シスコは、異なるコンピュータシステム間の通信を実現する目的で 1984 年にスタンフォード大学の 2 人のコンピュータ科学者によって設立されました。37 年経った今でも、シスコのミッションは変わっていません。シスコは表現の自由とオープンなコミュニケーションを支持しており、インターネットがもたらす自由とエンパワーメントの恩恵を世界中の人々が享受できるように政策を推進することの大切さを認識しています。そのため、プライバシーや表現の自由など人権を推進するオープンでグローバルな基準に従って製品を開発し、情報へのアクセス拡大とイノベーションの推進を今も引き続き目標としています。
2011 年の国連のビジネスと人権に関する指導原則に定められているように、企業には、国際的に認められた人権と基本的自由を尊重する責任があります。他者への人権侵害を回避し、自社に関わる人権への悪影響に対処することも含まれます。この重大な責任を果たすべく、2012 年に公開されたシスコのグローバル人権ポリシーに、すべての人の人権を守り尊重するという長期的なコミットメントを明記しています。さらに 2018 年には、未来を形作る革新的なテクノロジーの開発と使用についての人権に関する立場表明を発表しました。暗号化や、データ主権とデータローカリゼーション、政府による監視、IoT、ビッグデータ分析、人工知能に関する人権への潜在的な影響に関するシスコの見解と、人権への潜在的な悪影響にどのように対処するつもりなのかを明確にしています。
さらにテクノロジー分野では、特にネットワークセキュリティによって人権を大きく保護できます。ネットワーク セキュリティ技術によって、人々はプライバシーを保ちながら、仕事や電子メールメッセージの送信、インターネットの閲覧、記事の閲覧、ブログの投稿、ショッピングができます。シスコは、ネットワークセキュリティ製品を提供できる業界リーダーであることを誇りに思っています。データとインターネットアクセスの安全性を確保するように設計された製品は、世界中の人権を推進するために極めて重要であると考えます。
ネットワークセキュリティを強化するのと同じ機能がエンドユーザーによって導入され、こうした原則が覆される場合もあります。思想の自由がもたらす力を恐れる国の政府は、インターネットユーザーを外部の脅威から保護するために設計されたセキュリティ技術そのものを悪用し、表現の自由を阻害しようとしています。これらの機能を使用すれば、国民が外部ソースから情報をアクセスしたり、入手したり、共有したり、また外部ソースとこうした情報のやりとりをするのを阻むことができます。その結果、プライバシーと表現の自由という国民の権利が侵害されます。
残念ながら、表現の自由を損なうような悪用もできる強力なセキュリティ機能を自由に使えるようにする以外で、ネットワーク(およびエンドユーザー)を保護するために必要な機能をネットワーク管理者に提供する効果的な方法はありません。こうしたセキュリティ技術を無効にすると、ネットワークとそのユーザーが危険にさらされます。たとえばネットワークでのディープ パケット インスペクション(DPI)の使用を考えてみましょう。このユビキタスネットワーキングとセキュリティ機能があれば、ネットワーク トラフィック パケットを可視化し、マルウェア、DDoS 攻撃のリスク、ウイルス、スパムなどのセキュリティ脅威を検出してブロックできます。優れた DPI テクノロジーは、ネットワークエンドユーザーのセキュリティを保護するためのものです。しかし、このテクノロジーが、各国政府によって、情報の流れの統制と検閲を推進し、望ましくない Web サイトへのアクセスをブロックし、暗号化されたコミュニケーションツールの使用を制限するために使用(誤用)されているといわれる報道が 10 年以上にわたり見られます。
政府はセキュリティ技術を導入し、対立するコンテンツへのアクセスをシャットダウンすることで、情報への自由なアクセスをますます制限しています。こうした遮断措置を実施する場合、通常は通信会社やインターネット サービス プロバイダーに対して命令が出されます。合わせて透明性を制限するかん口令が敷かれることも珍しくありません。このような企業は多くの場合、政府の管理下にあるか、政府のライセンスに依拠して事業を展開しているため、命令に従わざるを得ません。Access Now によると、2018 年だけでも 25 か国で 196 件のインターネットの遮断が記録されています。遮断命令は多くの場合、抗議活動への対応、選挙の準備、違法行為または政策違反行為を防止するために出されます。理由は何であれ、インターネットの遮断は、情報へのアクセス権、表現の自由、平和的集会の権利などの人権に直接的な影響を与えます。
シスコは、自社の製品に関して数十年にわたり堅持してきた社内ルールに今後も則り、シスコの事業活動が情報へのアクセス権と表現の自由を損なうことのないようにします。
- グローバルな基準に基づいて設計された同じ製品を全世界で販売し、情報の自由な流れを強化します。
- シスコのネットワーキング製品には、インターネットの基本的な運用に不可欠な基本機能が搭載されています。
- 基本機能は、なければインターネットの大部分はまともに機能しませんが、残念ながらネットワーク管理者が政治や別の目的で使うこともできます。
- シスコは、さまざまな政治組織がこれらの権利や自由を侵害するべく情報へのアクセスをブロックできるようにするために、特殊な機能や独自のフィルタリング機能をカスタマイズまたは開発することはありません。
シスコは、多くの場合、これらの機能が日々どのように使用されているかを判断する立場にありません。そこで、上記の原則を推進するため、さらに次の措置を講じます。
- インターネットの断片化や「クローズド」なインターネットの構築を目指す各国政府の試みを支持しません。
- 正当な法的手続きに沿った有効な裁判所命令に対応する場合を除き、Voice over Internet Protocol(VoIP)を使用してインターネット経由で行われた通話の傍受はサポートしません。
- シスコのセキュリティ脆弱性ポリシーに従い、製品開発プラクティスでは、デバイスやネットワークへの不正アクセス、デバイスの機密情報の漏洩、セキュリティ機能や制限の回避(未公開のデバイスアクセス方法や「バックドア」を含むがこれに限定されない)の実現を目的とする意図的な行動や製品機能の一切を禁じます。
シスコのネットワーキング製品とセキュリティ製品が人権を推進する大きな機会となることは、かつてないほど明確になっています。しかし政府は、これらのツールを悪用して、国民が互いに自由にアクセスし、思想を受け取り、共有する力を統制できます。シスコは人権へのアプローチを通じて、人権を尊重したテクノロジーの利用を引き続き推進していきます。