Cisco IOS IP SLA の概要
Cisco IOS IP SLA は、ネットワーク上にデータを送信して複数のネットワーク ロケーション間または複数のネットワーク パス上のパフォーマンスを測定します。具体的には、ネットワーク データと IP サービスをシミュレートし、ネットワーク パフォーマンス情報をリアルタイムで収集します。Cisco IOS IP SLA は、Cisco IOS 装置間のトラフィック、または Cisco IOS 装置からリモート IP 装置(ネットワーク アプリケーション サーバなど)のトラフィックのいずれかを生成および分析します。各種 Cisco IP SLA 動作により取得される測定結果は、トラブルシューティング、問題分析、およびネットワーク トポロジの設計に利用できます。
実行する Cisco IOS IP SLA 動作に応じて、さまざまなネットワーク パフォーマンスに関する統計情報がシスコ デバイス内でモニタされ、CLI(コマンドライン インターフェイス)Management Information Base(MIB; 管理情報ベース)および SNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)MIB に格納されます。IP SLA パケットには設定可能な IP レイヤ オプションとアプリケーション レイヤ オプションがあります。たとえば、送信元および宛先の IP アドレス、User Datagram Protocol(UDP; ユーザ データグラム プロトコル)/TCP ポート番号、Type of Service(ToS; サ-ビス タイプ)バイト(Differentiated Services Code Point(DSCP)および IP プレフィクス ビットを含む)、Virtual Private Network(VPN; バーチャル プライベート ネットワーク)Routing/Forwarding(VRF; VPN ルーティング/転送)インスタンス、URL Web アドレスなどが設定できます。
Cisco IP SLA はレイヤ 2 トランスポートに依存しないので、異なるネットワーク間にエンドツーエンド動作を設定して、エンド ユーザの利用環境で想定されるメトリックを最大限に反映することができます。IP SLA は次のパフォーマンス メトリックについて、固有のサブセットを収集します。
• 遅延(往復および一方向)
• ジッタ(方向性あり)
• パケット損失(方向性あり)
• パケット シーケンス(パケット順序)
• パス(ホップ単位)
• 接続(方向性あり)
• サーバまたは Web サイトのダウンロード時間
Cisco IOS IP SLA は SNMP でアクセスできるので、CiscoWorks Internetwork Performance Monitor(IPM)のようなパフォーマンスモニタリング アプリケーションのほか、サードパーティ製のシスコ パートナーのパフォーマンス管理製品でも使用できます。Cisco IOS IP SLA を使用するネットワーク管理製品については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/go/ipsla
IP SLA を使用すると、次のような利点があります。
• サービスレベル契約のモニタリング、測定、確認。
• ネットワーク パフォーマンス モニタリング。
– ネットワーク内のジッタ、遅延、パケット損失の測定。
– 連続的で信頼性が高く予測可能な測定の提供。
• IP サービス ネットワーク ヘルス アセスメントにより、既存の QoS が新しい IP サービスに十分であることを確認できる。
• エッジツーエッジ ネットワーク アベイラビリティのモニタリングにより、ネットワーク リソースの予防的な確認と接続テストを行える(たとえば、業務上重要なデータを保存するのに使用される NFS サーバのネットワーク アベイラビリティをリモート サイトから確認できる)。
• ネットワーク動作のトラブルシューティングでは、信頼性の高い測定を連続的に実施することで、問題をただちに特定してトラブルシューティングの所用時間を短縮できる。
• Multiprotocol Label Switching(MPLS; マルチプロトコル ラベル スイッチング)パフォーマンス モニタリングとネットワーク確認(スイッチが MPLS をサポートする場合)。
ここでは、次の IP SLA 機能について説明します。
• 「Cisco IOS IP SLA によるネットワーク パフォーマンスの測定」
• 「IP SLA 応答側および IP SLA 制御プロトコル」
• 「IP SLA の応答時間の計算」
• 「IP SLA 動作のスケジューリング」
• 「IP SLA 動作のスレッシュホールドのモニタリング」
Cisco IOS IP SLA によるネットワーク パフォーマンスの測定
IP SLA を使用すると、プローブを物理的に配置しなくても、ネットワーク内の任意のエリア(コア、ディストリビューション、エッジ)間のパフォーマンスをモニタできます。IP SLA は生成したトラフィックを使用して 2 つのネットワーク装置間のネットワーク パフォーマンスを測定します。図 46-1 に、生成したパケットを送信元装置が宛先装置に送信して IP SLA を開始する方法を示します。宛先装置がこのパケットを受信すると、IP SLA 動作のタイプに応じて、タイムスタンプ情報を含めて送信元装置に応答し、パフォーマンス メトリックを計算できるようにします。IP SLA 動作では、UDP などの特定のプロトコルを使用して、ネットワークの送信元装置から宛先までの間のネットワーク測定を実行します。
図 46-1 Cisco IOS IP SLA 動作
IP SLA ネットワーク パフォーマンス測定を実装するには、次の作業を実行する必要があります。
1. IP SLA 応答側をイネーブルにします(必要な場合)。
2. IP SLA の必要な動作タイプを設定します。
3. 指定した動作タイプで使用可能なオプションを設定します。
4. スレッシュホールド条件を設定します(必要な場合)。
5. 実行する動作をスケジューリングし、ある期間動作させて統計情報を収集します。
6. Cisco IOS CLI を使用するか、SNMP 機能を備えた Network Management System(NMS; ネットワーク管理システム)を使用して、動作の結果を表示および分析します。
IP SLA 動作の詳細については、次の URL にアクセスして、『 Cisco IOS IP SLAs Configuration Guide 』で動作に関する章を参照してください。 http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/ipsla/configuration/guide/12_4t/sla_12_4t_book.html
(注) スイッチは、ゲートキーパー登録遅延動作測定を使用する Voice over IP(VoIP)サービス レベルをサポートしません。IP SLA アプリケーションを設定する前に show ip sla application 特権 EXEC コマンドを使用すると、ご使用のソフトウェア イメージでその動作タイプがサポートされるかどうかを確認できます。
IP SLA 応答側および IP SLA 制御プロトコル
IP SLA 応答側は宛先のシスコ デバイスに組み込まれたコンポーネントで、IP SLA 要求パケットを予想してそれに応答します。応答側は、専用プローブを必要とせずに正確な測定を実施します。応答側は、Cisco IOS IP SLA 制御プロトコルを使用して、待ち受けと応答の実行ポートを通知できるメカニズムを提供します。宛先 IP SLA 応答側に対して送信元になれるのは、Cisco IOS 装置だけです。
(注) IP SLA 応答側には、Cisco IOS レイヤ 2 応答側設定可能スイッチを使用できます(LAN ベース イメージを実行する Catalyst 2960 または IE 3000 スイッチ、IP ベース イメージを実行する Catalyst 3560 または 3750 スイッチなど)。応答側が IP SLA のすべての機能をサポートする必要はありません。
図 46-1 に、IP ネットワーク内での Cisco IOS IP SLA 応答側の配置例を示します。応答側は、IP SLA 動作が送信する制御プロトコル メッセージを特定のポートで待ち受けます。制御メッセージを受信すると、指定された UDP ポートまたは TCP ポートを、指定された期間、イネーブルにします。この期間中に、応答側は要求を受け付け、その応答を返します。ポートは IP SLA パケットに応答したあと、または指定された時間が経過したときにディセーブルにされます。セキュリティの強化には、制御メッセージに MD5 認証を利用できます。
すべての IP SLA 動作に対応するように宛先装置で応答側をイネーブルにする必要はありません。たとえば、宛先ルータですでに提供されているサービス(Telnet、HTTP など)に応答側は必要ありません。IP SLA 応答側は非シスコ デバイス上には設定できません。また、Cisco IOS IP SLA が動作パケットを送信できるのは、これらの装置で固有のサービスに対してだけです。
IP SLA の応答時間の計算
スイッチおよびルータの着信パケットの処理には、他にプライオリティの高い処理があるために数十ミリ秒かかることがあります。この遅延は応答時間に影響します。テストパケット応答が処理待ちのキューに入っていることもあるからです。このような場合、応答時間には本来のネットワーク遅延が正確に反映されません。IP SLA は、送信元装置および接続先装置(応答側が使用されている場合)での処理遅延をできるだけ小さくして、正しいラウンドトリップ時間が得られるようにしています。IP SLA テスト パケットでは処理遅延を最小化するためにタイム スタンプが使用されます。
IP SLA 応答側がイネーブルになっていると、接続先装置ではパケットがインターフェイスに着信したときに割り込みレベルでタイム スタンプを付加し、送信するときにも付加できるので、処理時間が省かれます。このタイム スタンプはサブミリ秒の精度で作成されます。
図 46-2 に、応答側の動作を示します。ラウンドトリップ時間の計算では、4 つのタイム スタンプを使用します。ターゲット ルータで応答側機能がイネーブルになっている場合、タイム スタンプ 3(TS3)からタイム スタンプ 2(TS2)を引いてテスト パケットの処理に使用された時間を求め、これをデルタ(Δ)とします。次に、全体のラウンドトリップ時間からこのデルタの値を引きます。IP SLA により、ソース ルータでも同じ方法が適用されます。その場合、割り込みレベルで着信のタイム スタンプ 4(TS4)が付加されるので精度が向上します。
図 46-2 Cisco IOS IP SLA 応答側のタイム スタンプ
接続先装置に 2 つのタイム スタンプがあると、一方向遅延、ジッタ、方向性を持つパケット損失を追跡できるという利点もあります。ネットワーク動作の多くは非同期なので、これらの統計情報を得ておくことが重要です。ただし、一方向遅延測定をキャプチャする場合は、ソース ルータとターゲット ルータの両方に Network Time Protocol(NTP; ネットワーク タイム プロトコル)を設定し、両方のルータを同じクロック ソースに同期させる必要があります。一方向ジッタの測定の場合、クロックを同期させる必要はありません。
IP SLA 動作のスケジューリング
IP SLA 動作を設定する場合、統計情報のキャプチャとエラー情報の収集を開始するように動作をスケジューリングする必要があります。スケジューリングには、すぐに動作を開始する方法と、月、日、時間を指定して開始する方法があります。pending オプションを使用して、あとで動作を開始することもできます。pending オプションは動作の内部ステータスの 1 つで、SNMP を介して表示できます。トリガーを待つ反応(スレッシュホールド)動作の場合にも、この pending ステータスを使用します。IP SLA 動作を一度に 1 つスケジューリングすることも、複数スケジューリングすることもできます。
Cisco IOS CLI または CISCO RTTMON-MIB からは、IP サービス イメージを実行するスイッチ上に 1 つのコマンドで複数の IP SLA 動作をスケジューリングできます。複数の動作を等間隔で実行するようにスケジューリングすれば、IP SLA モニタリングのトラフィック量を制御できます。IP SLA 動作を分散することで CPU 使用率を最小化できるので、ネットワークのスケーラビリティが向上します。
IP SLA 複数動作のスケジューリング機能の詳細については、次の URL の『 Cisco IOS IP SLAs Configuration Guide 』の「IP SLAs - Multiple Operation Scheduling」の章を参照してください。 http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/ipsla/configuration/guide/12_4t/sla_12_4t_book.html
IP SLA 動作のスレッシュホールドのモニタリング
サービス レベル契約モニタリングを適切に利用するには、何らかの違反が予想される場合にすぐに通知されるメカニズムを設定する必要があります。IP SLA は次のようなイベントによってトリガーされる SNMP トラップを送信できます。
• 接続の切断
• タイムアウト
• ラウンドトリップ時間のスレッシュホールド
• 平均ジッタ スレッシュホールド
• 一方向パケット損失
• 一方向ジッタ
• 一方向 Mean Opinion Score(MOS; 平均オピニオン評点)
• 一方向遅延
IP SLA のスレッシュホールドを超過した場合に、もう 1 つ IP SLA 動作をトリガーさせて、さらに分析することもできます。たとえば、トラブルシューティングのために、頻度を増やしたり、ICMP パス エコーや ICMP パス ジッタ動作を開始させたりすることができます。
設定するスレッシュホールドのタイプとレベルの決定は複雑になる場合があり、ネットワークで使用されている IP サービスのタイプによっても変わってきます。Cisco IOS IP SLA 動作でスレッシュホールドを使用する方法の詳細については、次の URL にある『 Cisco IOS IP SLAs Configuration Guide 』の「IP SLAs--Proactive Threshold Monitoring」を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/ipsla/configuration/guide/12_4t/sla_12_4t_book.html
IP SLA 動作の設定
ここでは、利用可能なすべての動作に関する設定情報を説明するわけではありません。設定情報の詳細については、『 Cisco IOS IP SLAs Configuration Guide 』を参照してください。ここでは、応答側の設定、UDP ジッタ動作の設定(応答側が必要)、ICMP エコー動作の設定(応答側は不要)などの動作の例を説明します。
(注) LAN ベース イメージを実行するスイッチは、IP SLA 応答側の機能だけをサポートします。IP SLA のすべての機能を使用するには、スイッチで IP サービス イメージを実行している必要があります。
他の動作の設定の詳細については、次の URL の『 Cisco IOS IP SLAs Configuration Guide 』を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/ipsla/configuration/guide/12_4t/sla_12_4t_book.html
ここでは、次の内容について説明します。
• 「デフォルト設定」
• 「設定時の注意事項」
• 「IP SLA 応答側の設定」
• 「UDP ジッタ動作を使用した IP サービス レベルの分析」
• 「ICMP エコー動作を使用した IP サービス レベルの分析」
デフォルト設定
IP SLA 動作は設定されていません。
設定時の注意事項
IP SLA コマンドについては、次の URL の『 Cisco IOS IP SLAs Command Reference, Release 12.4T 』のコマンド リファレンスを参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/ipsla/command/reference/sla_book.html
詳細な説明と設定手順については、次の URL の『 Cisco IOS IP SLAs Configuration Guide, Release 12.4T 』を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/ipsla/configuration/guide/12_4t/sla_12_4t_book.html
スイッチは、このマニュアルで説明する IP SLA コマンドや動作をすべてサポートするわけではありません。スイッチがサポートするのは、UDP ジッタ、UDP エコー、HTTP、TCP 接続、ICMP エコー、ICMP パス エコー、ICMP パス ジッタ、FTP、DNS、および DHCP を使用する IP サービス レベル分析です。また、複数動作のスケジューリングおよび予防的スレッシュホールド モニタリングもサポートします。ゲートキーパー登録遅延動作測定を使用する VoIP サービス レベルはサポートしません。
IP SLA アプリケーションを設定する前に show ip sla application 特権 EXEC コマンドを使用すると、ご使用のソフトウェア イメージでその動作タイプがサポートされるかどうかを確認できます。次に、コマンドの出力例を示します。
Switch# show ip sla application
Version: 2.2.0 Round Trip Time MIB, Infrastructure Engine-II
Time of last change in whole IP SLAs: 22:17:39.117 UTC Fri Jun
Estimated system max number of entries: 15801
Estimated number of configurable operations: 15801
Number of Entries configured : 0
Number of active Entries : 0
Number of pending Entries : 0
Number of inactive Entries : 0
Supported Operation Types
Type of Operation to Perform: 802.1agEcho
Type of Operation to Perform: 802.1agJitter
Type of Operation to Perform: dhcp
Type of Operation to Perform: dns
Type of Operation to Perform: echo
Type of Operation to Perform: ftp
Type of Operation to Perform: http
Type of Operation to Perform: jitter
Type of Operation to Perform: pathEcho
Type of Operation to Perform: pathJitter
Type of Operation to Perform: tcpConnect
Type of Operation to Perform: udpEcho
IP SLAs low memory water mark: 21741224
IP SLA 応答側の設定
IP SLA 応答側を利用できるのは、IP SLA のすべての機能をサポートしていないレイヤ 2 スイッチ(例:LAN ベース イメージを実行する Catalyst 2960 または Cisco ME 2400 または IE 3000 スイッチ)などの Cisco IOS ソフトウェアベース装置だけです。接続先装置(動作対象)上で IP SLA 応答側を設定するには、特権 EXEC モードから開始して、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ip sla responder { tcp-connect | udp-echo } ipaddress ip-address port port-number |
スイッチを IP SLA 応答側として設定します。 オプションのキーワードの意味は次のとおりです。 • tcp-connect :応答側の TCP 接続動作をイネーブルにします。 • udp-echo :応答側の User Datagram Protocol(UDP; ユーザ データグラム プロトコル)エコー動作またはジッタ動作をイネーブルにします。 • ipaddress ip-address :宛先 IP アドレスを入力します。 • port port-number :宛先ポート番号を入力します。 (注) IP アドレスおよびポート番号は、IP SLA 動作の送信元装置に設定されている IP アドレスおよびポート番号と一致する必要があります。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 4 |
show ip sla responder |
装置の IP SLA 応答側設定を確認します。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)設定をコンフィギュレーション ファイルに保存します。 |
IP SLA 応答側をディセーブルにするには、 no ip sla responder グローバル コンフィギュレーション コマンドを入力します。次に、装置を UDP ジッタ IP SLA 動作の応答側に設定する例を示します。
Switch(config)# ip sla responder udp-echo 172.29.139.134 5000
(注) IP SLA 応答側が機能するには、IP サービス イメージを実行する Catalyst 3750 または Catalyst 3560 スイッチなど、IP SLA のすべての機能をサポートする送信元装置も設定する必要があります。設定の詳細については、送信元装置のマニュアルを参照してください。
UDP ジッタ動作を使用した IP サービス レベルの分析
ジッタは、インターパケット遅延のばらつきです。送信元から宛先に複数のパケットが連続して 10 ミリ秒間隔で送信された場合、ネットワークが正しく動作していれば宛先でも同じパケット群を 10 ミリ秒間隔で受信するはずです。しかし、ネットワークに遅延があると(キューイング、別ルートでの到着など)、パケット間の到着遅延は 10 ミリ秒よりも長くなったり短くなったりすることがあります。ジッタ値がプラスの場合は、パケットが 10 ミリ秒より長い間隔で到着したことを意味します。パケットが 12 ミリ秒間隔で到着した場合、ジッタ値は +2 ミリ秒となり、パケットが 8 ミリ秒間隔で到着した場合、ジッタ値は -2 ミリ秒となります。遅延に影響されやすいネットワークでは、プラスのジッタ値は望ましくなく、ジッタ値は 0 が理想的です。
IP SLA UDP ジッタ動作は、ジッタのモニタリング以外に多目的のデータ収集動作に使用できます。パケット IP SLA は搬送パケットを生成し、送信元と動作対象間でシーケンス情報の送受信とタイム スタンプの送受信を行います。これらに基づいて、UDP ジッタ動作は次のデータを測定します。
• 方向別ジッタ(送信元から宛先へ、宛先から送信元へ)
• 方向別パケット損失
• 方向別遅延(一方向遅延)
• ラウンドトリップ遅延(平均ラウンドトリップ時間)
データの送信と受信でパスが異なることがあるので(非対称)、方向別データを使用してネットワークで輻輳などの問題が発生している場所を簡単に特定できます。
UDP ジッタ動作では、合成(シミュレーション)UDP トラフィックを生成し、ソース ルータからターゲット ルータに多数の UDP パケットを送信します。パケットのサイズ、パケット同士の間隔(ミリ秒)、繰り返しの頻度は任意です。デフォルトでは、ペイロード サイズ 10 バイトのパケットフレームを 10 個、10 ミリ秒ごとに生成し、60 秒ごとに動作を繰り返します。これらのパラメータは、提供する IP サービスが最もよくシミュレートされるように設定します。
一方向遅延を正確に測定するには、送信元装置と接続先装置の間で時刻同期(NTP などにより提供される)が必要です。一方向ジッタとパケット損失を測定する場合は、時刻同期は必要ありません。送信元装置と接続先装置の間で時刻が同期していない場合、一方向ジッタとパケット損失のデータが戻りますが、UDP ジッタ動作による一方向遅延測定では 0 の値が戻ります。
(注) 送信元装置上で UDP ジッタ動作を設定する前に、接続先装置(動作対象)上で IP SLA 応答側をイネーブルにする必要があります。
送信元装置上で UDP ジッタ動作を設定するには、特権 EXEC モードから開始して、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ip sla operation-number |
IP SLA 動作を作成し、IP SLA コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
udp-jitter { destination-ip-address | destination-hostname } destination-port [ source-ip { ip-address | hostname }] [ source-port port-number ] [ control { enable | disable }] [ num-packets number-of-packets ] [ interval interpacket-interval ] |
IP SLA 動作を UDP ジッタ動作として設定し、UDP ジッタ コンフィギュレーション モードを開始します。 • destination-ip-address | destination-hostname :宛先 IP アドレスまたはホスト名を指定します。 • destination-port :宛先ポート番号を 1 ~ 65535 の範囲で指定します。 • (任意) source-ip { ip-address | hostname } : 送信元 IP アドレスまたはホスト名を指定します。送信元 IP アドレスまたはホスト名を指定しない場合、IP SLA は宛先に最も近い IP アドレスを選択します。 • (任意) source-port port-number :送信元ポート番号を 1 ~ 65535 の範囲で指定します。ポート番号を指定しない場合、IP SLA は利用可能なポートを選択します。 • (任意) control :IP SLA 応答側への IP SLA コントロール メッセージの送信をイネーブルまたはディセーブルにします。デフォルトでは、IP SLA 応答側との接続を確立するために、宛先装置に IP SLA コントロール メッセージが送信されます。 • (任意) num-packets number-of-packets :生成するパケット数を入力します。指定できる範囲は 1 ~ 6000 です。デフォルトは 10 です。 • (任意) interval inter-packet-interval :パケットの送信間隔(ミリ秒)を入力します。指定できる範囲は 1 ~ 6000 です。デフォルト値は 20 ミリ秒です。 |
ステップ 4 |
frequency seconds |
(任意)指定した IP SLA 動作を繰り返すレートを設定します。指定できる範囲は 1 ~ 604800 秒です。デフォルトは 60 秒です。 |
ステップ 5 |
exit |
UDP ジッタ コンフィギュレーション モードを終了し、グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
ip sla monitor schedule operation-number [ life { forever | seconds }] [ start-time { hh : mm [: ss ] [ month day | day month ] | pending | now | after hh:mm:ss ] [ ageout seconds ] [ recurring ] |
個々の IP SLA 動作のスケジューリング パラメータを設定します。 • operation-number :RTR エントリ番号を入力します。 • (任意) life :動作の実行を無期限( forever )に設定するか、 seconds に秒数を指定します。指定できる範囲は 0 ~ 2147483647 です。デフォルトは 3600 秒(1 時間)です。 • (任意) start-time :動作が情報の収集を開始する時刻を入力します。 – 特定の時刻に開始するには、時、分、秒(24 時間表記)、日にちを入力します。月を入力しない場合は、デフォルトで現在の月になります。 – pending と入力すると、開始時刻を指定するまで情報収集は行われません。 – now と入力すると、すぐに動作が開始されます。 – after hh:mm:ss と入力すると、指定した時間が経過してから動作が開始されます。 • (任意) ageout seconds :情報をアクティブに収集していない場合、動作をメモリに常駐させておく時間を秒数で入力します。指定できる範囲は 0 ~ 2073600 秒です。デフォルトは 0 秒です(常駐したまま)。 • (任意) recurring :動作を毎日、自動的に実行するように設定します。 |
ステップ 7 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 8 |
show ip sla configuration [ operation-number ] |
(任意)すべての IP SLA 動作または指定した IP SLA 動作に関する設定値を、すべてのデフォルト値とともに表示します。 |
ステップ 9 |
copy running-config startup-config |
(任意)設定をコンフィギュレーション ファイルに保存します。 |
IP SLA 動作をディセーブルにするには、 no ip sla operation-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを入力します。次に、UDP ジッタ IP SLA 動作を設定する例を示します。
Switch(config)# ip sla 10
Switch(config-ip-sla)# udp-jitter 172.29.139.134 5000
Switch(config-ip-sla-jitter)# frequency 30
Switch(config-ip-sla-jitter)# exit
Switch(config)# ip sla schedule 5 start-time now life forever
Switch# show ip sla configuration 10
IP SLAs, Infrastructure Engine-II.
Type of operation to perform: udp-jitter
Target address/Source address: 1.1.1.1/0.0.0.0
Target port/Source port: 2/0
Request size (ARR data portion): 32
Operation timeout (milliseconds): 5000
Packet Interval (milliseconds)/Number of packets: 20/10
Type Of Service parameters: 0x0
Operation frequency (seconds): 30
Next Scheduled Start Time: Pending trigger
Randomly Scheduled : FALSE
Entry Ageout (seconds): never
Recurring (Starting Everyday): FALSE
Status of entry (SNMP RowStatus): notInService
Threshold (milliseconds): 5000
Number of statistic hours kept: 2
Number of statistic distribution buckets kept: 1
Statistic distribution interval (milliseconds): 20
ICMP エコー動作を使用した IP サービス レベルの分析
ICMP エコー動作では、シスコ デバイスと IP を使用する任意の装置との間のエンドツーエンド応答時間を測定します。応答時間は、ICMP エコー要求メッセージを宛先に送信してから ICMP エコー応答を受信するまでにかかった時間を測定して算出します。お客様の多くは、送信元 IP SLA 装置と宛先 IP 装置との間の応答時間の測定に、IP SLA ICMP ベース動作、社内 ping テスト、または ping ベースの専用プローブを使用しています。IP SLA ICMP エコー動作と ICMP ping テストは同じ仕様に準拠しているので、どちらの方法でも同じ応答時間が得られます。
(注) この動作では、IP SLA 応答側をイネーブルにする必要はありません。
送信元装置上で ICMP エコー動作を設定するには、特権 EXEC モードから開始して、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ip sla operation-number |
IP SLA 動作を作成し、IP SLA コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
icmp-echo { destination-ip-address | destination-hostname } [ source-ip { ip-address | hostname } | source-interface interface-id ] |
IP SLA 動作を ICMP エコー動作として設定し、ICMP エコー コンフィギュレーション モードを開始します。 • destination-ip-address | destination-hostname :宛先 IP アドレスまたはホスト名を指定します。 • (任意) source-ip { ip-address | hostname } : 送信元 IP アドレスまたはホスト名を指定します。送信元 IP アドレスまたはホスト名を指定しない場合、IP SLA は宛先に最も近い IP アドレスを選択します。 • (任意) source-interface interface-id :この動作の送信元インターフェイスを指定します。 |
ステップ 4 |
frequency seconds |
(任意)指定した IP SLA 動作を繰り返すレートを設定します。指定できる範囲は 1 ~ 604800 秒です。デフォルトは 60 秒です。 |
ステップ 5 |
exit |
UDP ジッタ コンフィギュレーション モードを終了し、グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
ip sla schedule operation-number [ life { forever | seconds }] [ start-time { hh : mm [: ss ] [ month day | day month ] | pending | now | after hh:mm:ss ] [ ageout seconds ] [ recurring ] |
個々の IP SLA 動作のスケジューリング パラメータを設定します。 • operation-number :RTR エントリ番号を入力します。 • (任意) life :動作の実行を無期限( forever )に設定するか、 seconds に秒数を指定します。指定できる範囲は 0 ~ 2147483647 です。デフォルトは 3600 秒(1 時間)です。 • (任意) start-time :動作が情報の収集を開始する時刻を入力します。 – 特定の時刻に開始するには、時、分、秒(24 時間表記)、日にちを入力します。月を入力しない場合は、デフォルトで現在の月になります。 – pending と入力すると、開始時刻を指定するまで情報収集は行われません。 – now と入力すると、すぐに動作が開始されます。 – after hh:mm:ss と入力すると、指定した時間が経過してから動作が開始されます。 • (任意) ageout seconds :情報をアクティブに収集していない場合、動作をメモリに常駐させておく時間を秒数で入力します。指定できる範囲は 0 ~ 2073600 秒です。デフォルトは 0 秒です(常駐したまま)。 • (任意) recurring :動作を毎日、自動的に実行するように設定します。 |
ステップ 7 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 8 |
show ip sla configuration [ operation-number ] |
(任意)すべての IP SLA 動作または指定した IP SLA 動作に関する設定値を、すべてのデフォルト値とともに表示します。 |
ステップ 9 |
copy running-config startup-config |
(任意)設定をコンフィギュレーション ファイルに保存します。 |
IP SLA 動作をディセーブルにするには、 no ip sla operation-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを入力します。次に、ICMP エコー IP SLA 動作を設定する例を示します。
Switch(config)# ip sla 12
Switch(config-ip-sla)# icmp-echo 172.29.139.134
Switch(config-ip-sla-echo)# frequency 30
Switch(config-ip-sla-echo)# exit
Switch(config)# ip sla schedule 5 start-time now life forever
Switch# show ip sla configuration 22
IP SLAs, Infrastructure Engine-II.
Type of operation to perform: echo
Request size (ARR data portion): 28
Operation timeout (milliseconds): 5000
Type Of Service parameters: 0x0
Operation frequency (seconds): 60
Next Scheduled Start Time: Pending trigger
Randomly Scheduled : FALSE
Entry Ageout (seconds): never
Recurring (Starting Everyday): FALSE
Status of entry (SNMP RowStatus): notInService
Threshold (milliseconds): 5000
Number of statistic hours kept: 2
Number of statistic distribution buckets kept: 1
Statistic distribution interval (milliseconds): 20
Number of history Lives kept: 0
Number of history Buckets kept: 15
History Filter Type: None