PTP の概要
IEEE 1588 標準で定義されている高精度時間プロトコル(PTP)は、ネットワーク内の装置のリアルタイム クロックをナノ秒の精度で同期します。クロックは、マスターメンバー階層に整理されます。PTP は、最も正確なクロックを持つ装置に接続されたスイッチ ポートを識別します。このクロックを、マスター クロックといいます。ネットワーク上の他のすべての装置は、自らのクロックをマスターと同期します。これらの装置を、メンバーといいます。タイミング メッセージを常に交換することにより、継続的な同期を保証します。
PTP は、装置およびテスト機器の動きや精度の制御が重要である工業オートメーション システムやプロセス制御ネットワークで特に有用です。
PTP パケットを通常のマルチキャスト トラフィックとしてスイッチを介して渡すか(転送モード)、すべてのポートをグランド マスター クロックと同期するように(エンドツーエンド トランスペアレント モード)、スイッチをグローバルに設定できます。または、境界クロック モードを設定することも可能です。このモードでは、スイッチが最良のマスター クロックを選択する処理に参加し、さらに優れたクロックが検出されない場合はマスター クロックとして機能することができます。
スイッチが PTP 転送モードまたはエンドツーエンド トランスペアレント モードの場合、PTP モードを別のモードに設定する以外は、PTP 設定を利用できません。スイッチが境界モードの場合は、ポート単位の PTP だけを設定できます。
PTP の設定
• 「デフォルト設定」
• 「PTP の設定」
デフォルト設定
デフォルトでは、ベース スイッチ モジュールのすべてのファスト イーサネット ポートおよびギガビット イーサネット ポートで PTP がイネーブルになっています。PTP に対応できるのは、ベース スイッチ モジュールのポートだけです。スイッチ拡張モジュールは PTP をサポートしません。すべてのポートにおけるデフォルトの PTP モードは、エンドツーエンド トランスペアレントです。
表 8-1 デフォルトの PTP 設定
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PTP 境界モード |
ディセーブル |
PTP 転送モード |
ディセーブル |
PTP トランスペアレント モード |
イネーブル |
PTP priority1 および PTP priority2 |
デフォルトのプライオリティ番号は 128 |
PTP アナウンス間隔 |
2 秒 |
PTP アナウンス タイムアウト |
8 秒 |
PTP 遅延要求間隔 |
32 秒 |
PTP 同期間隔 |
1 秒 |
PTP 同期制限 |
500000000 ナノ秒 |
PTP の設定
PTP を設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ptp { mode { boundary | e2etransparent | forward } | priority1 value | priority2 value } |
同期クロックを設定します。 • スイッチが最良のマスター クロックを選択する作業に参加できるようにするには、boundary(境界)モードを選択します。自らのクロックよりも優れたクロックが検出されない場合、スイッチはネットワークのグランド マスター クロックになり、接続しているすべての装置の親クロックになります。最良のマスターがスイッチに接続されたクロックであると判断された場合、スイッチはそのクロックにクロックの子として同期し、他のポートに接続された装置の親クロックとして機能します。最初の同期のあと、スイッチと接続済み装置は、タイミング メッセージを交換して、クロックのオフセットとネットワークの遅延による時間の歪みを修正します。 このモードは、過負荷または重負荷の状態により大きな遅延ジッタが生じるときに使用します。 • スイッチがすべてのスイッチ ポートをスイッチに接続されたグランド マスター クロックと同期できるようにするには、e2etransparent(エンドツーエンド トランスペアレント)モードを選択します。これがデフォルトのクロック モードです。スイッチは、スイッチを通過するすべてのパケットが被る遅延(「滞留時間」といいます)を修正します。 このモードでは、境界モードよりもジッタとエラーの蓄積が少なくなります。 • 着信の PTP パケットが通常のマルチキャスト トラフィックとしてスイッチを通過できるようにするには、forward(転送)モードを選択します。これにより、境界モードとエンドツーエンド トランスペアレント モードはディセーブルになります。 スイッチ ポートが境界モードの場合は、クロック プライオリティのプロパティを設定します。 • priority1 値を指定して、最良のマスター クロックを選択するためのデフォルトの条件(クロック品質、クロック クラスなど)を上書きします。値の小さいほうが優先されます。範囲はどちらも 0 ~ 255 です。デフォルト値は 128 です。 • デフォルトの条件で一致する 2 つの装置間で優先順位を決めるための方法として使用する priority2 値を指定します。たとえば、priority2 値を使用して、特定のスイッチが他の同等のスイッチよりも優先されるようにすることができます。範囲はどちらも 0 ~ 255 です。デフォルト値は 128 です。 これらの値により、最良のマスターを選択することを目的とした PTP ネットワークのクロック プライオリティが設定されます。 |
ステップ 3 |
interface interface-id |
設定するインターフェイスを指定します。インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 スイッチ ポートの番号を入力します。これには、ポート タイプ(ファスト イーサネットの Fa、ギガビット イーサネットの Gi など)、ベース スイッチ番号(1)、および特定のポート番号が含まれます。たとえば、Fa1/1 は、ベース スイッチのファスト イーサネット ポート 1 です。 |
ステップ 4 |
ptp { announce { interval value | timeout value } | delay-req interval value | enable | sync { interval value | limit value }} |
タイミング メッセージの設定を指定します。これらのオプションは、スイッチが境界モードの場合にのみ使用できます。 • announce interval には、アナウンス メッセージを送信するための時間を指定します。指定できる範囲は 0 ~ 4 秒です。デフォルトは 1(2 秒)です。 • timeout value には、タイムアウト メッセージをアナウンスするための時間を指定します。指定できる範囲は 2 ~ 10 秒です。デフォルトは 3(8 秒)です。 • delay request interval には、ポートがマスター ステートのときに遅延要求メッセージを送信するために、メンバー装置に推奨される時間を指定します。指定できる範囲は -1 ~ 6 秒です。デフォルトは 5(32 秒)です。 • sync interval には、同期メッセージを送信するための時間を入力します。入力できる範囲は -1 ~ 1 秒です。デフォルト値は 1 秒です。 • sync limit には、PTP が再同期を試みる前の最大クロック オフセット値を指定します。指定できる範囲は 50 ~ 500000000 ナノ秒です。デフォルトは 500000000 ナノ秒です。 |
ステップ 5 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
show running-config |
設定を確認します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)設定をコンフィギュレーション ファイルに保存します。 |
PTP 設定の表示
PTP 設定を表示するには、 表 8-2 に示す 1 つ以上の特権 EXEC コマンドを使用します。
表 8-2 PTP 設定を表示するためのコマンド
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show ptp clock |
PTP クロック プロパティを表示します。 |
show ptp foreign-master-record |
PTP 外部マスター データセットを表示します。 |
show ptp parent |
親およびグランド マスター プロパティを表示します。 |
show ptp port |
すべての PTP ポート プロパティを表示します。 |
show ptp FastEthernet interface |
指定したポートの PTP ファスト イーサネット プロパティを表示します。 |
show ptp GigabitEthernet interface |
指定したポートの PTP ギガビット イーサネット プロパティを表示します。 |
show ptp time-property |
PTP 時間プロパティを表示します。 |