定されているとします。したがって、両方の MTP が同一の Cisco CallManager に登録されると想定すると、その Cisco CallManager は、両方のリソース セットを保持し、合計で 72 個の MTP リソースが登録されることになります。
Cisco CallManager は、コール エンドポイントで MTP が必要と判断すると、アクティブ ストリームが最も少ない MTP から MTP リソースを割り当てます。その MTP リソースは、エンドポイントのためにコールに挿入されます。MTP リソースの使用は、システムのユーザにも、そのためにリソースが挿入されたエンドポイントにも見えない形で行われます。MTP リソースが必要なときに、そのリソースが使用できない場合、コールは MTP リソースを使用せずに接続されるため、そのコールは補助サービスを利用できないことになります。
MTP デバイスを設定したサーバ上で、Cisco IP Voice Media Streaming アプリケーションが有効になっており、動作していることを確認してください。
Cisco IP Voice Media Streaming アプリケーションは、MTP、Conference Bridge、Annunciator、および保留音の各アプリケーションに共通で、Windows 2000 サービスとして動作します。
MTP デバイスは、次の 2 つの方法で追加できます。
• Cisco CallManager Serviceability から Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスを有効にすると、MTP デバイスが自動的に追加される。
• ネットワーク上のサーバに Cisco IP Voice Media Streaming Application を手動でインストールし、そのサーバ上で Cisco CallManager Administration を使用して MTP デバイスを設定する。
SIP および MTP
SIP コールを行うには、Cisco CallManager に RFC 2833 DTMF 準拠の MTP デバイスが必要です。現在の SIP 標準では DTMF トーンを示すためにインバンド ペイロード タイプを使用し、SCCP IP Phone などの Cisco コンポーネントはアウトオブバンド ペイロード タイプだけをサポートします。したがって、RFC 2833 に準拠する MTP デバイスはペイロード タイプを監視し、インバンド ペイロード タイプとアウトオブバンド ペイロード タイプ間でトランスレータの役割を果たします。
MTP デバイスを使用すると、メディア変更(コール保留など)が必要なサービスはすべて透過的に行われます。メディア更新シグナルを SIP プロキシ サーバへ送信する必要はありません。
メディア リソース マネージャによる MTP の管理
メディア リソース マネージャは、Cisco CallManager システムのソフトウェア コンポーネントであり、その主な機能はリソース登録とリソース予約です。データベースに定義されている各 MTP デバイスは、MRM に登録されます。MRM は、システムで使用可能な MTP デバイスの総数、および使用可能なリソースのあるデバイスを常に把握しています。
リソースの予約時に、MRM はリソース数を判別し、メディア リソース タイプ(この場合は MTP)、および登録済み MTP デバイスの場所を識別します。MRM は、登録情報を使用して共有リソース テーブルを更新し、クラスタ内の他の Cisco CallManager に登録情報を伝搬します。
MRM は、CallManager クラスタ全体にリソースを振り分けて機能の効率と経済性を高めることで、Cisco CallManager の MTP、保留音、Conference Bridge、およびトランスコーダの各デバイスを強化します。
また MRM は、Cisco CallManager 内における MTP とトランスコーダの共存もサポートしています。
Cisco CallManager Administration における MTP のタイプ
Cisco CallManager Administration には、 表24-1 に示すメディア終端ポイントのタイプがあります。
表24-1 メディア終端ポイント タイプ
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Cisco IOS Enhanced Software Media Termination Point |
このタイプは Cisco 2600XM、Cisco 2691、Cisco 3725、Cisco 3745、および Cisco 3660 アクセス ルータをサポートし、次の場合の MTP をサポートします。 • G.711 から G.711、または G.729 から G.729 コーデックをサポートするデバイスで、ソフトウェアだけを実装するとき、DSP は使用しないもののパケット化にかかる時間が同じであれば、ゲートウェイごとに最大 500 セッションをサポート。 • G.711 コーデックだけを使用するデバイスで DSP を使用してハードウェアだけを実装する場合、NM-HDV2 ごとに 200 セッション、NM-HD ごとに 48 セッションをサポート。
ヒント Cisco IOS Enhanced Software Media Termination Point は RFC 2833(DTMF リレー)をサポートしません。
このタイプはサービス プロバイダー環境においてネットワーク アドレス変換をサポートし、プライベート アドレスを隠すことができます。 Cisco CallManager Administration では、ゲートウェイ Command Line Interface(CLI; コマンドライン インターフェイス)で、存在する同じ MTP 名を入力するようにしてください。 |
Cisco Media Termination Point Software |
1 つの MTP は、デフォルトで 48 個(ユーザ設定可能)の MTP リソースを提供する。ただし、この数はネットワークとネットワーク インターフェイス カード(NIC)の速度に応じて変わります。たとえば、100 MB の Network/NIC カードは 48 個の MTP リソースをサポートできますが、10 MB の NIC カードは同数のリソースをサポートできません。 10 MB の Network/NIC カードの場合、約 24 個の MTP リソースを提供可能である。しかし、使用可能な MTP リソースの正確な数は、その PC 上の他のアプリケーションが使用するリソース量、プロセッサの速度、ネットワークの負荷、およびその他のさまざまな要因によって決まります。 |
ソフトウェア MTP 設定の計画
プロビジョニングは、MTP リソースを展開する際に考慮する必要がある重要な点の 1 つです。プロビジョニングでは、コールの負荷パターンとネットワーク トポロジの慎重な分析が必要となります。
MTP 設定を計画する際は、次の情報を考慮に入れてください。
• 設定が不適切の場合は、作業負荷が増えたときに期待するパフォーマンスにならない可能性がある。
• 1 つの MTP は、デフォルトで 48 個(ユーザ設定可能)の MTP リソースを提供する。ただし、この数はネットワークとネットワーク インターフェイス カード(NIC)の速度に応じて変わります。たとえば、100 MB の
Network/NIC カードは 48 個の MTP リソースをサポートできますが、10 MB の NIC カードは同数のリソースをサポートできません。
• 10 MB の Network/NIC カードの場合、約 24 個の MTP リソースを提供可能である。しかし、使用可能な MTP リソースの正確な数は、その PC 上の他のアプリケーションが使用するリソース量、プロセッサの速度、ネットワークの負荷、およびその他のさまざまな要因によって決まります。
サーバが 48 個の MTP リソースを処理できると想定する場合(48 でなくても、システムがサポートする適正な MTP リソースの数を適用できます)、システムに必要な MTP のおおよその数を決定するには、次の式で検討してください。
n を 48 で割った値 = 必要な MTP アプリケーション数( n /48 = MTP アプリケーション数)
ただし、
n は H.323 および SIP コールの MTP サポートを必要とするデバイスの数を表します。
余りが生じた場合は、MTP を設定した Cisco IP Voice Streaming Application サーバをもう 1 つ追加します。
• 1 つの H.323 または SIP エンドポイントが MTP を必要とする場合、1 つの MTP リソースが消費される。発信側と終端のデバイス タイプによっては、1 つのコールによって複数の MTP リソースが消費される場合があります。そのコールに割り当てられる MTP リソースは、そのコールが終了すると解放されます。
• MTP リソースの使用状況を監視するには、Performance Monitor を使用する。Performance Monitor カウンタである Media TermPoints Out of Resources は、MTP リソースが要求されたときに、H.323 または SIP コールがリソースなしで接続するたびに増えます。この数値は、発信側に必要な MTP リソース数を決定したり、十分なリソース数があるか判別したりするのに役立ちます。
• 同じシステム要件が、Cisco IP Voice Media Streaming Application、MTP、および Cisco CallManager システムに適用される。
• SIP コールを行うには、Cisco CallManager に RFC 2833 DTMF 準拠の MTP デバイスが必要である。
ソフトウェア MTP デバイスの特性
Full Streaming Endpoint Duplex Count は、特定の MTP によってサポートされている MTP リソースの数で、MTP デバイス設定に特有のデバイス特性を示します。すべての MTP デバイス設定の詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「ソフトウェア MTP の設定値」を参照してください。
コール失敗またはユーザ アラートの回避
コール失敗またはユーザ アラートを防ぐには、次の状態を避けてください。
• Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスは Cisco CallManager と同一 PC 上で動作できますが、シスコでは、同一 PC 上で実行しないように強く推奨します。Cisco IP Voice Media Streaming Application が Cisco CallManager と同一 PC 上で動作していると、Cisco CallManager のパフォーマンスに悪影響を与えることがあります。
• MTP の設定時に、変更を有効にするには MTP をリセットするように求められます。MTP をリセットしても、MTP リソースに接続されているコールの接続は解除されません。 Reset を選択した場合、MTP にアクティブ コールが処理された後で、ただちに変更が有効になります。
(注) MTP の設定を更新した後で、Restart を選択すると、MTP に接続されているコールがすべて終了されます。
MTP のシステム要件と制限
ソフトウェア MTP デバイスに適用されるシステム要件と制限は、次のとおりです。
• 各サーバで有効にすることができる Cisco IP Voice Streaming Application は 1 つに限定する。追加の MTP リソースを提供するには、ネットワーク上にある他の Windows NT サーバで Cisco IP Voice Streaming アプリケーションを有効にすることができます。
• 各 MTP に登録できる Cisco CallManager は 1 台に限定する。システム内には、設定内容に応じて、複数の MTP を存在させることができます。各 MTP は、1 台の Cisco CallManager に登録されます。
• Cisco CallManager のパフォーマンスに悪影響を与えることがあるため、Cisco IP Voice Streaming Media Application をコール処理の負荷が大きい Cisco CallManager 上で有効にしないことを強く推奨する。
• 設定可能な半二重ストリーム数は、最大で 128。
• ストリーム数を 128 に設定した場合、メディア終端ポイント アプリケーション用に使用可能な全二重リソース数は、64。
MTP のフェールオーバーとフェールバック
この項では、MTP デバイスが登録されている Cisco CallManager が到達不能になる場合に、MTP デバイスがフェールオーバーとフェールバックを行う方法について説明します。また、MTP のリセットや再起動など、MTP デバイスに関連したコールに影響する状況についても説明します。
• 「アクティブな Cisco CallManager が非アクティブになった場合」
• 「登録済みの MTP デバイスのリセット」
アクティブな Cisco CallManager が非アクティブになった場合
次に、MTP が登録されている Cisco CallManager が非アクティブになった場合に、MTP デバイスを回復する方法を説明します。
• プライマリ Cisco CallManager に障害が発生した場合、MTP は、MTP の所属するデバイス プールに対して指定された Cisco CallManager グループ内で、次に使用可能な Cisco CallManager に登録しようとする。
• プライマリ Cisco CallManager が障害発生後に使用可能になり、現在使用されていない場合、MTP デバイスは即時にプライマリ Cisco CallManager に再登録する。
• コール保存モードでアクティブであったコールまたは会議は、すべてのパーティが切断するまで、システムによって維持される。システムは、補助サービスを使用可能にしません。
• MTP が新しい Cisco CallManager への登録を試み、登録確認応答を受信しなかった場合、MTP はその次の Cisco CallManager への登録を行う。
登録済みの MTP デバイスのリセット
MTP デバイスは、ハード リセットまたはソフト リセット後に登録を解除し、続いて接続を解除します。リセットが完了した後、デバイスは Cisco CallManager に再登録します。
Dependency Records
特定のメディア終端ポイントがどのメディア リソース グループを使用しているかを検索するには、Cisco CallManager Administration Media Termination Point Configuration ウィンドウにある Dependency Records リンクをクリックします。Dependency Records Summary ウィンドウに、メディア終端ポイントを使用しているメディア リソース グループに関する情報が表示されます。メディア リソース グループについて詳細な情報を検索するには、メディア リソース グループをクリックして Dependency Records Details ウィンドウを表示します。Dependency Records がシステムで有効にされていない場合は、Dependency Records Summary ウィンドウにメッセージが表示されます。
Dependency Records の詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Dependency Records へのアクセス」および「メディア リソース グループの削除」を参照してください。
ソフトウェア MTP のパフォーマンス モニタリングおよびトラブルシューティング
メディア終端ポイントの Microsoft Performance Monitor カウンタを使用すると、現在使用中のメディア終端ポイント数、現在 Cisco CallManager に登録はされているが現時点で使用中ではないメディア終端ポイント数、メディア終端ポイントがコールにより要求されたが使用できるリソースがなかった回数を監視することができます。Performance Monitor カウンタの詳細については、『 Cisco CallManager Serviceability システム ガイド 』および『 Cisco CallManager Serviceability アドミニストレーション ガイド 』を参照してください。
Cisco CallManager はメディア終端ポイントに関するすべてのエラーを Event Viewer に書き込みます。Cisco CallManager Serviceability で Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスのトレースを設定することができます。多くの問題のトラブルシューティングを行うには、サービスの Error オプションではなく、Significant オプションまたは Detail オプションを選択する必要があります。問題のトラブルシューティング後に、サービスのオプションを Error オプションに戻します。
Cisco CallManager は Cisco CallManager Serviceability でメディア終端ポイントの登録アラームおよび接続アラームを生成します。アラームの詳細については、『 Cisco CallManager Serviceability アドミニストレーション ガイド 』および『 Cisco CallManager Serviceability システム ガイド 』を参照してください。
テクニカル サポートが必要な場合、Cisco パートナーや Cisco Technical Assistance Center(TAC)に連絡する前に、C:\Program Files\Cisco\Trace\CMS\cms*.* および C:\Program Files\Cisco\Trace\CCM のソフトウェア MTP ログを検索し見直してください。
ソフトウェア MTP 設定チェックリスト
表24-2 では、MTP を設定する際のチェックリストを示しています。
表24-2 MTP 設定チェックリスト
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ステップ 1 |
必要な MTP リソース数と、これらのリソースの提供に必要な MTP デバイス数を決定します。 |
「ソフトウェア MTP 設定の計画」 |
ステップ 2 |
Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスが、MTP を追加するサーバ上で有効になっており、動作していることを確認します。 |
『 Cisco CallManager Serviceability アドミニストレーション ガイド 』 『 Cisco CallManager Serviceability システム ガイド 』 |
ステップ 3 |
MTP を追加し、設定します。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Media Termination Point の追加」 |
ステップ 4 |
新しい MTP を適切なメディア リソース グループに追加します。 |
「メディア リソースの管理」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「メディア リソース グループの設定値」 |
ステップ 5 |
MTP デバイスを再起動します。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Media Termination Point の更新」 |