SDMテンプレートの設定
この章では、Catalyst 3750スイッチでSwitch Database Management(SDM)テンプレートを設定する方法について説明します。特に明記しないかぎり、 スイッチ という用語はスタンドアロン スイッチおよびスイッチ スタックを意味します。
(注) この章で使用されるコマンドの構文および使用方法の詳細については、このリリースのコマンド リファレンスを参照してください。
この章で説明する内容は、次のとおりです。
• 「SDMテンプレートの概要」
• 「スイッチSDMテンプレートの設定」
• 「SDMテンプレートの表示」
SDMテンプレートの概要
ネットワークでのスイッチの使用状況に応じて、SDMテンプレートを使用して、特定の機能に対するサポートを最適化するようにスイッチのシステム リソースを設定できます。一部の機能がシステムを最大限使用するようなテンプレートを選択したり、リソースを均衡化するデフォルト テンプレートを使用したりできます。
テンプレートは、システム リソースに優先順位をつけて、次の機能タイプのサポートを最適化します。
• ルーティング ― ルーティング テンプレートは、通常、ネットワークの中心にあるルータまたはアグリゲータで必要となります。ユニキャスト ルーティングに対して、システム リソースを最大化します。
• VLAN ― VLANテンプレートは、ルーティングをディセーブルにし、最大数のユニキャストMACアドレスをサポートします。通常は、レイヤ2スイッチ用に選択されます。
• デフォルト ― デフォルト テンプレートは、すべての機能に対してリソースを均衡化します。
各テンプレートには2つのバージョンがあります。それらは、デスクトップ テンプレートとアグリゲータ テンプレートです。Catalyst 3750-12Sスイッチは、アグリゲータ テンプレートに対応したより大きなサイズのTCAMを使用することもできれば、標準のデスクトップ テンプレートを使用することもできます。他のすべてのCatalyst 3750スイッチは、デスクトップ テンプレートのみをサポートしています。アグリゲータ スイッチで desktop キーワードを入力しなかった場合は、アグリゲータ テンプレートが選択されます。
表 8-1 は、デスクトップ スイッチまたはアグリゲータ スイッチの3つのテンプレートそれぞれがサポートしている各リソースの概数を示しています。
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表 8-1 各テンプレートが許容する機能リソースの概数
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ユニキャストMACアドレス |
6 K |
3 K |
12 K |
6 K |
6 K |
12 K |
IGMPグループとマルチキャスト ルート |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
ユニキャスト ルート |
8 K |
11 K |
0 |
12 K |
20 K |
0 |
• 直接接続されたホスト |
6 K |
3 K |
0 |
6 K |
6 K |
0 |
• 間接ルート |
2 K |
8 K |
0 |
6 K |
14 K |
0 |
ポリシーベースのルーティングACE |
0 |
512 |
0 |
0 |
512 |
0 |
QoS分類ACE |
512 |
512 |
512 |
896 |
512 |
896 |
セキュリティACE |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
レイヤ2 VLAN |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
1 K |
表の最初の8行(ユニキャストMACアドレスからセキュリティACEまで)は、各テンプレートが選択されたときに設定されるハードウェアのおおよその限度を表します。ハードウェア リソースのある部分がいっぱいの場合は、処理のオーバーフローはすべてCPUに送られ、スイッチのパフォーマンスに重大な影響が出ます。最後の行は、スイッチのレイヤ2 VLANの数に関連するハードウェア リソース消費量を計算するための目安です。
SDMテンプレートとスイッチ スタック
すべてのスタック メンバーは、スタック マスターに格納されているものと同じSDMデスクトップまたはアグリゲータ テンプレートを使用します。新たなスイッチがスタックに追加されると、スイッチのコンフィギュレーション ファイルやVLANデータベース ファイルと同様に、スタック マスターに格納されたSDMコンフィギュレーション ファイルによって個々のスイッチに設定されているテンプレートが上書きされます。
(注) スタック化の詳細については、第5章「スイッチ スタックの管理」を参照してください。
スタック マスターがデスクトップ スイッチであり、アグリゲータ テンプレートを稼働するCatalyst 3750-12Sがスタック メンバーとして追加された場合、スタックはスタック マスター上で選択されたデスクトップ テンプレートを使用して動作します。この結果、Catalyst 3750-12S上のTCAMエントリの数がデスクトップ テンプレート サイズを超えた場合には、Catalyst 3750-12S上の設定は失われてしまいます。
スタック マスターがアグリゲータ テンプレートを使用するCatalyst 3750-12Sスイッチであり、新たなスタック メンバーがCatalyst 3750-12Sではない場合は、スタック メンバーはスタック マスター上で稼働するテンプレートをサポートできません。スタックへの参加を試みるスイッチはSDM不一致モードとなり、スタック マスターはSDMテンプレートの変更は行いません。さらに、スイッチはスタックの正常に機能するメンバーになることはできません。
show switch イネーブルEXECコマンドを使用すると、スタック メンバーがSDM不一致モードになっているかどうかを確認できます。この例は、SDM不一致が存在するときの show switch イネーブルEXECコマンドの出力を示しています。
Switch# Role Mac Address Priority State
------------------------------------------------------------
*2 Master 000a.fdfd.0100 5 Ready
4 Slave 0003.fd63.9c00 5 SDM Mismatch
スタック マスターがCatalyst 3750-12Sの場合、テンプレートを変更すると次の結果を引き起こすことがあります。
• テンプレートをアグリゲータ テンプレートからデスクトップ テンプレートへ変更し、スイッチをリロードすると、スタック全体が選択されたデスクトップ テンプレートを使用して動作します。このため、TCAMエントリの数がデスクトップ テンプレートのサイズを超えた場合には、設定が失われることがあります。
• テンプレートをデスクトップ テンプレートからアグリゲータ テンプレートに変更し、スイッチをリロードした場合、スタックに属していたデスクトップ スイッチはSDM不一致モードになります。これが生じた場合は、スタック メンバーがSDM不一致モードになったことを通知し、そのスイッチを不一致モードから脱却させるための手順を示したSyslogメッセージがスタック マスターに送信されます。
次は、スタック マスターにスタック メンバーがSDM不一致モードであることを通知するSyslogメッセージの一例です。
2d23h:%STACKMGR-6-SWITCH_ADDED_SDM:Switch 2 has been ADDED to the stack (SDM_MISMATCH)
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:System (#2) is incompatible with the SDM
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:template currently running on the stack and
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:will not function unless the stack is
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:downgraded. Issuing the following commands
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:will downgrade the stack to use a smaller
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:compatible desktop SDM template:
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE:
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE: "sdm prefer vlan desktop"
2d23h:%SDM-6-MISMATCH_ADVISE: "reload"
スイッチSDMテンプレートの設定
ここでは、スイッチで使用されるSDMテンプレートの設定方法について説明します。ここでは、次の設定情報について説明します。
• 「デフォルトのSDMテンプレート」
• 「SDMテンプレートの設定時の注意事項」
• 「SDMテンプレートの設定」
デフォルトのSDMテンプレート
デスクトップ スイッチのデフォルト テンプレートがデフォルト デスクトップ テンプレートで、Catalyst 3750-12Sのデフォルトのテンプレートがデフォルト アグリゲータ テンプレートです。
SDMテンプレートの設定時の注意事項
設定を有効にするには、スイッチをリロードする必要があります。
ルーティングをサポートしていないレイヤ2スイッチング専用スイッチ上に限り、 sdm prefer vlan [ desktop ] グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用してください。VLANテンプレートを使用している場合は、ルーティング エントリ用のシステム リソースは予約されないため、ルーティングはソフトウェアを通じて実行されます。これにより、CPUは過負荷となり、ルーティング パフォーマンスは大幅に低下します。
スイッチでのルーティングをイネーブルにしない場合は、ルーティング テンプレートを使用しないでください。 sdm prefer routing [ desktop ] グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用すると、他の機能がルーティング テンプレート内のユニキャスト ルーティングに割り振られたメモリを使用するのを防ぐことができます。
SDMテンプレートの設定
SDMテンプレートを使用して機能動作を最適にサポートするには、イネーブルEXECモードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
sdm prefer { default | routing | vlan } [ desktop ] |
スイッチで使用するSDMテンプレートを指定します。 キーワードの意味は次のとおりです。 • default ― desktop キーワードを使用してデフォルト デスクトップ テンプレートが設定されているCatalyst 3750-12Sスイッチ上でのみ表示されます( no sdm prefer コマンドを使用して、デスクトップ スイッチをデフォルト デスクトップ テンプレートに設定するか、アグリゲータ スイッチをデフォルト アグリゲータ テンプレートに設定することができます)。 • routing ― スイッチでのルーティングを最適化します。 • vlan ― ハードウェアでのルーティングをサポートしないスイッチでのVLAN設定を最適化します。 • desktop ― Catalyst 3750-12Sスイッチ上でのみサポートされます。スイッチを、デフォルト、ルーティング、VLANデスクトップのいずれかのテンプレートに設定します。 デフォルト テンプレートは、システム リソースの使用を均衡化します。 |
ステップ 3 |
end |
イネーブルEXECモードに戻ります。 |
ステップ 4 |
reload |
オペレーティング システムをリロードします。 |
システムの再起動後、 show sdm prefer イネーブルEXECコマンドを使用して、新しいテンプレート設定を確認できます。 show sdm prefer コマンドを入力してから、 reload イネーブルEXECコマンドを入力すると、 show sdm prefer コマンドが現在使用中のテンプレートとリロード後にアクティブになるテンプレートを表示します。
次は、テンプレートを変更後にスイッチをリロードしなかった場合の出力表示の一例です。
The current template is "desktop routing" template.
The selected template optimizes the resources in
the switch to support this level of features for
8 routed interfaces and 1024 VLANs.
number of unicast mac addresses: 3K
number of igmp groups + multicast routes: 1K
number of unicast routes: 11K
number of directly connected hosts: 3K
number of indirect routes: 8K
number of security aces: 1K
On next reload, template will be "aggregate routing" template.
デフォルトのテンプレートに戻すには、 no sdm prefer グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次の例は、スイッチにルーティング テンプレート(デスクトップ スイッチの場合はデスクトップ ルーティング テンプレート、Catalyst 3750-12Sの場合はアグリゲータ ルーティング テンプレート)を設定する方法を示しています。
Switch(config)# sdm prefer routing
Proceed with reload? [confirm]
次の例は、Catalyst 3750-12Sスイッチのデスクトップ ルーティング テンプレートを設定する方法を示しています。
Switch(config)# sdm prefer routing desktop
Proceed with reload? [confirm]
SDMテンプレートの表示
パラメータを指定せずに show sdm prefer イネーブルEXECコマンドを使用すると、アクティブ テンプレートが表示されます。
指定のテンプレートがサポートしているリソース数を表示するには、 show sdm prefer [ default | routing | vlan [ desktop ] ]イネーブルEXECコマンドを使用します。
(注) desktopキーワードは、Catalyst 3750-12Sアグリゲータ スイッチでのみ使用できます。
次は、使用中のテンプレートを表示する show sdm prefer コマンドの出力例です。
The current template is "desktop default" template.
The selected template optimizes the resources in
the switch to support this level of features for
8 routed interfaces and 1024 VLANs.
number of unicast mac addresses: 6K
number of igmp groups + multicast routes: 1K
number of unicast routes: 8K
number of directly connected hosts: 6K
number of indirect routes: 2K
number of policy based routing aces: 0
number of security aces: 1K
次は、アグリゲータ スイッチに入力された show sdm prefer routing コマンドの出力例です。
Switch# show sdm prefer routing
"aggregate routing" template:
The selected template optimizes the resources in
the switch to support this level of features for
8 routed interfaces and 1024 VLANs.
number of unicast mac addresses: 6K
number of igmp groups + multicast routes: 1K
number of unicast routes: 20K
number of directly connected hosts: 6K
number of indirect routes: 14K
number of policy based routing aces: 512
number of security aces: 1K
次は、デスクトップ スイッチに入力された show sdm prefer routing コマンドの出力例です。
Switch# show sdm prefer routing
"desktop routing" template:
The selected template optimizes the resources in
the switch to support this level of features for
8 routed interfaces and 1024 VLANs.
number of unicast mac addresses: 3K
number of igmp groups + multicast routes: 1K
number of unicast routes: 11K
number of directly connected hosts: 3K
number of indirect routes: 8K
number of policy based routing aces: 512
number of security aces: 1K