SDM テンプレートの概要
Switch Database Management(SDM)テンプレートを使用して、スイッチのシステム リソースを設定し、ネットワークでのスイッチの使用方法に応じて、特定の機能のサポートを最適化できます。一部の機能がシステムを最大限使用するようなテンプレートを選択したり、リソースを均衡化するデフォルト テンプレートを使用したりできます。
Ternary Content Addressable Memory(TCAM; 三値連想メモリ)リソースをさまざまな用途に割り当てるために、スイッチの SDM テンプレートでは、システム リソースに優先順位を付けて特定の機能のサポートを最適化します。次の機能を最適化する SDM テンプレートを選択できます。
• デフォルト:デフォルト テンプレートでは、レイヤ 2 のすべての機能に対してリソースを均衡化します。
• QoS:QoS テンプレートは、Quality Of Service(QoS; サービス品質)の Access Control Entries(ACE; アクセス制御エントリ)に対してシステム リソースを最大限にします。
• ルーティング:ルーティング テンプレートは、IPv4 ユニキャスト ルーティングに対してシステム リソースを最大限にします。通常、これはネットワークの中心にあるルータまたはアグリゲータに必要です。レイヤ 3 機能の IP サービス イメージを実行しているスイッチではルーティング テンプレートを使用する必要があります。
(注) スイッチでルーティング テンプレートを設定するには、Cisco IOS Release 12.2(52)SE 以降を実行している必要があります。
また、デュアル IPv4/IPv6 テンプレートを使用すると、デュアル スタック環境を実現できます。「デュアル IPv4/IPv6 SDM テンプレート」を参照してください。
表 10-1 各テンプレートに割り当てられた機能のリソースの概算
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ユニキャスト MAC アドレス |
8 K |
8 K |
2 K |
IGMP グループおよびマルチキャスト ルート |
256 |
256 |
1 K |
ユニキャスト ルート |
0 |
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4 K |
• ホストに直接接続 |
0 |
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2 K |
• 間接ルート |
0 |
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2 K |
ポリシーベース ルーティング ACE |
0 |
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512 |
QoS 分類 ACE |
375 |
625 |
625 |
セキュリティの ACE |
375 |
125 |
375 K |
レイヤ 2 VLAN |
1 K |
1 K |
1 K |
この表の先頭から 8 つまでの行(ユニキャスト MAC からセキュリティの ACE まで)は、テンプレートが選択された場合のおおよそのハードウェア境界セットを示しています。ハードウェア リソースのセクションが満杯の場合、処理できないものはすべて CPU に送信されるため、スイッチのパフォーマンスに著しく影響します。最後の行は、スイッチ上のレイヤ 2 VLAN の数に関連するハードウェア リソース消費量を計算する際の目安です。
デュアル IPv4/IPv6 SDM テンプレート
IP バージョン 6(IPv6)をサポートする SDM テンプレートを選択できます。IPv6 の詳細および IPv6 ルーティングの設定方法については、「IP ユニキャスト ルーティングの設定」を参照してください。
このソフトウェア リリースは、IPv6 トラフィックを転送するときに、Policy-Based Routing(PBR; ポリシーベース ルーティング)をサポートしません。IPv4 PBR は、 dual-ipv4-and-ipv6 routing テンプレートが設定されている場合にだけサポートされます。
デュアル IPv4/IPv6 テンプレートを使用すると、スイッチをデュアル スタック環境(IPv4 と IPv6 の両方をサポートします)で使用できます。デュアル スタック テンプレートを使用すると、各リソースで使用できる TCAM の容量が少なくなります。IPv4 トラフィックだけを転送する場合は、デュアル スタック テンプレートを使用しないでください。
次の SDM テンプレートは、IPv4/IPv6 環境をサポートします。
• デュアル IPv4/IPv6 デフォルト テンプレート:IPv4 の場合はレイヤ 2、QoS、および ACL をサポートし、IPv6 の場合は、レイヤ 2、IPv6 ホスト、および ACL をサポートします。
• デュアル IPv4/IPv6 ルーティング テンプレート:IPv4 の場合は、レイヤ 2、マルチキャスト、ルーティング(ポリシーベース ルーティングを含む)、QoS、および ACL をサポートし、IPv6 の場合はレイヤ 2、ルーティング、および ACL をサポートします。
(注) レイヤ 3 IPv6 機能の IP サービス イメージを実行しているスイッチでは、デュアル IPv4/IPv6 ルーティング テンプレートを使用する必要があります。スイッチでルーティング テンプレートを設定するには、Cisco IOS Release 12.2(52)SE 以降を実行している必要があります。
(注) IPv4 ルートには、1 つの TCAM エントリだけが必要です。IPv6 に使用されているハードウェア圧縮スキームのため、IPv6 ルートでは複数の TCAM エントリを使用して、ハードウェアで転送されるエントリの数を削減できます。たとえば、IPv6 の直接接続された IP アドレスの場合、デスクトップ テンプレートではエントリの数が 2000 未満に制限される場合があります。
表 10-2 デュアル IPv4/IPv6 テンプレートによって許容される機能リソースの概算
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ユニキャスト MAC アドレス |
8 K |
1 K |
IPv4 IGMP グループおよびマルチキャスト ルート |
0.25 K |
0. 5 K |
IPv4 ユニキャスト ルートの合計: |
0 |
2 K |
• IPv4 ホストに直接接続 |
0 |
1 K |
• 間接 IPv4 ルート |
0 |
1 K |
IPv6 マルチキャスト グループ |
0.375 K |
0.625 K |
IPv6 ユニキャスト ルートの合計: |
0 |
1.375 K |
• 直接接続された IPv6 アドレス |
0 |
1 K |
• 間接 IPv6 ユニキャスト ルート |
0 |
0.375 K |
IPv4 ポリシー ベース ルーティング ACE |
0 |
0.125 K |
IPv4 または MAC QoS ACE(合計) |
0.375 K |
0.375 K |
IPv4 または MAC セキュリティの ACE(合計) |
0.375 K |
0.125 K |
IPv6 ポリシー ベース ルーティング ACE |
0 |
0.125 K |
IPv6 QoS ACE |
0 |
0.125 K |
IPv6 セキュリティの ACE |
0.125 K |
0.125 K |
スイッチ SDM テンプレートの設定
• 「デフォルトの SDM テンプレート」
• 「SDM テンプレート設定時の注意事項」
• 「SDM テンプレートの設定」
デフォルトの SDM テンプレート
デフォルト テンプレートがデフォルトになります。
SDM テンプレート設定時の注意事項
• SDM テンプレートを選択および設定するときは、設定が有効になるようにスイッチをリロードする必要があります。
• スイッチ上でルーティングがイネーブルになっていない場合、ルーティング テンプレートを使用しないでください。 sdm prefer routing グローバル コンフィギュレーション コマンドを実行すると、他の機能がルーティング テンプレートのユニキャスト ルーティングに割り当てたメモリを使用するのを防ぐことができます。
• デュアル IPv4/IPv6 テンプレートを最初に選択しないで IPv6 機能を設定しようとすると、警告メッセージが表示されます。
• デュアル スタック テンプレートを使用すると、各リソースで許容される TCAM の容量が少なくなるため、IPv4 トラフィックだけを転送する場合は、このテンプレートを使用しないでください。
SDM テンプレートの設定
SDM テンプレートを使用して機能の使用を最大限にするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
sdm prefer { default | dual-ipv4-and-ipv6 { default | routing } | qos | routing } |
スイッチで使用する SDM テンプレートを指定します。 キーワードの意味は次のとおりです。 • default :すべての機能を均等に動作させます。 • dual-ipv4-and-ipv6 :IPv4 と IPv6 両方のルーティングをサポートするテンプレートを選択します。 – default :IPv4/IPv6 レイヤ 2 とレイヤ 3 の機能を均等に動作させます。 – routing :IPv4 ポリシーベース ルーティングを含む IPv4/IPv6 ルーティングの使用率を最大限にします。 • qos :QoS ACE のシステム リソースを最大限にします。 • routing :スイッチ上の IPv4 ルーティングを最大限にします。 スイッチをデフォルト テンプレートに設定するには、 no sdm prefer コマンドを使用します。デフォルトのテンプレートは、システム リソースを均等に使用します。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 4 |
reload |
オペレーティング システムをリロードします。 |
システムの再起動後に、 show sdm prefer 特権 EXEC コマンドを使用して新しいテンプレート設定を確認できます。 reload 特権 EXEC コマンドを入力する前に、 show sdm prefer コマンドを入力すると、 show sdm prefer により、使用中のテンプレートおよびリロード後にアクティブになるテンプレートが表示されます。
次に、テンプレートを変更しても、スイッチをリロードしていない場合に表示される出力の例を示します。
The current template is "default" template.
The selected template optimizes the resources in
the switch to support this level of features for
0 routed interfaces and 1024 VLANs.
number of unicast mac addresses: 8K
number of IPv4 IGMP groups: 0.25K
number of IPv4/MAC qos aces: 0.375k
number of IPv4/MAC security aces: 0.375k
On next reload, template will be "routing" template.
デフォルト テンプレートに戻すには、 no sdm prefer グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、ルーティング テンプレートを使用してスイッチを設定する例を示します。
Switch(config)# sdm prefer routing
Proceed with reload?[confirm]
次に、スイッチ上でデフォルトのデュアル IPv4/IPv6 テンプレートを設定する例を示します。
Switch(config)# sdm prefer dual-ipv4-and-ipv6 default
Proceed with reload?[confirm]
SDM テンプレートの表示
パラメータを指定せずに show sdm prefer 特権 EXEC コマンドを使用すると、アクティブなテンプレートが表示されます。
指定したテンプレートでサポートされるリソースの数を表示するには、 show sdm prefer [ default | dual-ipv4-and-ipv6 { default | routing } qos | routing ] 特権 EXEC コマンドを使用します。
次に、使用中のテンプレートを表示する、 show sdm prefer コマンドの出力例を示します。
The current template is "default" template.
The selected template optimizes the resources in
the switch to support this level of features for
0 routed interfaces and 1024 VLANs.
number of unicast mac addresses: 8K
number of IPv4 IGMP groups: 0.25K
number of IPv4/MAC qos aces: 0.375k
number of IPv4/MAC security aces: 0.375k
次に、 show sdm prefer routing コマンドの出力例を示します。
Switch# show sdm prefer routing
The selected template optimizes the resources in
the switch to support this level of features for
8 routed interfaces and 1024 VLANs.
number of unicast mac addresses: 2K
number of IPv4 IGMP groups + multicast routes: 1K
number of IPv4 unicast routes: 4K
number of directly-connected IPv4 hosts: 2K
number of indirect IPv4 routes: 2K
number of IPv4 policy based routing aces: 0.5K
number of IPv4/MAC qos aces: 0.625k
number of IPv4/MAC security aces: 0.375k