スイッチ スタックの概要
スイッチ スタック は、StackWiseポートを介して接続された最大9台のCatalyst 3750スイッチから構成されます。スイッチのうち1台がスタックの動作を制御し、このスイッチは スタック マスター と呼ばれます。スタック マスターとスタック内の他のスイッチが、 スタック メンバー です。スタック メンバーは、Cisco StackWiseテクノロジーを使用して、1つの統合システムとして連携し動作します。レイヤ2およびレイヤ3プロトコルは、ネットワークに対して、スイッチ スタック全体を単一のエンティティとして提供します。
スタック マスターは、スタック全体を管理するための単一拠点となります。スタック マスターから、次のものを設定します。
• すべてのスタック メンバーに適用されるシステムレベル(グローバル)の機能
• スタック メンバーごとのインターフェイスレベルの機能
スイッチ スタックは、 ブリッジID によって、または、スイッチ スタックがレイヤ3デバイスとして動作している場合はルータMACアドレスによって、ネットワーク内で識別されます。ブリッジIDとルータMACアドレスは、スタック マスターのMACアドレスによって決まります。各スタック メンバーは、専用の スタック メンバー番号 によって一意に識別されます。
スタック メンバーはすべて、スタック マスターになる条件を満たしています。スタック マスターが使用不能になると、残りのスタック メンバーの中から新たなスタック マスターが選択されます。さまざまなファクタによって、どのスイッチがスタック マスターになるかが決まります。そのファクタの1つが、 スタック メンバー プライオリティ値 です。最高のプライオリティ値を持つスイッチが、スタック マスターになります。
スタック マスターでサポートされているシステムレベルの機能は、スイッチ スタック全体でサポートされます。スイッチ スタックにStandard Multilayer software Image(SMI;標準マルチレイヤ ソフトウェア イメージ)を稼働するスイッチとEnhanced Multilayer software Image(EMI;拡張マルチレイヤ ソフトウェア イメージ)を稼働するスイッチの両方が混在する場合は、EMIを稼働しているスイッチをスタック マスターにすることが推奨されます。スタック マスターがSMIを稼働している場合、EMI機能は使用できません。
同様に、SMIまたはEMIの暗号化(つまり、暗号化をサポートする)バージョンを稼働しているスイッチをスタック マスターにすることを推奨します。スタック マスターがSMIまたはEMIの非暗号化バージョンを稼働している場合は、暗号化機能は使用できません。
スタック マスターには、スイッチ スタックの保存済みの実行コンフィギュレーション ファイルが格納されています。コンフィギュレーション ファイルには、スイッチ スタックのシステムレベルの設定と、スタック メンバーごとのインターフェイスレベルの設定が含まれます。各スタック メンバーは、バックアップ目的で、これらのファイルの現在のコピーを保持します。
スイッチ スタックは、単一のIPアドレスを使用して管理します。IPアドレスは、システムレベルの設定値で、スタック マスターや他のスタック メンバー固有の設定ではありません。スタックからスタック マスターや他のスタック メンバーを削除しても、同じIPアドレスを使用してスタックを管理できます。
次の方法を用いて、スイッチ スタックを管理できます。
• NetscapeまたはInternet Explorerブラウザ セッションを介してCMSソフトウェアを使用する。
• いずれかのスタック メンバーへのシリアル接続を介してCLI(コマンドライン インターフェイス)を使用する。
• SNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)を介してネットワーク管理アプリケーションを使用する。
• CiscoWorksネットワーク管理ソフトウェアを使用する。
スイッチ スタックを管理するには、次のことを理解している必要があります。
• スイッチ スタックの形成に関する概念:
–「スイッチ スタックのメンバーシップ」
–「スタック マスターの選択と再選択」
• スイッチ スタックとスタック メンバーの設定方法に関する概念:
–「スイッチ スタック ブリッジIDとルータMACアドレス」
–「スタック メンバー番号」
–「スタック メンバーのプライオリティ値」
–「スイッチ スタック内のハードウェアの互換性」
–「スイッチ スタック内のソフトウェアの互換性」
–「スイッチ スタックのコンフィギュレーション ファイル」
–「スイッチ スタックのシステム全体の設定に関する補足考慮事項」
–「スイッチ スタックの管理接続」
–「スイッチ スタックの設定のシナリオ」
(注) スイッチ スタックは、スイッチ クラスタとは別物です。スイッチ クラスタは、10/100/1000ポートなどのスイッチ自身のLANポートを使用して接続されたスイッチのセットです。スイッチ スタックとスイッチ クラスタの違いの詳細については、「スイッチ クラスタとスイッチ スタック」を参照してください。
スイッチ スタックのメンバーシップ
スイッチ スタックは、StackWiseポートを使用して接続された最大9台のスイッチから構成されます。スイッチ スタックには、常に1台のスタック マスターが存在します。
スタンドアロン スイッチは、スタック マスターとしても動作するスタック メンバーを1つだけ持つスイッチ スタックです。スタンドアロン スイッチを別のスイッチへ接続して(図 5-1を参照)、一方がスタック マスターとなる2つのスタック メンバーを持つスイッチ スタックを作成できます。スタンドアロン スイッチを既存のスイッチ スタックに接続して(図 5-2を参照)、スタック メンバーシップを増やすこともできます。
スタック メンバーを同一のモデルと交換した場合、新たなスイッチは交換されたスイッチと同じメンバー番号を使用していれば、交換されたスイッチとまったく同じ設定で機能します。障害の生じたスイッチを交換する特定の手順については、ハードウェア インストレーション ガイドの「Troubleshooting」の章に記載されています。
スタック マスターを削除したり、電源の入ったスタンドアロン スイッチまたはスイッチ スタックを追加したりしない限り、メンバーシップの変更中も、スイッチ スタックの動作は間断なく継続されます。
(注) • スイッチ スタックに追加または削除するスイッチの電源が切断されていることを確認します。
• スタック メンバーを追加または削除したあとで、スイッチ スタックがすべての帯域幅(32 Gbps)で動作していることを確認します。スタック モードLEDが点灯するまで、スタック メンバーのModeボタンを押します。スタック内のすべてのスイッチの最後の2つのポートLEDは、グリーンに点灯します。スイッチ モデルに応じて、最後の2つのポートは10/100/1000ポートまたはSmall Form-factor Pluggable(SFP)モジュール ポートになります。いずれかのスイッチで、最後の2つのポートLEDの一方または両方がグリーンでない場合、スタックは全帯域幅で稼働していません。
• 電源が入っているスイッチを追加すると(マージ)、マージ中のスイッチ スタックの各スタック マスターは、自分達の中から1台のスタック マスターを選択します。再選択されたスタック マスターは、マスターの役割と設定を保持し、スタック メンバーもメンバーの役割と設定を保持します。それ以前のスタック マスターを含め残りのすべてのスイッチは、リロードされ、スタック メンバーとしてスイッチ スタックに参加します。それらは、スタック メンバー番号を使用可能な最小の番号に変更し、再選択されたスタック マスターのスタック設定を使用します。
• 電源がオンの状態のスタック メンバーを取り外すと、スイッチ スタックがそれぞれ同じ設定を持つ複数のスイッチ スタックに分割(パーティション化)されます。これによって、ネットワーク内でIPアドレス設定が競合してしまうことがあります。スイッチ スタックを分割状態のまま使用する場合は、新規に作成されたスイッチ スタックのIPアドレスを変更します。スイッチ スタックを分割したくない場合は、次の手順を実行します。
a. 新規に作成されたスイッチ スタックの電源を切断します。
b. 新しいスイッチ スタックを、StackWiseポートを介して元のスイッチ スタックに再度接続します。
c. スイッチの電源をオンにします。
スイッチ スタックの配線方法および電源の投入方法の詳細については、ハードウェア インストレーション ガイドの「Switch Installation」の章を参照してください。
図 5-1 2台のスタンドアロン スイッチから構成されたスイッチ スタックの作成
図 5-2 スタンドアロン スイッチのスイッチ スタックへの追加
スタック マスターの選択と再選択
スタック マスターは、次にリストした順番で、いずれかのファクタに基づいて選択または再選択されます。
1. 現在スタック マスターであるスイッチ
2. 最高のスタック メンバー プライオリティ値を持つスイッチ
(注) スタック マスターにしたいスイッチには、最高のプライオリティ値を割り当てることを推奨します。これによって、再選択の実行時には、必ずそのスイッチがスタック マスターとして選択されます。
3. デフォルトのインターフェイスレベルのコンフィギュイレーションを使用していないスイッチ
4. よりプライオリティの高いスイッチ バージョンのスイッチ。次に、最高プライオリティから最低プライオリティへ順番にスイッチ バージョンをリストします。
1. 暗号化EMIソフトウェア
2. 非暗号化EMIソフトウェア
3. 暗号化SMIソフトウェア
4. 非暗号化SMIソフトウェア
5. システムのアップタイムが最長のスイッチ
6. MACアドレスが最小のスイッチ
スタック マスターは、次のイベントのいずれかが発生しない限り、役割を維持します。
• スイッチ スタックがリセットされた。 *
• スタック マスターがスイッチ スタックから削除された。
• スタック マスターがリセットされたか、電源が切れた。
• スタック マスターに障害が発生した。
• 電源の入ったスタンドアロン スイッチまたはスイッチ スタックが追加され、スイッチ スタック メンバーシップが増えた。 *
アスタリスク(*)がマークされたイベントでは、現在のスタック マスターがリストされたファクタに基づいて再選択される 可能性があります 。
スイッチ スタック全体に電源を入れるかリセットすると、一部のスタック メンバーがスタック マスター選択に参加 しない場合があります 。同じ10秒の間に電源が投入されたスタック メンバーは、スタック マスターの選択に参加し、スタック マスターとして選択される可能性があります。10秒間経過後に電源が投入されたスタック メンバーは、この初回の選択には参加せず、単にスタック メンバーになります。再選択には、すべてのスタック メンバーが参加します。スイッチ マスターの選択に影響する電源投入の考慮事項の詳細については、ハードウェア インストレーション ガイドの「Switch Installation」の章を参照してください。
数秒後、新たなスタック マスターが使用可能になります。その間、スイッチ スタックはメモリ内の転送テーブルを使用して、ネットワークの中断を最小限に抑えます。新たなスタック マスターが選択され、リセットされている間、他の使用可能なスタック メンバーの物理インターフェイスには何も影響はありません。
新たなスタック マスターが選択され、以前のスタック マスターが使用可能になっても、以前のスタック マスターはスタック マスターとしての役割は再開 しません 。
ハードウェア インストレーション ガイドに記載されているとおり、スイッチのMaster LEDを使用して、そのスイッチがスタック マスターかどうかを確認できます。
スイッチ スタック ブリッジIDとルータMACアドレス
ネットワーク内のスイッチ スタックは、ブリッジIDとルータMACアドレスによって識別されます。スイッチ スタックが初期化すると、スタック マスターのMACアドレスによってブリッジIDとルータMACアドレスが決定します。
スタック マスターが変わると、新たなスタック マスターのMACアドレスによって、新たなブリッジIDとルータMACアドレスが決定します。
スタック メンバー番号
スタック メンバー番号(1~9)は、スイッチ スタック内の各メンバーを識別します。また、メンバー番号によって、スタック メンバーが使用するインターフェイスレベルの設定が決定します。 show switch ユーザEXECコマンドを使用すると、スタック メンバー番号を表示できます。
新品のスイッチ(スイッチ スタックに参加していないか、手動でスタックメンバー番号が割り当てられていないスイッチ)は、デフォルトのスタック メンバー番号1が設定された状態で出荷されています。スイッチ スタックに参加すると、デフォルトのスタック メンバー番号はスタック内の使用可能なメンバー番号の中で最小の番号に変更されます。
同じスイッチ スタック内のスタック メンバーは、同じスタック メンバー番号を持つことはできません。スタンドアロン スイッチを含む各スタック メンバーは、番号を手動で変更するか、番号がスタック内の別のメンバーによってすでに使用されているかしない限り、自分のメンバー番号を保持します。
• switch current-stack-member-number renumber new-stack-member-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して手動でスタック メンバー番号を変更した場合は、その番号がスタック内の他のメンバーに未割り当てなときにだけ、そのスタック メンバーのリセット後(または、 reload slot stack-member-number イネーブルEXECコマンドの使用後)に、新たな番号が有効となります。スタック メンバー番号を変更するもう1つの方法は、「環境変数の管理」に記載されているとおりに、SWITCH_NUMBER環境変数を変更することです。
その番号がスタック内の別のメンバーによって使用されている場合、スイッチはスタック内で使用可能な最小の番号を選択します。
(注) 手動でスタック メンバーの番号を変更し、新たなメンバー番号にインターフェイスレベルの設定が関連付けられていない場合は、スタック メンバーをデフォルト設定にリセットします。スタック メンバー番号と設定の詳細については、「スイッチ スタックのコンフィギュレーション ファイル」を参照してください。
• スタック メンバーを別のスイッチ スタックへ移動した場合、スタック メンバーは、自分の番号がスタック内の別のメンバーによって使用されていないときにだけ、その番号を保持します。その番号がスタック内の別のメンバーによって使用されている場合、スイッチはスタック内で使用可能な最小の番号を選択します。
• スイッチ スタックをマージした場合、新たなスタック マスターのスイッチ スタックに参加したスイッチは、スタック内で使用可能な最小の番号を選択します。スイッチ スタックのマージの詳細については、「スイッチ スタックのメンバーシップ」を参照してください。
ハードウェア インストレーション ガイドに記載されているとおり、Stackモードのスイッチ ポートLEDを使用して、各スタック メンバーのスタック メンバー番号を目で見て確認できます。
スタック メンバーのプライオリティ値
スタック メンバーのプライオリティ値が高いほど、スタック マスターとして選択され、自分のスタック メンバー番号を保持できる可能性が高くなります。プライオリティ値は1~15までで、デフォルトのプライオリティ値は1です。 show switch ユーザEXECコマンドを使用すると、スタック メンバーのプライオリティ値を表示できます。
(注) スタック マスターにしたいスイッチには、最高のプライオリティ値を割り当てることを推奨します。これによって、再選択の実行時には、必ずそのスイッチがスタック マスターとして選択されます。
switch stack-member-number priority priority-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して、スタック メンバーのプライオリティ値を変更できます。メンバー プライオリティ値を変更するもう1つの方法は、「環境変数の管理」に記載されているとおりに、
SWITCH_PRIORITY環境変数を変更することです。
新しいプライオリティ値はすぐに有効となりますが、現在のスタック マスターには影響しません。新たなプライオリティ値は、現在のスタック マスターまたはスイッチ スタックのリセット時に、どのスタック メンバーが新たなスタック マスターとして選択されるかを決定する場合に影響を及ぼします。
スイッチ スタック内のハードウェアの互換性
Catalyst 3750-12Sスイッチは、デスクトップおよびアグリゲータSwitch Database Management(SDM;スイッチ データベース管理)テンプレートをサポートしています。他のすべてのCatalyst 3750スイッチは、デスクトップSDMテンプレートのみをサポートしています。
スタック メンバーはすべて、スタック マスターに設定されたSDMテンプレートを使用します。スタック マスターがアグリゲータ テンプレートを使用している場合は、Catalyst 3750-12Sスイッチだけがスタック メンバーになることができます。このスイッチ スタックに参加しようとする他のスイッチはすべて、SDM不一致モードになります。これらのスイッチは、スタック マスターがデスクトップSDMテンプレートを稼働している場合にだけ、スタックに参加できます。
Catalyst 3750-12Sスイッチのスイッチ スタックを作成予定の場合に限り、スタック マスターにアグリゲータ テンプレートを使用させることを推奨します。異なるCatalyst 3750スイッチ モデルを持つスイッチ スタックを作成予定の場合は、いずれかのデスクトップ テンプレートを使用するようにスタック マスターを設定してください。
(注) Version Mismatch(VM;バージョン不一致)モードは、SDM不一致モードより優先されます。VMモード条件とSDM不一致モードが存在する場合、スイッチ スタックは先にVMモード条件を解決しようとします。
show switch イネーブルEXECコマンドを使用すると、スタック メンバーがSDM不一致モードになっているかどうかを確認できます。
SDMテンプレートとSDM不一致モードの詳細については、 第8章「SDMテンプレートの設定」 を参照してください。
互換性に関する推奨事項
スタック メンバー間で互換性を確保するには、すべてのスタック メンバーが同じCisco IOSソフトウェア バージョンを稼働している必要があります。
推奨事項は次のとおりです。
• スタック マスターを含めすべてのスタック メンバーのCisco IOSソフトウェア バージョンを同一にします。これは、スタック メンバー間でスタック プロトコル バージョンの完全な互換性を保証する上で役立ちます。たとえば、すべてのスタック メンバーにEMI Cisco IOS Release 12.1(14)EA1をインストールします。
• スイッチ スタックにSMIを稼働するスイッチとEMIを稼働するスイッチを含める必要がある場合は、EMIを稼働するスイッチをスタック マスターにします。スタック マスターがSMIを稼働している場合、EMI機能はすべてのスタック メンバーに対して使用不能となります。
• 少なくとも2つのスタック メンバーにEMIをインストールし、EMI機能の冗長サポートを保証します。スタック メンバーのプライオリティ値が同じ場合は、スタック マスターの選択時に、EMIの方がSMIより優先されます。EMIスタック マスターに障害が生じた場合は、EMIを稼働する他のスタック メンバーがスタック マスターになります。
• EMIを稼働するスイッチが同じバージョンのSMIを稼働するスイッチ スタックに参加しても、EMIスイッチが自動的にスタック マスターになることはありません。EMIスイッチをスタック マスターにしたい場合は、 reload slot stack-member-number イネーブルEXECコマンドを使用して、現在のSMIスタック マスターをリセットします。EMIスイッチのプライオリティ値が他のスタック メンバーと同じかそれ以上の場合は、そのスイッチがスタック マスターとして選択されます。
スタック プロトコル バージョンの互換性
各ソフトウェア イメージには、 スタック プロトコル バージョン が含まれます。スタック プロトコル バージョンには、 メジャー バージョン番号と マイナー バージョン番号があります。両方のバージョン番号によって、スタック メンバー間の互換性レベルが決定します。 show platform stack-manager all イネーブルEXECコマンドを使用すると、スタック プロトコル バージョンを表示できます。
Cisco IOSソフトウェア バージョンが同じスイッチは、スタック プロトコル バージョンも同じです。このようなスイッチは完全に互換可能で、すべての機能がスイッチ スタック全体に渡って適切に動作します。スタック マスターとCisco IOSソフトウェア バージョンが同じスイッチは、すぐにスイッチ スタックに参加します。
非互換性が混在する場合は、互換不能なスタック メンバーが、特定のスタック メンバーとの非互換が生じていることを示すシステム エラー メッセージを生成します。スタック マスターは、すべてのスタック メンバーに対してエラー メッセージを表示します。
次のセクションで、スイッチ スタックの非互換性について詳しく説明しています。
• 「スイッチ間のメジャー バージョンの非互換性」
• 「スイッチ間のマイナー バージョンの非互換性」
スイッチ間のメジャー バージョンの非互換性
多くの場合、異なるCisco IOSソフトウェア バージョンのスイッチは、スタック プロトコル バージョンも異なります。メジャー スタック プロトコル バージョン番号が異なるスイッチは、非互換で同じスイッチ スタック内には存在できません。
スイッチ間のマイナー バージョンの非互換性
スタック マスターとメジャー バージョン番号は同じだがマイナー バージョン番号が異なるスイッチは、部分的に互換可能であるとみなされます。スイッチ スタックに接続されている場合、部分的に互換可能なスイッチはVMモードになり、スタックには参加できません。スタック マスターは、自身が使用しているソフトウェア バージョンを、VMモードのスイッチにダウンロードします。
• VMモードではなく、VMモードのスイッチでも稼働可能なソフトウェアを稼働しているスタック メンバーが存在する場合は、スタック マスターはそのソフトウェアを使用して、VMモードのスイッチ上のソフトウェアをアップグレード(または、ダウングレード)します。VMモードのスイッチは、自動的にリロードされ、完全に機能するメンバーとしてスタックに参加します。
(注) スタック マスターは、自動的には、SMIを稼働するスイッチにEMIをインストールしたり、EMIを稼働するスイッチにSMIをインストールしたりはしません。
• どのスタック メンバーもVMモードのスイッチにインストール可能なソフトウェアを稼働していない場合は、スタック マスターはスイッチ スタックをスキャンして、その他の対処方法がないかどうかを調べます。対処方法は、システム メッセージ ログ内に記録されています。他に対処方法がない場合は、スタック マスターはスイッチ スタックで稼働しているソフトウェアのアップグレードを対処方法として表示します。
VMモードのスイッチのポートLEDがオフのままで、ModeボタンをクリックしてもLEDモードは変更されません。
show switch イネーブルEXECコマンドを使用すると、スタック メンバーがVMモードになっているかどうかを確認できます。
スイッチ スタックのコンフィギュレーション ファイル
コンフィギュレーション ファイルには、次の情報が格納されています。
• すべてのスタック メンバーに適用されるシステムレベル(グローバル)コンフィギュレーション設定 ― IP、STP、VLAN、SNMP設定など
• スタック メンバーのインターフェイス固有のコンフィギュレーション設定 ― 各スタック メンバーに固有
スタック マスターには、スイッチ スタックの保存済みの実行コンフィギュレーション ファイルが格納されています。すべてのスタック メンバーは、定期的に、スタック マスターからコンフィギュレーション ファイルの同期化されたコピーを受け取ります。スタック マスターが使用不能になると、スタック マスターの役割を引き受けたスタック メンバーが最新のコンフィギュレーション ファイルを保持します。
(注) すべてのスタック メンバーにCisco IOS Release 12.1(14)EA1以上をインストールすることを推奨します。これによって、実行コンフィギュレーションがスタートアップ コンフィギュレーションに保存されていない状態でスタック マスターが交換されても、スタック マスターのインターフェイス固有のコンフィギュレーションは確実に保存されます。
新品のスイッチがスイッチ スタックに参加した場合、そのスイッチはスイッチ スタックのシステムレベルの設定を使用します。スイッチが別のスイッチ スタックに移動された場合、そのスイッチは保存済みのコンフィギュレーション ファイルを失い、新たなスイッチ スタックのシステムレベルの設定を使用します。
各スタック メンバーのインターフェイス固有のコンフィギュレーションには、スタック メンバー番号が関連付けられます。「スタック メンバー番号」に記載されているとおり、スタック メンバーは、番号が手動で変更されるか、同じスイッチ スタック内の別のメンバーによってすでに使用されているかしないかぎり、自分の番号を保持します。
• そのメンバー番号に対応するインターフェイス固有のコンフィギュレーションが存在しない場合は、スタック メンバーはデフォルトのインターフェイス固有のコンフィギュレーションを使用します。
• そのメンバー番号に対応するインターフェイス固有のコンフィギュレーションが存在する場合は、スタック メンバーはそのメンバー番号に関連付けられたインターフェイス固有のコンフィギュレーションを使用します。
スタック メンバーに障害が生じ、それを同一のモデルと交換した場合、交換後のスイッチは自動的に、障害の生じたスイッチと同じインターフェイス固有のコンフィギュレーションを使用します。そのため、インターフェイス設定を再設定する必要はありません。交換後のスイッチは、障害の生じたスイッチと同じスタック メンバー番号を持つ必要があります。
スタンドアロン スイッチのコンフィギュレーションの場合と同じ方法で、スタック コンフィギュレーションをバックアップし復元します。ファイル システムとコンフィギュレーション ファイルの詳細については、 付録B「Cisco IOSファイル システム、コンフィギュレーション ファイル、およびソフトウェア イメージの操作」 を参照してください。
IPアドレスによるスイッチ スタックへの接続
スイッチ スタックは単一のIPアドレスを使用して管理されます。IPアドレスは、システムレベルの設定値で、スタック マスターや他のスタック メンバー固有の設定ではありません。スタックからスタック マスターや他のスタック メンバーを削除しても、IP接続は存続していれば、引き続き同じIPアドレスを使用してスタックを管理できます。
(注) スイッチ スタックからスタック メンバーを削除した場合、各スタック メンバーは自身のIPアドレスを保持します。したがって、ネットワーク内で同じIPアドレスを持つ2つのデバイスが競合してしまうのを避けるため、スイッチ スタックから削除したスイッチのIPアドレスは変更しておきます。
スイッチ スタックの設定に関する情報は、「スイッチ スタックのコンフィギュレーション ファイル」を参照してください。
SSHセッションによるスイッチ スタックへの接続
SMIまたはEMIの暗号化(つまり、暗号化をサポートする)バージョンを稼働するスタック マスターに障害が生じ、非暗号化バージョンのソフトウェアを稼働するスイッチと交換された場合には、スイッチ スタックへのSecure Shell(SSH)接続は失われることがあります。SMIまたはEMIの暗号化バージョンを稼働しているスイッチをスタック マスターにすることを推奨します。スタック マスターがSMIまたはEMIの非暗号化バージョンを稼働している場合は、暗号化機能は使用できません。
コンソール ポートによるスイッチ スタックへの接続
1つまたは複数のスタック メンバーのコンソール ポートを経由してスタック マスターへ接続できます。
スタック マスターに複数のCLIセッションを使用する場合は、慎重に行ってください。特定のセッションで入力したコマンドは、他のセッションに表示されません。したがって、コマンドを入力したセッションを識別できなくなることがあります。
(注) スイッチ スタックを管理する場合は、CLIセッションを1つのみ使用することを推奨します。
特定のスタック メンバーへの接続
特定のスタック メンバー ポートを設定する場合は、CLIコマンドのインターフェイス指定部分にスタック メンバー番号を指定する必要があります。インターフェイスの指定方法の詳細については、「インターフェイス コンフィギュレーション モードの使用方法」を参照してください。
特定のスタック メンバーをデバッグするために、 session stack-member-number イネーブルEXECコマンドを使用して、スタック マスターからスタック メンバーへアクセスできます。スタック メンバー番号は、システム プロンプトに付加されます。たとえば、 Switch-2#
はスタック メンバー2のイネーブルEXECモードのプロンプトです。 Switch
は、スタック マスターのシステム プロンプトです。特定のスタック メンバーへのCLIセッションでは、 show コマンドと debug コマンドのみを使用できます。
スイッチ スタックの設定のシナリオ
表 5-1 は、スイッチ スタック機能を決定する方法についてのシナリオを示しています。大半のシナリオは、少なくとも2台のスイッチがStackWiseポートを使用して接続されていることを前提にしています。
表 5-1 スイッチ スタックの設定のシナリオ
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既存のスタック マスターによって、明確に決定されるスタック マスター選択 |
StackWiseポートを使用して2つの電源の入ったスイッチ スタックを接続します。 |
2つのスタック マスターの一方だけが、新たなスタック マスターになります。その他のスタック メンバーはどれも、スタック マスターにはなりません。 |
スタック メンバーのプライオリティ値によって、明確に決定されるスタック マスター選択 |
1. StackWiseポートを使用して、2台のスイッチを接続します。 2. switch stack-member-number priority priority-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して、1つのスタック メンバーにより高いメンバー プライオリティ値を設定します。 3. 両方のスタック メンバーを同時に再起動します。 |
より高いプライオリティ値を持つスタック メンバーがスタック マスターとして選択されます。 |
コンフィギュレーション ファイルによって、明確に決定されるスタック マスター選択 |
両方のスタック メンバーが同じプライオリティ値を持つものと仮定します。 1. 1つのスタック メンバーがデフォルトのコンフィギュレーションを持ち、他のスタック メンバーが保存済み(デフォルトでない)のコンフィギュレーション ファイルを持つことを確認します。 2. 両方のスタック メンバーを同時に再起動します。 |
保存済みのコンフィギュレーション ファイルを持つスタック メンバーがスタック マスターとして選択されます。 |
暗号化EMIによって、明確に決定されるスタック マスター選択 |
すべてのスタック メンバーが同じプライオリティ値を持つものと仮定します。 1. 1つのスタック メンバーに暗号化EMIがインストールされ、他のスタック メンバーには非暗号化EMIがインストールされていることを確認します。 2. 両方のスタック メンバーを同時に再起動します。 |
暗号化EMIがインストールされたスタック メンバーがスタック マスターとして選択されます。 |
EMIによって、明確に決定されるスタック マスター選択 |
すべてのスタック メンバーが同じプライオリティ値を持つものと仮定します。 1. 1つのスタック メンバーに非暗号化EMIがインストールされ、他のスタック メンバーには暗号化SMIがインストールされていることを確認します。 2. 両方のスタック メンバーを同時に再起動します。 |
非暗号化EMIがインストールされたスタック メンバーがスタック マスターとして選択されます。 |
暗号化SMIによって、明確に決定されるスタック マスター選択 |
すべてのスタック メンバーが同じプライオリティ値を持つものと仮定します。 1. 1つのスタック メンバーに暗号化SMIがインストールされ、他のスタック メンバーには非暗号化SMIがインストールされていることを確認します。 2. 両方のスタック メンバーを同時に再起動します。 |
暗号化SMIがインストールされたスタック メンバーがスタック マスターとして選択されます。 |
MACアドレスによって、明確に決定されるスタック マスター選択 |
両方のスタック メンバーが同じプライオリティ値、コンフィギュレーション ファイル、ソフトウェア イメージを持つものと仮定し、両方のスタック メンバーを同時に再起動します。 |
より小さいMACアドレスを持つスタック メンバーがスタック マスターとして選択されます。 |
スタック メンバー番号の競合 |
1つのスタック メンバーが他のスタック メンバーより高いプライオリティ値を持つものと仮定します。 1. 両方のスタック メンバーが同じスタック メンバー番号を持つように確認します。必要に応じて、 switch current-stack-member-number renumber new-stack-member-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。 2. 両方のスタック メンバーを同時に再起動します。 |
より高いプライオリティ値を持つスタック メンバーが、自分のスタック メンバー番号を保持します。他のスタック メンバーは、新たなスタック メンバー番号を持ちます。 |
スタック メンバーの追加 |
1. 新しいスイッチの電源を切ります。 2. StackWiseポートを使用して、新たなスイッチを電源の入ったスイッチ スタックに接続します。 3. 新しいスイッチに電源を入れます。 |
スタック マスターはそのままです。新たなスイッチがスイッチ スタックに追加されます。 |
スタック マスターの障害 |
スタック マスターを削除します(または、電源を切ります)。 |
「スタック マスターの選択と再選択」に記載されたファクタに基づき、残りのスタック メンバーのいずれかが新たなスタック マスターになります。スタック内の他のすべてのスタック メンバーは、スタック メンバーのままで、再起動はされません。 |
9台を超えるスタック メンバーの追加 |
1. StackWiseポートを使用して、10台のスイッチを接続します。 2. すべてのスイッチに電源を入れます。 |
2台のスイッチがスタック マスターになります。一方のスタック マスターが9つのスタック メンバーを制御します。他方のスタック マスターは、スタンドアロン スイッチとして維持されます。 ModeボタンとスイッチのポートLEDを使用して、どのスイッチがスタック マスターで、どのスイッチがどのスタック マスターに属しているかを識別できます。ModeボタンとLEDの使い方の詳細については、ハードウェア インストレーション ガイドを参照してください。 |