CUPS における LTE - Wi-Fi 間のシームレスハンドオーバー

マニュアルの変更履歴


(注)  


リリース 21.24 よりも前に導入された機能については、詳細な改訂履歴は示していません。


改訂の詳細

リリース

初版

21.24 より前

機能説明

進行中のデータセッションを継続する必要がある UE での LTE と Wi-Fi(S2a/S2b)間のシームレスなハンドオーバーは、CUPS アーキテクチャでサポートされています。

LTE から Wi-Fi へのハンドオーバーが開始され、セッション作成応答(CSR)が Wi-Fi トンネルで送信されるとすぐに、ベアラー削除要求(DBR)が LTE トンネルを介して送信されます。このとき、ePDG での IPSec トンネル確立の遅延により、パケット損失が発生します。パケット損失の問題に対処するために、設定されたハンドオーバータイマーの期限が切れたときにのみ、ベアラー削除要求が LTE トンネルで送信されます。LTE トンネルがアクティブな場合、アップリンクとダウンリンクのデータは LTE トンネルで交換されます。ハンドオーバーが完了すると、アップリンクとダウンリンクのデータが Wi-Fi トンネルで交換されます。これにより、パケット損失を防げます。Wi-Fi から LTE へのハンドオーバー中に、ベアラー変更要求が HI=1 で受信されると、仕様に従って Wi-Fi から LTE へのトンネル切り替えが開始されます。

この機能には次の利点があります。

  • LTE から Wi-Fi(S2bGTP)へのハンドオーバー中のパケット損失を最小限に抑え、ハンドオーバーをシームレスにします(つまり、メイクビフォアブレーク)。

  • P-GW で両方のトンネルが確立されている場合、LTE 手順は LTE トンネルを介して正常に処理されます。

  • P-GW で両方のトンネルが確立されている場合、Wi-Fi 手順は Wi-Fi トンネルを介して正常に処理されます。


重要


  • LTE から Wi-Fi または Wi-Fi から LTE へのハンドオーバーでは、シームレスなハンドオーバーを実行するために、新しいアクセストラフィックタイプにトンネル識別子が割り当てられます。


機能の仕組み

LTE - Wi-Fi ハンドオーバー

  • HO の開始前:

    • 複数の未処理の CCR-U がサポートされている場合、ハンドオフ要求前のすべての要求はドロップされます。

    • LTE アクセスで保留中のトランザクションはすべて破棄されます。たとえば、CBR または UBR が LTE アクセス用に送信され、CBR または UBR トランザクションが完了する前にハンドオフが開始された場合、CBR または UBR は P-GW で無視されます。PCRF には障害が通知されません。

  • 移行期間中:

    • ポリシー変更のために PCRF が RAR を送信する場合、ハンドオーバーの完了後に処理されます。

    • ASR が受信されると、コールドロップが発生して、両方のトンネルがダウンします。

    • PCRF からセッション解放が発生した場合、コールはドロップされ、CSR が「リソースなし」という理由で送信されます。

    • HO-Ind が 1 に設定された状態で(ガードタイマー後)、ユーザーが LTE に戻る(つまり、LTE から Wi-Fi、LTE へのハンドオフが繰り返される)場合、HO は正常に処理され、ユーザーセッションは再び LTE に移行されます。

    • ユーザーが HO-Ind を 0 に設定した状態で LTE に戻る(つまり、LTE から Wi-Fi、LTE へのハンドオフを繰り返す)場合、コンテキストの置換が発生します。古いコールは「コンテキスト置換」という理由で Wi-Fi アクセスでクリアされ、LTE を介した新しいコールのように処理されます。

    • ベアラー変更コマンド(MBC)が LTE(新規アクセス)で受信された場合、サービス拒否メッセージを付けて拒否されます。

    • ベアラー変更コマンド(MBC)が Wi-Fi(旧アクセス)で受信された場合、そのコマンドは破棄されます。

    • HO の進行中に LTE(新規アクセス)でベアラー削除コマンド(DBC)が受信されると、セッションが終了します。

    • 進行中のハンドオーバー中に Sx パス障害が発生した場合、進行中のトランザクションは中止され、コールはローカルで切断されます。

    • GTPC S5/S11 パス障害

      • LTE から Wi-Fi への HO 中に、古いトンネルでパス障害が発生すると、コールがクリアされます。新しいトンネルでパス障害が発生すると、コールが切断されます。

      • Wi-Fi から LTE への HO 中に、古いトンネルでパス障害が発生すると、古いトンネルがクリアされ、新しいトンネルコールが続行されます。これは、MBReq が MME から保留中の場合にのみ可能です。他のすべての状態では、コールはローカルで切断されます。

      • WIFI から LTE(Collapsed コール)の HO、コールは継続できません。古いトンネルでパス障害が発生した場合、コールはローカルで切断されるだけです。

      • HO 中に、新しいトンネルでパス障害が発生すると、コールが切断されます。

ICSR とセッションのリカバリ

  • コントロールプレーンでは、遷移時に直近の状態が安定した状態と見なされ、LTE から Wi-Fi(S2BGTP)またはその逆のハンドオーバーが完了すると、フルチェックポイントがトリガーされます。これは、セッションリカバリと ICSR に適用されます。ユーザープレーンには、受信したすべてのメッセージに個別のセッションリカバリと ICSR チェックポインティングがあります。

  • ハンドオーバーが失敗した場合、つまり CP と UP が同期していない場合には、CP セッションは直近のアクセス時の状態で回復され、UP は新たな遷移状態で回復されます。この動作は、UP 障害発生時に適用されます。

制限事項

LTE - Wi-Fi 間のシームレスハンドオーバー機能では、LTE から eHRPD および Wi-Fi から eHRPD へのハンドオーバーとハンドバックはサポートされません。

標準準拠

LTE - Wi-Fi シームレスハンドオーバー機能は、次の標準規格に準拠しています。

  • 3GPP TS 23.214

  • 3GPP TS 29.244

  • 3GPP TS 23.401

  • 3GPP TS 23.402

LTE と Wi-Fi 間のシームレスハンドオーバーの設定

ここでは、機能を有効または無効にするために使用できる CLI コマンドについて説明します。

次の CLI コマンドを使用して、LTE から Wi-Fi へのハンドオーバータイマーを設定します。

configure 
   context context_name 
      apn apn_name 
         lte-s2bgtp-first-uplink timeout_value 
         { default | no } lte-s2bgtp-first-uplink  
         end 

  • default :Wi-Fi トンネルでセッション作成応答が送信された時点での、LTE から Wi-Fi へのハンドオーバーの完了を有効にします。

  • no :機能を無効にし、セッション作成応答時点でハンドオーバーが完了します。

  • lte-s2bgtp-first-uplink timeout_value :LTE から S2bGTP へのハンドオーバー完了タイムアウトを 100 ミリ秒の倍数で設定します。有効な範囲は 100 ~ 3000 です。推奨設定は 1000 ミリ秒です。

  • デフォルトでは、Wi-Fi トンネルでセッション作成応答が送信された時点で、LTE から Wi-Fi へのハンドオーバーが完了します。ただし、ハンドオーバータイムアウトの設定後は、ハンドオーバーはタイムアウトまで遅延されます。

  • CUPS アーキテクチャではユーザープレーンノードとコントロールプレーンノードが分離されているため、最初のアップリンクデータパケットによるハンドオーバーのトリガーはサポートされていません。

モニタリングおよびトラブルシューティング

この項では、機能のモニタリングとトラブルシューティングのサポートで使用できる CLI コマンドについて説明します。

コマンドや出力の表示

この項では、この機能のサポートにおける show コマンドまたはその出力について説明します。

show apn statistics name <name>

この CLI コマンドの出力が拡張され、APN に関する次のフィールドが表示されるようになりました。

  • LTE-to-S2bGTP handover Succeeded on Timer Expiry:タイマー時間の終了によるハンドオーバーの回数を指定します。

この機能の一部として導入された新しいフィールドは、次の CLI コマンドでも表示されます。

  • show pgw-service statistics name service_name verbose

  • show pgw-service statistics name all verbose

  • show saegw-service statistics all function pgw verbose