VSAN トランキングの概要
VSAN トランキングでは、相互接続ポートが Enhanced ISL(EISL; 拡張 ISL)フレーム形式を使用して、同一物理リンクによって複数の VSAN でフレームを送受信できます(図13-1 を参照)。
VSAN トランキングはネイティブ ファイバ チャネル インターフェイスでサポートされていますが、仮想ファイバ チャネル インターフェイスではサポートされていません。
図13-1 VSAN トランキング
VSAN トランキング機能には次の制約事項があります。
• トランキング設定は E ポートのみに適用可能です。トランク モードを E ポートでイネーブルにして、そのポートがトランキング E ポートとして動作すると、そのポートは TE ポートと呼ばれます。
• TE ポート用に設定したトランク許可 VSAN は、フレームの送受信ができる許可アクティブ VSAN を判別するため、トランキング プロトコルに使用されます。
• トランキングがイネーブルの E ポートをサードパーティ製スイッチに接続した場合も、トランキング プロトコルによって E ポートとしてのシームレスな動作が保証されます。
ここでは、SAN トランキングの詳細について説明します。内容は次のとおりです。
• 「VSAN トランキングの不一致」
• 「VSAN トランキング プロトコル」
VSAN トランキングの不一致
E ポート間で VSAN を誤って設定すると、2 つの VSAN でトラフィックがマージされる(そのために両方の VSAN が一致しなくなる)などの問題につながることがあります。VSAN トランキング プロトコルでは ISL の両側で VSAN インターフェイスが確認され、VSAN のマージが回避されます(図13-2 を参照)。
図13-2 VSAN の不一致
この例では、トランキング プロトコルが潜在的な VSAN のマージを検出し、関連ポートを分離します。
2 つの Nexus 5000 シリーズ スイッチの間にサードパーティ製スイッチが配置されている場合、トランキング プロトコルは VSAN のマージを検出できません(図13-3 を参照)。
図13-3 サードパーティ製スイッチの VSAN 不一致
VSAN 2 および VSAN 3 は、ネーム サーバおよびゾーン アプリケーションにおいて重複エントリで事実上マージされます。Cisco MDS 9000 Fabric Manager は、このようなトポロジの検出に役立ちます。
VSAN トランキング プロトコル
トランキング プロトコルは、E ポートおよび TE ポートの動作において重要です。トランキング プロトコルは次の機能をサポートします。
• 動作トランク モードの動的ネゴシエーション。
• トランク許可 VSAN の共通セットの選択。
• ISL 間における VSAN 不一致の検出。
VSAN トランキング プロトコルはデフォルトでイネーブルです。トランキング プロトコルをスイッチでディセーブルにすると、そのスイッチのポートには新しいトランク設定を適用できません。既存のトランク設定は影響されません。TE ポートは引き続きトランク モードで機能しますが、以前(トランキング プロトコルがイネーブルたったときに)ネゴシエーションした VSAN のみでトラフィックをサポートします。このスイッチに直接接続されているその他のスイッチは、接続インターフェイスで同じように影響されます。トランキング以外の ISL 間で、さまざまなポート VSAN からのトラフィックをマージしなければならない場合は、トランキング プロトコルをディセーブルにします。
VSAN トランキングの設定
ここでは、VSAN トランキングの設定方法について説明します。ここで説明する内容は、次のとおりです。
• 「注意事項および制約事項」
• 「トランク モードの概要」
• 「トランク モードの設定」
• 「トランク許可 VSAN リストの概要」
• 「VSAN の許可アクティブ リストの設定」
注意事項および制約事項
VSAN トランキングを設定する場合、次の点に注意してください。
• VSAN トランキング ISL の両側が同じポート VSAN に属すようにすることを推奨します。ポート VSAN が異なるプラットフォームまたはファブリック スイッチでは、片側がエラーを返し、反対側は接続されません。
• 矛盾した設定を避けるには、すべての E ポートをシャットダウンしてから VSAN トランキング プロトコルのイネーブル化またはディセーブル化を行います。
トランク モードの概要
デフォルトでは、トランク モードはすべてのファイバ チャネル インターフェイスでイネーブルです。ただし、トランク モード設定は E ポート モードのみで有効です。トランク モードは、on(イネーブル)、off(ディセーブル)、auto(自動)のうちいずれかに設定できます。デフォルトのトランク モードは on です。リンクの両端のトランク モード設定により、リンクのトランキング状態および両端のポート モードが決まります( 表13-1 を参照)。
表13-1 スイッチ間のトランク モード ステータス
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|
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on |
auto または on |
トランキング(EISL) |
TE ポート |
off |
auto、on、off のいずれか |
トランキングなし(ISL) |
E ポート |
auto |
auto |
トランキングなし(ISL) |
E ポート |
ヒント Nexus 5000 シリーズ スイッチでの推奨設定は、トランクの片側が auto、反対側が on です。
(注) サードパーティ製スイッチに接続した場合、トランク モード設定は作用しません。ISL は常にトランキングがディセーブルの状態です。
トランク モードの設定
Fabric Manager を使用してトランク モードを設定する手順は、次のとおりです。
ステップ 1 Physical Attributes ペインで、Switches > Interfaces を展開して、FC Physical を選択します。
Information ペインにインターフェイス設定が表示されます。
ステップ 2 Trunk Config タブをクリックして、選択したインターフェイスのトランキング モードを変更します。
図13-4 に示す情報が表示されます。
図13-4 トランキングの設定
ステップ 3 Admin および Allowed VSANs の値を変更します。
ステップ 4 Trunk Failures タブをクリックして、ISL の障害状態をチェックします。
FailureCause カラムに理由が表示されます(図13-5 を参照)。
図13-5 Trunk Failures タブ
ステップ 5 Apply Changes アイコンをクリックします。
トランク許可 VSAN リストの概要
各ファイバ チャネル インターフェイスには、トランク許可 VSAN リストが関連付けられています。TE ポート モードの場合、フレームはこのリストで指定されている 1 つ以上の VSAN で送受信されます。デフォルトでは、VSAN 範囲全体(1 ~ 4093)がトランク許可リストに組み込まれています。
スイッチで設定されてアクティブになっている VSAN の共通セットは、インターフェイスのトランク許可 VSAN リストに組み込まれ、これは 許可アクティブ VSAN と呼ばれます。トランキング プロトコルでは許可アクティブ VSAN のリストが ISL の 2 つの端で使用され、トラフィックが許可される動作 VSAN のリストが判断されます。
図13-6 では、トランク許可 VSAN のデフォルト設定で、スイッチ 1 に VSAN 1 ~ 5、スイッチ 2 に VSAN 1 ~ 3、スイッチ 3 に VSAN 1、2、4、5が含まれています。3 つのスイッチすべてで設定されているすべての VSAN は許可アクティブです。ただし、図13-6 のように、ISL の端での許可アクティブ VSAN の共通セットのみが、動作状態になります。
図13-6 デフォルトの許可アクティブ VSAN 設定
許可アクティブ リストから VSAN の選択セットを設定し、トランキング ISL で指定されている VSAN へのアクセスを制御できます。
図13-6 を例として使用し、インターフェイスごとに許可 VSAN のリストを設定できます(図13-7 を参照)。たとえば、スイッチ 1 に接続されている ISL の許可 VSAN リストから VSAN 2 および 4 を削除すると、ISL ごとの VSAN の動作許可リストは次のようになります。
• スイッチ 1 およびスイッチ 2 の間の ISL には、VSAN 1 および VSAN 3 が含まれます。
• スイッチ 2 およびスイッチ 3 の間の ISL には、VSAN 1 および VSAN 2 が含まれます。
• スイッチ 3 およびスイッチ 1 の間の ISL には、VSAN 1、2、5 が含まれます。
その結果、VSAN 2 は、スイッチ 1 からスイッチ 3 を通ってスイッチ 2 にルーティングされます。
図13-7 動作および許可の VSAN 設定
VSAN の許可アクティブ リストの設定
Fabric Manager を使用して VSAN の許可アクティブ リストをインターフェイスに設定する手順は、次のとおりです。
ステップ 1 Physical Attributes ペインで、Interfaces を展開して、FC Physical を選択します。
Information ペインにインターフェイス設定が表示されます。
ステップ 2 Trunk Config タブをクリックします。
現在のトランク設定が表示されます。
ステップ 3 設定するインターフェイスごとに、Allowed VSANs を許可 VSAN のリストに設定します。
ステップ 4 これらの変更を保存する場合は Apply Changes をクリックします。保存されていない変更を廃棄する場合は Undo Changes を クリックします。