ケーススタディ
シスコのサプライチェーン監査、是正措置、サプライヤの参画プロセスが、全体的なデューデリジェンスプロセスの一部として実際にどのように機能するかをご覧ください。以下に、サプライチェーンチームの最近の取り組みをご紹介します。
シスコのサプライチェーン監査、是正措置、サプライヤの参画プロセスが、全体的なデューデリジェンスプロセスの一部として実際にどのように機能するかをご覧ください。以下に、サプライチェーンチームの最近の取り組みをご紹介します。
2022 年度、シスコのサプライチェーン サステナビリティ チームは、シスコの苦情処理メカニズムである倫理ラインを通じて苦情を受け付けました。サプライチェーンで働くある労働者は、シスコのサプライヤである雇用主によって、パスポートの取り上げ、採用手数料、退職時の罰則など、強制労働のさまざまな問題にさらされていると主張しました。
この申し立てを受けて、シスコはその労働者と直接連絡を取るための正式な窓口を設け、より多くの情報を収集し、定期的に最新情報を受け取れるようにしました。このやり取りと並行して、シスコはサプライヤとの取引関係を確認しました。その結果、「調達額の少ない」部品サプライヤ、つまりシスコの製造パートナーに部品を提供しているサプライヤであることを特定しました。シスコは通常のリスクベースプロセスの一環として、弱い立場にある労働者のリスク評価を行っていますが、このサプライヤは調達額が少なく、下層の関係や労働者の特性に関するデータが可視化されていなかったため、リスク評価の対象に含めていませんでした。しかし、シスコは労働者の苦情を踏まえて、そのサプライヤと協力し、申し立ての複数の要素を確認しました。
シスコはこの申し立てに対処するため、そのサプライヤにサプライヤ改善計画の実施を求めるなど、ただちに措置を講じました。サプライヤ改善計画とは、サプライヤのパフォーマンスを改善してシスコの基準と方針に適合させることを目的としたシスコの内部プロセスです。包括的な調査と徹底した軽減計画を実施するため、シスコはこの問題を RBA に報告しました。RBA はこれを受けて、強制労働に関する特殊検証済み評価プログラム(SVAP)を実施しました。RBA は業界の支援のもとでその影響力を利用し、一連の一貫した条件と業界標準に適合する必要があることをそのサプライヤに示しました。業界のこうしたアプローチは、そのサプライヤの混乱を最小限に抑えただけでなく、1 人の申し出が是正措置計画の履行を推進する力を持っていることを示しました。
この計画では、次の変更が義務付けられました。
シスコは引き続き RBA と協力して、影響を受けた労働者の待遇是正に向けたサプライヤ拠点の取り組みの進捗状況を監視し、是正措置と予防措置が効果的に実施されたことを検証しています。
この事例は多くの教訓をもたらしました。シスコは今後も、特にシスコがそれほど影響力を行使できないサプライヤに対して変化を促す場合、共同行動は大きな力を発揮すると考えています。また、特に採用手数料の請求などの問題に関して現地の法律が国際基準やベストプラクティスと矛盾する場合に、サプライヤへの幅広い教育と、人材あっせん業者や影響を受ける労働者との直接的なやり取りが、サプライチェーン内で強制労働の根絶を推進するのにどのように役立つかについても引き続き調査しています。
サプライチェーンの労働者を関与させることは重要ですが、必ずしも容易ではありません。サプライチェーンの労働者との対話を促進するため、シスコは 2022 年度に非営利団体である Social Accountability International(SAI)と提携し、SAI が提供する TenSquared プログラムを実施しました。このプログラムでは、サプライチェーンの労働者と管理者が共同で、100 営業日にわたって労働安全衛生に関する課題を特定して対処します。
業界のコラボレーションを重視した取り組みの一環として、シスコと同業他社は、2022 年度に 4 つのサプライヤ拠点で TenSquared プログラムを共同で展開しました。拠点ごとに 10 名の参加者(5 名の管理者と 5 名の現場労働者)が参加し、100 営業日にわたって協力して問題を特定し、労働安全衛生に重点を置いた目標を達成しました。労働者と管理者は、TenSquared プログラムの期間の終了後も継続できる体系的な解決策を考案するという任務を課せられました。
プログラムの開始に先立ち、各拠点で 10 名のメンバーがプロジェクト前のミーティングを開き、チームメンバーの最終決定と紹介を行いました。その後、2 日間にわたって立ち上げワークショップが開催されました。チームは運用上の安全率、ノイズレベル、化学物質、危険な化学物質のリスクへのばく露率といった懸念事項を提起し、それらに取り組むためのブレインストーミングを開始しました。その後の数週間で、チームは選択した問題に取り組み、課題をレビューし、中間レビューワークショップで計画を調整するためのアイデアを提案しました。プログラムの最後に開かれた持続可能性レビューワークショップでは、サプライヤ拠点が追加のワークショップまたはその他の労働安全衛生メカニズムを通じて、TenSquared の主要なテーマを組み込み、その方法論を実装できることを確認しました。
シスコはこのプログラムを通じて、全体として以下のように幅広い充実した解決策を見つけることができました。
サプライヤ 4 社のプログラムチームから、労働者と管理者による肯定的なフィードバックが提供されました。そのため、シスコは 2023 年度もこのプログラムを継続することを決定しました。受け取ったフィードバックには次のようなものがありました。
TenSquared を使用したことで、労働者の積極的関与により、職場の困難な問題に対する持続可能な解決策が得られることが明らかになりました。さらに、労働者と管理者が一緒に取り組むことで全体的なコミュニケーションが改善されるとともに、管理者は数ある現場の問題の解決に労働者が貢献できることを認識できるようになりました。TenSquared のコラボレーション フレームワークは、労働者が自分のアイデアを気軽に共有し、イノベーションに対する功績を認められる仕組みを提供しました。また、労働者は健康と安全に関する方針や手順の目的を深く理解することで、より多くの権限を与えられていると感じることができます。その結果、職場の安全規則を遵守し、その策定に参加することが、どのように職場全体における安全な環境の構築につながるかを理解できるようになります。シスコは、2023 年度も TenSquared を継続して、これら 4 社のサプライヤがプログラムの方法論を維持できるよう支援するとともに、他のサプライヤとも連携してプログラムのメリットを拡大していく予定です。
「シスコのサプライヤとの連携は忘れられない、有意義なものでした。シスコはプロジェクトを深く理解し、サプライヤのイノベーションを促進するためにオープンで独立した空間を提供しました。これにより、労働者は自分の意見を述べ、取り組みの成果を認めてもらえるようになったのです。この短い 100 日間で、数々の素晴らしい変化が起こり、有望な成果が達成されるのを目撃しました。サプライチェーンでこの機会を提供してくれたシスコのリーダーシップに感謝します。」
SAI シニアマネージャ、Jane Liu 氏
シスコは、サプライチェーンの労働条件を改善することを目指しています。これには、「リスクの高い」サプライヤの特定と監査、サプライヤがシスコの Supplier Code of Conduct に適合していることの確認が含まれます。その一環として、関連する法域で働くことが法的に認められている 16 ~ 18 歳の労働者を、特に残業や夜勤など、健康に悪影響を及ぼす可能性のある種類の労働から保護するよう努めています。
シスコは、若年労働者が、移民労働者や社会から取り残された人々と同様に弱い立場にあるグループであると考えています。そのため、そうした若年労働者を雇用する製造業者および部品サプライヤのリスクを特定、軽減するために特別な努力を払っています。シスコの Juvenile Labor Policy and Expectations には、16 歳から 18 歳までの労働者をシスコがどのように保護するかが概説されています。
2021 年 4 月、シスコは、年次評価でリスクが高いと特定され、かつ調達額が少ないためにシスコがそれほど影響力を行使できない部品サプライヤの拠点に対して、RBA 監査を実施しました。この監査では、管理者が若年労働者に残業や夜勤をさせていることが明らかになりました。これは、シスコの Supplier Code of Conduct では許可されていません。さらに、同拠点ではすべての若年労働者を現地の労働行政部門に登録していませんでした。これは現地の法的要件に違反しています。この部品サプライヤの拠点には、その他の労働安全衛生上の問題もありました。
是正措置計画の一環として、同拠点はすべての若年労働者を現地の行政当局に登録しましたが、地域の人手不足を理由に、これらの労働者の残業と夜勤の問題をすぐに解決することを拒否しました。同拠点はシスコの期待に応えるため、シスコが指定した生産ラインの労働者の残業や夜勤をやめさせる代わりに、工場の別の場所に再配置しました。シスコはこれを危険な兆候と見なしました。シスコは、若年労働者がシスコ製品の製造に関与しないように、配置の変更だけでなく、すべての残業と夜勤を停止するよう求め続けました。サプライヤはその後の話し合いで、若年労働者を適切な年齢の労働者に置き換えることにより、数年間で状況を緩和するスケジュールを提案しました。この解決策も、即時の解決というシスコの要件を満たしていませんでした。シスコは根気強く交渉を続け、2021 年 12 月、Gordon Buckle が率いるグローバルサプライヤ管理チームがシスコの要求を貫いた結果、シスコとサプライヤは解決に向けて前進することができました。
シスコの粘り強さが功を奏し、サプライヤはサプライチェーン管理を通じて継続的にエスカレーションを行い、シスコの基準に完全に適合するよう継続的に注力したことで、最終的に不適合を修正することができました。シスコのサプライチェーン サステナビリティ チームによる最終レビューで、2022 年 6 月に若年労働者の残業と夜勤がすべて停止されたことが確認されました。また、サプライヤは問題が解決されたことを示す十分な証拠を提供しました。
特殊テクノロジー、グローバルサプライヤ管理担当責任者の Gordon Buckle は、次のように述べています。「シスコのパーパス(存在意義)は『すべての人のためにインクルーシブな未来を実現する』ことです。シスコは、チャンスが平等な世界を実現できると信じています。あらゆる価値観が企業で反映される、そんな世界です。サプライチェーンを利用して人々や地域社会にプラスの影響を与えられるということは、シスコの粘り強さがより良い結果をもたらす可能性があることを示しています。」
若年労働者など、弱い立場にある労働者が労働者人口全体に占める割合はそれほど大きくないものの、シスコは引き続きそうした労働者が保護され、不当な扱いを受けることなく働ける環境を実現できるよう努めています。
2022 年度中、シスコは、サードパーティの委託製造業者の拠点の 1 つで、数四半期連続で労働時間の不適合が続いていることを発見しました。シスコはデューデリジェンスの一環として、その理由を探りました。発見プロセスでは、委託製造業者とシスコの内部運用および生産計画部門の関係者が集まり、根本原因を特定しました。この問題には複数の要因があることが明らかになりました。荷物の到着が遅れると、週末に残業が発生し、連続勤務日数が長くなりました。また、受注残がある場合、顧客の期待に応えようと計画された生産スケジュールの枠外で製品を製造するというプレッシャーが生じました。そこに人手不足が加わって状況が悪化しました。さらに、工場全体の共有スタッフ(緊急要員)がいて、その合計時間数が考慮されていませんでした。
そこで、シスコは製造業者と協力して、短期的には労働時間の削減を、長期的には長時間労働の防止を実現するための解決策を実装しました。この拠点では、生産のニーズに対応するための強固なコミュニケーション チャネルはありましたが、勤務日の変動(休日など)による影響や、それらが勤務時間や連続勤務日数に与える影響に十分対応できるだけのチャネルは構築されていませんでした。短期的な解決策として、生産スケジュールの作成担当者は、さまざまな休日を考慮して、労働時間と休日の目標をより適切に達成できるように全体の作業スケジュールを作成する権限を与えられました。長期的には、シスコと製造業者は供給計画を考慮しながら、供給出荷のタイミングをより適切に伝達し、人員計画に対応できるような方法で配送を調整する予定です。
発見プロセスから得られた教訓に基づき、シスコは委託製造業者が長時間労働を回避できるよう適切にサポートすることを目指し、その運用化に取り組んでいます。サプライチェーンの制約によって工場管理者が柔軟な対応を迫られること、そうした不確定要素が労働者のスケジュールに影響を及ぼすことについて、シスコは十分に理解しています。現在、構成部品の増減が製品の生産量、ひいてはそのような注文に対応するために必要な労働者の数にどのように影響するかについて、より正確に予測するためのツールを工場管理者に提供できるよう、継続的に取り組んでいます。
シスコが製造するすべての製品は、製造プロセスの一環として、品質保証のために徹底的にテストされています。1 つの方法は、一般に 2 コーナーテストまたは 4 コーナーテストとして知られるストレステストで、製品は特定の温度と電圧レベルのセットでテストされます。この種のストレステストでは、必要な温度レベルに到達し、それを維持するために電気と冷媒を使用するため、特に炭素が大量に排出されます。
シスコのエンジニアは、製造パートナーと協力して、データインサイトを活用して製造のテストプロセスを最適化し、効率を高め、炭素排出量を最小限に抑えています。テストの最適化は、1 つのビジネスユニットをサポートする 1 つのパイロットプロジェクトから開始した後、追加のビジネスユニットを含むように拡大され、2022 年度には 13,642 メートルトンの炭素排出量の削減を実現しました。これは、1 年間で道路から 2,939 台の自動車を取り除くことに相当します。現在、このパイロットをさらに多くのサプライヤ拠点とシスコのビジネスユニットに拡大し続けていて、最終的にはシスコの製品ポートフォリオ全体に拡大することを目指しています。