Cisco ASR 9000 シリーズ ルータでの nV エッジ システムの設定
このモジュールでは、Cisco ASR 9000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータでの nV エッジ システムの設定について説明します。
Cisco ASR 9000 シリーズ ルータでの nV エッジ システム設定の機能履歴
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リリース 4.2.1 |
• nV エッジ システムのサポートが Cisco ASR 9000 シリーズ ルータに追加されました。 |
設定の前提条件
適切なタスク ID を含むタスク グループに関連付けられているユーザ グループに属している必要があります。 このコマンド リファレンスには、各コマンドに必要なタスク ID が含まれます。 ユーザ グループの割り当てが原因でコマンドを使用できないと考えられる場合、AAA 管理者に連絡してください。
nV エッジ システムを設定する前に、次のハードウェアおよびソフトウェアがシャーシにインストールされている必要があります。
• ハードウェア:Cisco ASR 9000 シリーズ SPA Interface Processor-700 および Cisco ASR 9000 Enhanced イーサネット ラインカードがサポートされます。Cisco ASR 9000 Enhanced Ethernet ラインカード 10 GigE リンクは、IRL(ラック間リンク)として使用されます。
• ソフトウェア:Cisco ASR 9000 シリーズ ルータの Cisco IOS XR ソフトウェア Release 4.2.1 以上。
ハードウェア要件の詳細については、『 Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router Hardware Installation Guide 』を参照してください。
Cisco ASR 9000 nV エッジ アーキテクチャの概要
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジは、2 台以上の Cisco ASR 9000 シリーズ ルータ シャーシで構成されます。これらのシャーシが結合されて、単一の論理的なスイッチングまたはルーティング エンティティを形成します。2 台の Cisco ASR 9000 シリーズ ルータ プラットフォームを単一の仮想 Cisco ASR 9000 シリーズ システムとして運用することができます。実質的に、2 台の物理シャーシが共有コントロール プレーンで論理的にリンクされるので、2 台のルート スイッチ プロセッサ(RSP)が単一のシャーシに収容されているのと同じことになります。図 39を参照してください。 上の青色の線は内部の EOBC 相互接続を表し、下の赤色の線はデータ プレーン相互接続を表します。
その結果、単一ノードの帯域幅容量が倍になり、ハイ アベイラビリティのための複雑なプロトコル ベースの方式は必要なくなります。したがって、サービスとスケーラビリティの要件が最も厳しいときであっても、フェールオーバーを 50 ミリ秒未満で達成できます。
図 39 Cisco ASR 9000 nV エッジ アーキテクチャ
(注) Cisco IOS XR ソフトウェア Release 4.2.x では、nV エッジ システムのスケーラビリティはシャーシ 2 台までに制限されます。
(注) Cisco ASR 9000 シリーズ ルータでは、タイプの異なるシャーシが同じ nV エッジ システムに参加できます。Cisco ASR 9000 シリーズ シャーシのすべての組み合わせ(Cisco ASR 9010、Cisco ASR 9006、Cisco ASR 9922、Cisco ASR 9001 など)がサポートされます。
図 40 Cisco ASR 9000 nV エッジ システムにおける EOBC リンク
図 40 に示すように、2 台の物理的シャーシがレイヤ 1 10 Gbps 接続でリンクされます。RSP の通信にはレイヤ 1 またはレイヤ 2 イーサネット アウトオブバンド チャネル(EOBC)拡張が使用され、これによって単一の仮想コントロール プレーンが作成されます。各 RSP に 2 個の EOBC ポートと冗長 RSP があるため、シャーシ間の接続は 4 本となります。
シスコの仮想化ネットワーク アーキテクチャは、nV エッジ システムとサテライト デバイスを組み合わせてサテライト nV アーキテクチャを提案しています。サテライト nV モデルの詳細については、「 Cisco ASR 9000 シリーズ ルータでのサテライト ネットワーク仮想化(nV)システムの設定 」の章を参照してください。
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムのラック間リンク
IRL(ラック間リンク)接続が必要になるのは、あるシャーシから転送されるトラフィックが、nV エッジ システム内の別のシャーシ部分のインターフェイスから送出される場合です。IRL は、10 GigE リンクであることと、直接 L1 接続であることが必要です。IRL が転送パケットに使用されるのは、その入力と出力のインターフェイスがそれぞれ別のラックにある場合です。このようなシャーシ間リンクの最大数は 16 です。2 本以上のリンクが必要であり、これらのリンクは 2 枚のラインカードに存在する必要があります。これは、何らかの障害が原因で一方のラインカードが停止した場合の復元力を高めるためです。 Cisco ASR 9000 nV エッジ アーキテクチャを参照してください。
(注) IRL の QoS の詳細については、『Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router Modular QoS Configuration Guide』を参照してください。
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムでの障害検出
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムでは、プライマリ DSC ノードに障害が発生すると、バックアップ DSC ノードの RSP がプライマリになります。これは、マスター RSP としての処理を実行し、コントロール プレーンのプロセスのアクティブなセットをホスティングします。nV エッジ システムの通常のシナリオでは、プライマリおよびバックアップの DSC ノードがそれぞれ別のラックでホスティングされ、プライマリ DSC の障害検出は、ラック間の通信を介して行われます。
ラック境界を越えて RSP 障害を検出するために、次のメカニズムが使用されます。
• 同じシャーシ内のピア RSP によって検出された FPGA ステート情報が、コントロール リンクを介してブロードキャストされます。この情報が送信されるのは、状態変更が発生したときであり、200 ミリ秒間隔で送信されます。
• ラック間コントロールまたはデータ リンクの UDLD 状態がリモート ラックに送信されます。障害検出の間隔は 500 ミリ秒です。
• キープアライブ メッセージが RSP カード間で、ラック間コントロール リンクを介して送信されます。障害検出時間は 10 秒です。
スプリット ブレインとは、Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システム内のルータ同士を結ぶラック間リンクに障害が発生し、その結果として両方のルータがプライマリ ノードとして動作し始める状態です。したがって、スプリット ブレインを検出するために、これらのラック間でメッセージが送信されます。これは、ラック間データ リンクを介して 200 ミリ秒間隔で行われます。
ハイ アベイラビリティのシナリオ
次に示すのは、障害検出のシナリオの例です。
1. プライマリ DSC ノードでの単一 RSP 障害:同じシャーシ内のスタンバイ RSP が最初に、バックプレーン FPGA を通してこの障害を検出します。障害が検出された場合は、この RSP がアクティブ ステートに移行し、障害のことをバックアップ DSC ノードに通知します。これには、シャーシ間コントロール リンク メッセージングが使用されます。
2. プライマリ DSC ノードとスタンバイ ピア RSP の障害:このシナリオが発生する状況にはさまざまなものがあります。たとえば、プライマリ DSC ラックでの電源再投入や、プライマリ ラック内の両方の RSP カードの同時ソフト リセットです。
a. リモート ラックの障害は最初に、ラック間コントロール リンクでの UDLD 障害によって検出されます。バックアップ DSC ノードは、ラック間データ リンクの UDLD ステートを調べます。データ リンクも障害状態であることからラック障害が確定した場合は、バックアップ DSC ノードがアクティブになります。
b. UDLD 障害検出は 500 ミリ秒間隔で行われますが、コントロール リンクとデータ リンクの障害の間隔は一定ではありません。これらは RSP およびラインカードによって検出された、それぞれ別の障害であるからです。最大 2 秒間のウィンドウ期間が必要です。これは、コントロール リンクとデータ リンクの障害を相互に関連付けるためと、スプリット ブレイン検出メッセージを受信できるようにするためです。RSP 間のキープアライブ メッセージングには、UDLD 検出によって RSP カードのリセットを検出できなかった場合の冗長検出メカニズムとしての役割があります。
3. ラック間コントロール リンクの障害(スプリット ブレイン):この障害は最初に、ラック間コントロール リンクでの UDLD プロトコルによって検出されます。この場合は、バックアップ DSC が引き続き、UDLD およびキープアライブ メッセージをラック間データ リンク経由で受信します。シナリオ 2 で説明したように、2 秒間のウィンドウ期間の間に、コントロール リンクとデータ リンクの障害の同期化を行うことができます。データ リンクが障害状態でない場合、つまりスプリット ブレイン パケットが管理 LAN を介して受信されている場合は、スプリット ブレイン状態を回避するためにバックアップ DSC ラックがリロードされます。
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムの利点
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムのアーキテクチャには、次の利点があります。
1. Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムは、ネイバー デバイスからは単一のスイッチまたはルータのように見えます。
2. 2 台の物理シャーシを共有コントロール プレーンで論理的にリンクできるので、2 台のルート スイッチ プロセッサ(RSP)が単一のシャーシに収容されているのと同じことになります。その結果、単一ノードの帯域幅容量が倍になり、ハイ アベイラビリティのための複雑なプロトコル ベースの方式は必要なくなります。
3. サービスとスケーラビリティの要件が最も厳しいときであっても、フェールオーバーを 50 ミリ秒未満で達成できます。
4. このクラスタは、2 つのエンティティではなく、単一のエンティティとして管理できます。 シャーシが互いを保護するので、復元力が高まります。
5. Cisco nV テクノロジーによって、Cisco ASR 9000 シリーズ ルータの能力を、物理シャーシを超えて拡張できます。これには、リモート仮想ラインカードを使用します。この Small Form-Factor(SFF)Cisco ASR 9000v カードは、数百本のギガビット イーサネット接続をアクセス レイヤおよび集約レイヤで集約できます。
6. ギガビット イーサネット インターフェイス数が数千という規模に拡張するときも、数百あるいは数千のアクセス プラットフォームを個別にプロビジョニングする必要はありません。これはネットワーク アーキテクチャを簡素化し、運用コスト(OpEx)を削減するのに役立ちます。
7. Cisco IOS XR ソフトウェアのマルチシャーシ機能が使用されます。この機能が拡張されて、シャーシの復元力がさらに高まります。これには、データ プレーン、コントロール プレーン、および管理プレーンの保護も含まれており、Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システム内のシャーシの 1 つが完全に停止した場合にも備えることができます。
8. 疑似配線を冗長化するのに必要な疑似配線の数を減らすことができます。
9. nV エッジ システムでは、新しいシャーシをシームレスに追加できます。シャーシをシステムに追加したときに、トラフィックの中断やコントロール セッション フラップが発生することはありません。
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムの制約事項
Cisco ASR 9000 nV エッジ システムには、次のような制約事項があります。
• 第 1 世代 Cisco ASR 9000 イーサネット ラインカードはサポートされません。
• 類似していないタイプのシャーシ同士を接続して nV エッジ システムを形成することはできません。
• シスコがサポートする SFP だけが、すべてのラック間接続に使用できます。
• 10 GigE SFP は、EOBC ポートではサポートされません。
• nV エッジ コントロール プレーンのリンクは、直接物理接続であることが必要です。ネットワークまたは中間ルーティングまたはスイッチング デバイスが間に存在していてはなりません。
• nV エッジ システムは、速度が異なるリンクの混在をサポートしません。
Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムの実装
ここでは、Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムの実装を説明します。
• 「Cisco ASR 9000 nV エッジ システムの設定」
Cisco ASR 9000 nV エッジ システムの設定
Cisco ASR 9000 nV クラスタを起動するには、次のサブセクションで説明する手順を実行する必要があります。
単一シャーシからクラスタへの移行
2 台のシャーシがあり、Cisco IOS XR ソフトウェア Release 4.2.x イメージを実行しているとします。この手順では、これらを rack0 および rack1 と呼びます。すでに Cisco IOS XR ソフトウェア Release 4.2.1 以降を実行している場合は、最初の 2 つのステップを省略できます。
1. 各シャーシを個別に Cisco IOS XR ソフトウェア Release 4.2.1 でターボ ブートする必要があります。
2. Field Programmable Device(FPD)をアップグレードします。このステップが必要であるのは、Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジの要件として、少なくとも RSP ROMmon が Cisco IOS XR ソフトウェア Release 4.2.1 に対応していることが求められているからです。
3. 情報を収集する :クラスタに追加する各ラックのシャーシ シリアル番号がわかっていることが必要です。オペレーティング システムで、この情報を show inventory chassis コマンドから取得できます。ROMmon のシステムで、シリアル番号を bpcookie から取得できます。
4. rack0 の管理コンフィギュレーションを設定するために、次のとおりに入力します。
(admin config) # nv edge control serial <rack 0 serial> rack 0
(admin config) # nv edge control serial <rack 1 serial> rack 1
5. ラック 0 をリロードします。
6. ラック 1 の電源を切ります。
7. 物理的にルータを接続します。RSP カードの前面パネルにあるシャーシ間コントロール リンク(SFP+ 0 および SFP+ 1 というラベルがあります)を相互に接続します。Rack0-RSP0 を Rack1-RSP0 に接続し、RSP1 についても同様に接続します。ラック 1 が稼働状態になった後で、接続を確認するには、 show nv edge control interface loc 0/RSP0/CPU0 コマンドを使用します。
RP/0/RSP0/CPU0:ios# show nv edge control switch interface loc 0/RSP0/CPU0
Priority lPort Remote_lPort UDLD STP
======== ===== ============ ==== ========
0 0/RSP0/CPU0/12 1/RSP0/CPU0/12 UP Forwarding
1 0/RSP0/CPU0/13 1/RSP1/CPU0/13 UP Blocking
2 0/RSP1/CPU0/12 1/RSP1/CPU0/12 UP On Partner RSP
3 0/RSP1/CPU0/13 1/RSP0/CPU0/13 UP On Partner RSP
(注) シャーシ間コントロール リンクに対して明示的なコマンドは必要なく、このリンクはデフォルトでオンになっています。
8. ラック 1 を起動します。
9. シャーシ間データ リンクも接続する必要があります。シャーシ間データ リンク インターフェイスとなるように設定する必要があります。設定するには、 nv edge interface コンフィギュレーション コマンドを 10 ギガビット インターフェイスの下で使用します(10 ギガビットのみ)。この設定がシャーシ間データ リンクの両側(rack0 と rack1)で行われたことを確認します。
(注) シャーシ間データ リンクの動作を確認するには、show nv edge data forwarding コマンドを使用します。
10. Rack0 と Rack1 が完全に起動してすべての RSP とラインカードが XR-RUN 状態になった後は、 show dsc コマンドと show redundancy summary コマンドの出力は nV エッジ システム設定:例に示すコマンド出力と類似したものとなっていることが必要です。
nV エッジ システムの設定例
ここでは、次の例を示します。
• 「nV エッジ システム設定:例」
nV エッジ システム設定:例
次の例では、Cisco ASR 9000 シリーズ nV エッジ システムの接続を設定するための設定例を示します。
10 ギガビット インターフェイスからの Cisco nV エッジ IRL リンク サポート
この例では、te0/2/0/0 と te1/2/0/0 を使用してラック間データ リンクを形成します。
RP/0/RSP0/CPU0:cluster_router#show runn interface te1/2/0/0
interface TenGigE1 /2/0/0
RP/0/RSP0/CPU0:cluster_router#show runn interface te0/2/0/0
interface TenGigE0 /2/0/0
その他の関連資料
次の項では、関連マニュアルの参照先を示します。
関連資料
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Cisco IOS XR マスター コマンド リファレンス |
『Cisco IOS XR Master Commands List』 |
Cisco IOS XR ソフトウェアでのサテライト システム ソフトウェアのアップグレードとダウングレード |
『 Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router Getting Started Guide 』 |
Cisco IOS XR インターフェイス コンフィギュレーション コマンド |
『 Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router Interface and Hardware Component Command Reference 』 |
Cisco IOS XR ソフトウェアのサテライト Qos 設定情報 |
『Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router Modular Quality of Service Configuration Guide』 |
サテライト システムでのレイヤ 2 および L2VPN 機能 |
『 Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router L2VPN and Ethernet Services Configuration Guide 』 |
サテライト システムでのレイヤ 3 および L3VPN 機能 |
『 Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router MPLS Layer 3 VPN Configuration Guide 』 |
サテライト システムでのマルチキャスト機能 |
『 Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router Multicast Configuration Guide 』 |
サテライト システムでのブロードバンド ネットワーク ゲートウェイ機能 |
『Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router Broadband Network Gateway Configuration Guide』 |
ユーザ グループとタスク ID に関する情報 |
『 Cisco IOS XR System Security Configuration Guide 』の「 Configuring AAA Services on Cisco IOS XR Software」モジュール |
標準
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この機能でサポートされる新規の標準または変更された標準はありません。また、既存の標準のサポートは変更されていません。 |
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MIB
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CISCO-RF-MIB |
DSC シャーシ アクティブ/スタンバイ ノード ペアの情報を提供します。nV エッジ シナリオでは、DSC プライマリ/バックアップ RP 情報およびスイッチオーバー通知を提供します。 Cisco IOS XR ソフトウェアを使用して選択したプラットフォームの MIB を検索およびダウンロードするには、次の URL の Cisco MIB Locator を使用します。 http://cisco.com/public/sw-center/netmgmt/cmtk/mibs.shtml |
ENTITY-STATE-MIB |
各ノードの冗長性ステート情報を提供します。 |
CISCO-ENTITY-STATE-EXT-MIB |
冗長性ステータス変更に関する通知(トラップ)を定義する ENTITY-STATE-MIB に対する拡張です。 |
CISCO-ENTITY-REDUNDANCY-MIB |
冗長性グループ タイプ(たとえばノード冗長性グループ タイプ)とプロセス冗長グループ タイプを定義します。 |