RMONの設定
この章では、Catalyst 3750スイッチにRemote Network Monitoring(RMON)を設定する方法について説明します。特に明記しないかぎり、 スイッチ という用語はスタンドアロン スイッチおよびスイッチ スタックを意味します。
RMONは、RMON準拠コンソール システムおよびネットワーク プローブ間で交換可能な一連の統計および機能を定義する標準モニタリング仕様です。RMONは、ネットワーク障害診断、プランニング、およびパフォーマンス調整情報に関する総合的な機能を提供します。
(注) この章で使用するコマンドの構文および使用方法の詳細については、『Cisco IOS Configuration Fundamentals Command Reference』Release 12.1を参照してください。
この章で説明する内容は、次のとおりです。
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「RMONの概要」
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「RMONの設定」
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「RMONステータスの表示」
RMONの概要
RMONは、Internet Engineering Task Force(IETF)標準モニタ仕様で、各種ネットワーク エージェントおよびコンソール システムがネットワーク モニタ データを交換できるようにします。RMON機能をスイッチのSNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)エージェントとともに使用すると、接続されたLANセグメント上のスイッチ間を流れるすべてのトラフィックをモニタできます(図 25-1を参照)。
図 25-1 RMONの例
スイッチは次のRMONグループをサポートします(RFC 1757で定義)。
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統計情報(RMONグループ1) ― イーサネット統計情報(スイッチ タイプおよびサポートされるインターフェイスに応じて、ファスト イーサネットおよびギガビット イーサネット統計情報など)を収集します。
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履歴(RMONグループ2) ― イーサネット ポートに関する統計情報の履歴グループ(スイッチ タイプおよびサポートされるインターフェイスに応じて、ファスト イーサネットおよびギガビット イーサネット統計情報など)を指定されたポーリング インターバルで収集します。
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アラーム(RMONグループ3) ― 指定されたインターバルの間、特定のMIB(管理情報ベース)オブジェクトをモニタして指定された値(上限スレッシュホールド)でアラームをトリガし、別の値(下限スレッシュホールド)でアラームをリセットします。アラームはイベントでも使用できます。アラームがイベントをトリガし、これによりログ エントリまたはSNMPトラップが生成されます。
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イベント(RMONグループ9) ― アラームによってイベントがトリガされた場合の処置を指定します。この処置により、ログエントリまたはSNMPトラップが生成されます。
このソフトウェア リリースでサポートされているスイッチはRMONデータ処理用にハードウェア カウンタを使用しているので、モニタがより効率的になり、ほとんど処理能力を必要としません。
RMONの設定
ここでは、スイッチにRMONを設定する手順について説明します。
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「RMONのデフォルト設定」
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「RMONアラームおよびイベントの設定」(必須)
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「インターフェイスでのグループ履歴統計情報の収集」(任意)
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「インターフェイスでのグループ イーサネット統計情報の収集」(任意)
RMONのデフォルト設定
RMONはデフォルトでディセーブルに設定されています。アラームやイベントは設定されていません。
スイッチでサポートされているのはRMON 1のみです。
RMONアラームおよびイベントの設定
CLI(コマンドライン インターフェイス)またはSNMP互換Network Management Station(NMS;ネットワーク管理ステーション)を使用することにより、スイッチをRMON対応に設定できます。NMS上で汎用RMONコンソール アプリケーションを使用し、RMONのネットワーク管理機能を利用してください。また、RMON MIBオブジェクトにアクセスするようにスイッチのSNMPを設定する必要があります。詳細については、 第27章「SNMPの設定」 を参照してください。
RMONアラームおよびイベントをイネーブルにするには、イネーブルEXECモードで次の手順を実行します。この手順は必須です。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
rmon alarm number variable interval { absolute | delta } rising-threshold value [ event-number ] falling-threshold value [ event-number ] [ owner string ] |
MIBオブジェクトに対してアラームを設定します。 • number には、アラーム番号を指定します。指定できる範囲は1~65535です。 • variable には、モニタするMIBオブジェクトを指定します。 • interval には、MIB変数をアラームがモニタする時間を秒単位で指定します。指定できる範囲は1~4294967295秒です。 • 各MIB変数を直接テストする場合は、 absolute キーワードを指定します。MIB変数のサンプル間の変動をテストする場合は、 delta キーワードを指定します。 • value には、アラームをトリガする数値とアラームをリセットする数値を指定します。上限スレッシュホールドおよび下限スレッシュホールド値の範囲は、-2147483648~2147483647です。 • (任意) event-number には、上限または下限スレッシュホールドの限度を超過したときにトリガされるイベント番号を指定します。 • (任意) owner string には、アラームの所有者を指定します。 |
ステップ 3 |
rmon event number [ description string ] [ log ] [ owner string ] [ trap community ] |
RMONイベント テーブルにRMONイベント番号に対応付けられたイベントを追加します。 • number には、イベント番号を指定します。指定できる範囲は1~65535です。 • (任意) description string には、イベントの説明を指定します。 • (任意)イベントがトリガされたときにRMONログ エントリを生成するには、 log キーワードを使用します。 • (任意) owner string には、このイベントの所有者を指定します。 • (任意) trap community には、このトラップに使用されるSNMPコミュニティ ストリングを入力します。 |
ステップ 4 |
end |
イネーブルEXECモードに戻ります。 |
ステップ 5 |
show running-config |
設定を確認します。 |
ステップ 6 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
アラームをディセーブルにするには、設定したアラームごとに no rmon alarm number グローバル コンフィギュレーション コマンドを実行します。設定したアラームをすべて一度にディセーブルにすることはできません。イベントをディセーブルにするには、 no rmon event number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。アラームおよびイベントとその相互作用の詳細については、RFC 1757を参照してください。
MIBオブジェクトに対してアラームを設定できます。次に、 rmon alarm コマンドを使用してRMONアラーム番号10を設定する例を示します。このアラームは、アラームがディセーブルになるまで、MIB変数 ifEntry.20.1 を20秒ごとに1回モニタし、変数の上昇または下降の変化をチェックします。 ifEntry.20.1 値が15以上のMIBカウンタの増加を示した場合(たとえば100000から100015)、アラームがトリガされます。アラームは次にイベント番号1をトリガします。イベントの設定には、 rmon event コマンドを使用します。設定可能なイベントはログ エントリまたはSNMPトラップです。 ifEntry.20.1 値の変化が0ずつの場合、アラームはリセットされ、再度トリガできます。
Switch(config)# rmon alarm 10 ifEntry.20.1 20 delta rising-threshold 15 1 falling-threshold 0 owner jjohnson
次に、 rmon event コマンドを使用してRMONイベント番号1を作成する例を示します。イベントは High ifOutErrors として定義され、アラームによってイベントがトリガされるときにログ エントリが生成されます。ユーザ jjones は、このコマンドによってイベント テーブルに作成された行を所有します。この例でも、イベントがトリガされたときにSNMPトラップが生成されます。
Switch(config)# rmon event 1 log trap eventtrap description "High ifOutErrors" owner jjones
インターフェイスでのグループ履歴統計情報の収集
最初にRMONアラームおよびイベントを設定し、収集情報を表示する必要があります。
インターフェイス上でグループ履歴統計情報を収集するには、イネーブルEXECモードで次の手順を実行します。この手順は任意です。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
履歴を収集するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
rmon collection history index [ buckets bucket-number ] [ interval seconds ] [ owner ownername ] |
指定されたバケット数および時間に関して履歴収集をイネーブルにします。 • index には、統計情報を収集するRMONグループを指定します。指定できる範囲は1~65535です。 • (任意) buckets bucket-number には、統計情報のRMON収集履歴グループに関して、希望の最大バケット数を指定します。指定できる範囲は1~65535です。デフォルトは50です。 • (任意) interval seconds には、各ポーリング サイクルの秒数を指定します。指定できる範囲は1~3600です。デフォルトは1800秒です。 • (任意) owner ownername には、統計情報のRMONグループの所有者名を入力します。 |
ステップ 4 |
end |
イネーブルEXECモードに戻ります。 |
ステップ 5 |
show running-config |
設定を確認します。 |
ステップ 6 |
show rmon history |
スイッチ履歴テーブルの内容を表示します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
履歴収集をディセーブルにするには、 no rmon collection history index インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
インターフェイスでのグループ イーサネット統計情報の収集
インターフェイスでグループ イーサネット統計情報を収集するには、イネーブルEXECモードで次の手順を実行します。この手順は任意です。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
統計情報を収集するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
rmon collection stats index [ owner ownername ] |
インターフェイスでのRMON統計情報収集をイネーブルにします。 • index には、統計情報のRMONグループを指定します。指定できる範囲は1~65535です。 • (任意) owner ownername には、統計情報のRMONグループの所有者名を入力します。 |
ステップ 4 |
end |
イネーブルEXECモードに戻ります。 |
ステップ 5 |
show running-config |
設定を確認します。 |
ステップ 6 |
show rmon statistics |
スイッチ統計情報テーブルの内容を表示します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
グループ イーサネット統計情報の収集をディセーブルにするには、 no rmon collection stats index インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、所有者 root のRMON統計情報を収集する例を示します。
Switch(config)# interface gigabitethernet2/0/1
Switch(config-if)# rmon collection stats 2 owner root
RMONステータスの表示
RMONステータスを表示するには、 表 25-1 に示すイネーブルEXECコマンドを1つまたは複数使用します。
表 25-1 RMONステータス表示用コマンド
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show rmon |
一般のRMON統計情報を表示します。 |
show rmon alarms |
RMONアラーム テーブルを表示します。 |
show rmon events |
RMONイベント テーブルを表示します。 |
show rmon history |
RMON履歴テーブルを表示します。 |
show rmon statistics |
RMON統計情報テーブルを表示します。 |
この出力に表示されるフィールドの詳細については、『 Cisco IOS Configuration Fundamentals Command Reference 』Release 12.1を参照してください。