Cisco CallManager グループ
Cisco CallManager グループとは、最大 3 台の Cisco CallManager を優先順に並べたリストです。リストの最初にある Cisco CallManager はそのグループのプライマリ Cisco CallManager となり、残りは、セカンダリ(バックアップ)Cisco CallManager となります。
Cisco CallManager グループは、デバイス プールによりデバイスと関連付けられます。各デバイスはデバイス プール内の 1 グループに所属し、各デバイス プールは所属するすべてのデバイスに対して Cisco CallManager グループを指定します。
(注) ゲートウェイなど、一部の Media Gateway Control Protocol(MGCP; メディア ゲートウェイ コントロール プロトコル)デバイスは、直接 Cisco CallManager グループと関連付けることができます。
Cisco CallManager グループは、2 つの重要な機能をシステムに提供します。
• バックアップ コール処理用の優先順位付きフェールオーバー リスト:登録時に、デバイスはデバイス プールに割り当てられたグループ内のプライマリ(最初の)Cisco CallManager への接続を試みます。プライマリ Cisco CallManager が使用できない場合、デバイスはグループにリストされている次の Cisco CallManager への接続を順次試みます。各デバイス プールには、Cisco CallManager グループが 1 つずつ割り当てられています。
• コール処理用の負荷バランシング:デバイス プールと Cisco CallManager グループの設定により、複数の Cisco CallManager 間でデバイスの制御を振り分けることができます。詳細については、「コール処理の負荷バランス」を参照してください。
ほとんどのシステムでは、単一の Cisco CallManager システムを複数のグループに割り当てることにより、適切な負荷分散と冗長性が得られます。
日付/時刻グループ
Cisco CallManager に接続している各デバイスの時間帯を定義するには、日付/時刻グループを使用します。
CMLocal と呼ばれるデフォルトの日付/時刻グループは、Cisco CallManager のインストール時に自動的に設定されます。CMLocal は、Cisco CallManager サーバ上のオペレーティング システムのアクティブな日時と同期します。
Cisco CallManager のインストール後に、必要に応じて CMLocal の設定値を変更できます。通常、サーバの日付/時刻は現地時間帯の日付けと時刻に合せて調整します。
(注) Cisco CallManager を再起動したとき、または Cisco CallManager ソフトウェアを新しいリリースにアップグレードしたときには、CMLocal はオペレーティング システムの日時に合せてリセットされます。CMLocal の名前は変更しないでください。
ヒント Cisco IP Phone を世界各地に配備する場合は、24 の時間帯それぞれのグループに、名前付きの日付/時刻グループを作成してください。
デバイス プールが使用中の日付/時刻グループを削除することはできません。使用中の日付/時刻グループを削除しようとすると、Cisco CallManager はエラー メッセージを表示します。現在使用中の日付/時刻グループを削除する場合は、事前に、次の作業のどちらかまたは両方を実行しておく必要があります。
• 削除したい日付/時刻グループを使用しているデバイス プールに、別の日付/時刻グループを割り当てる。
• 削除したい日付/時刻グループを使用しているデバイス プールを削除する。
デバイス デフォルト
デバイス デフォルトは、Cisco CallManager に登録されるデバイスの各タイプに対してデフォルト特性を設定するときに使用します。あるデバイス タイプに対するデバイス デフォルトは、Cisco CallManager クラスタ内でそのタイプのすべてのデバイスに適用されます。デバイス用のデフォルト設定値は、次のとおりです。
• デバイス ファームウェアのロード
• デバイス プール(自動登録に使用)
• 電話ボタン テンプレート(自動登録に使用)
デバイスが Cisco CallManager に自動登録されると、デバイスは、そのデバイス タイプに該当するデバイス デフォルト設定値を取得します。デバイスの登録後、個々のデバイスのコンフィギュレーションを更新して、そのデバイスの設定を変更することもできます。
Cisco CallManager をインストールすると、自動的にデバイス デフォルトが設定されます。新規のデバイス デフォルトを作成したり、既存のデバイス デフォルトを削除したりすることはできませんが、デフォルト設定を変更することは可能です。
デバイス デフォルトを更新する場合は、事前に、お使いのシステムに該当する次のいずれかの作業を行ってください。
• TFTP サーバにデバイス用の新しいファームウェア ファイルを追加する。提供されているファームウェア ロードごとに、Cisco CallManager サーバの TFTPPath フォルダに .bin ファイルが保存されています。このフォルダの場所は、サービス パラメータで指定されます(Program Files\Cisco\TFTPPath フォルダがデフォルトの場所です)。
たとえば、ファームウェア ロード P002A0305556 の場合は、TFTPPath フォルダに P002A0305556.bin という名前のファイルが保存されています。
• 新しいデバイス プールを設定する。
• デバイスが電話機の場合は、新しい電話機のテンプレートを設定する。
リージョン
リージョンを作成する際には、そのリージョン内のデバイス間、およびそのリージョンと他のリージョン間で行われるコールに使用できる音声コーデックを指定します。
音声コーデック タイプでは、音声信号の圧縮と圧縮解除に使用されるテクノロジーを指定します。選択する音声コーデックにより、コールごとに使用される圧縮タイプと帯域幅の量が決まります。各音声コーデックで消費される帯域幅についての詳細は、 表 4-1 を参照してください。
Cisco CallManager では、音声コーデックの指定は、コールすべてに対してデフォルトで G.711 を使用しています。G.711 以外の音声コーデックを使用する予定がない場合は、リージョンを使用する必要はありません。
リージョンは、Cisco CallManager を複数のサイトに展開する場合に使用すると便利です。このような環境では、WAN リンク経由で送信されるコールの帯域幅を制限する必要がある一方で、内部のコールには帯域幅を多く与えることが可能なためです。
リージョンを使用して、デバイスが使用する音声コーデックを指定するには、次の作業が必要です。
• リージョンを作成し、そのリージョン内のコール、および他のリージョン間とのコールに使用する音声コーデックを指定する。
• 作成したリージョンを使用するデバイス プールを作成または変更する。
• リージョンが適切に指定されているデバイス プールにデバイスを割り当てる。
デバイス プールの設定については、「デバイス プール」を参照してください。
サポートされている音声コーデックおよび消費帯域幅
Cisco CallManager では、リージョン機能用に次の音声コーデックをサポートしています。
• G.711 :Cisco CallManager で処理されるすべてのコールに対するデフォルトのコーデック。
• G.729 :Cisco IP Phone 7900 ファミリー モデルでサポートしている、8 kbps 圧縮を使用する低ビット レートのコーデック。通常、WAN リンクを経由したコールは帯域幅の消費量が少ないので、これらのコールには低ビット レートのコーデックを使用します。たとえば、集中型コール処理を行うマルチサイト WAN は、サイトごとに G.711 と G.729 のリージョンを設定して、サイト内のコールは G.711 として指定し、サイト間のコールは G.729 として指定することができます。
• G.723 :旧型の Cisco IP Phone モデル 12 SP+ および Cisco IP Phone モデル 30 VIP デバイス用の、6 kbps 圧縮を使用する低ビット レートのコーデック。
• GSM :global system for mobile communications(GSM; モバイル通信用グローバル システム)コーデックは、GSM ワイヤレス ヘッドセット用の MNET システムと Cisco CallManager の相互運用を可能にします。GSM リージョン内、および他のリージョンとの間で行うコール用の音声コーデックとして GSM を指定しているデバイス プールに、GSM デバイスを割り当てます。デバイスの機能によっては、GSM EFR(拡張フルレート)と GSM FR(フルレート)が GSM に含まれます。
• ワイドバンド :現時点では、IP Phone から IP Phone へのコールだけがサポートされています。ワイドバンド オーディオ コーデックは、非圧縮の 16 ビット、16 kHz のサンプリング レートを使用し、高品質のオーディオ帯域幅をサポートする受話器、音響機器、スピーカ、およびマイクロフォンを備えている Cisco IP Phone 7900 モデルの電話などで機能します。
ワイドバンドは G.7ll の 4 倍の帯域幅を消費するため、リージョンでコーデック タイプとしてワイドバンドを指定する場合は、ネットワークの帯域幅に余裕をもたせる必要があります。
表 4-1 に示すように、コール ストリームごとに使用される合計帯域幅は、音声コーデックのタイプだけでなく、データ パケットのサイズやオーバーヘッド(パケット ヘッダー サイズ)などの要素によっても異なります。
(注) 各コールには、上下用の 2 ストリームがあります。
表 4-1 コーデック タイプ別、コールごとの消費帯域幅
|
データ パケットだけに消費される帯域幅(パケット サイズに関係なく固定)
|
30ms データ パケットで各コールが消費する帯域幅(IP ヘッダーを含む)
|
20ms データ パケットで各コールが消費する帯域幅(IP ヘッダーを含む)
|
G.711 |
64 kbps |
80 kbps |
88 kbps |
G.723 |
6 kbps |
24 kbps |
適用外 |
G.729 |
8 kbps |
24 kbps |
32 kbps |
ワイドバンド |
256 kbps |
272 kbps |
280 kbps |
GSM |
13 kbps |
29 kbps |
37 kbps |
例
図 4-1は、リージョンが非常に単純に設定されている場合の例で、中央サイトと 2 個所のリモート ブランチが展開されています。この例では、システム管理者は各サイトに対してリージョンを設定しています。G.711 コーデックは各サイト内でのコールに使用される最大帯域幅に等しいコーデックで、G.729 コーデックは WAN リンクを経由したサイト間のコールに使用される最大帯域幅に等しいコーデックです。
リージョンの設定後、システム管理者は次のサイトにデバイスを割り当てます。
• リージョン設定値として CentralCampus を指定しているデバイス プールに、中央キャンパス サイトを割り当てる。
• リージョン設定値として RemoteSiteA を指定しているデバイス プールに、リモート サイト A を割り当てる。
• リージョン設定値として RemoteSiteB を指定しているデバイス プールに、リモート サイト B を割り当てる。
図 4-1 簡単な設定のリージョン例
ロケーションとリージョン
Cisco CallManager 内では、ロケーションに基づいたコール アドミッション制御をリージョンと併用して、ネットワーク リンクの特性を指定します。リージョンはリンク上で使用されるコーデック タイプ(つまり、その結果として各コールで消費される帯域幅の量)を指定します。これに対し、ロケーションは特定リンクで消費できる帯域幅の量を指定します。ネットワーク上の各デバイスには、リージョン(デバイス プールを使用して)およびロケーションの両方を割り当てる必要があります。「コール アドミッション制御」を参照してください。
リージョンの変更または削除
リージョンの設定値を更新する場合、そのリージョンを使用しているデバイスを再起動するまでその変更内容は有効になりません。
デバイス プールが使用中のリージョンは削除できません。使用中のリージョンを削除しようとすると、Cisco CallManager にエラー メッセージが表示されます。現在使用中のリージョンを削除する場合は、事前に、次のどちらかまたは両方の作業を実行しておく必要があります。
• 削除するリージョンを使用しているデバイス プールに、別のリージョンを割り当てる。
• 削除するリージョンを使用しているデバイス プールを削除する。
デバイス プール
デバイス プールでは、複数のデバイスに対して共通の特性をセットで指定する便利な手法を提供しています。デバイス プールに指定可能な特性は、次のとおりです。
• デバイス プール名:新規のデバイス プールに対して名前を指定する。
• Cisco CallManager グループ:冗長性を高めるために、3 台までの
Cisco CallManager を優先順位順にリストで指定します。リストの最初にある Cisco CallManager はそのグループのプライマリ Cisco CallManager となり、その他はセカンダリ(バックアップ)Cisco CallManager となります。詳細については、「Cisco CallManager グループ」を参照してください。
• 日付/時刻グループ:デバイスの日付と時間帯を指定します。詳細については、「日付/時刻グループ」を参照してください。
• リージョン:リージョン内およびリージョン間で使用される音声コーデックを指定します。リージョンを使用するのは、ネットワーク内で異なるタイプの音声コーデックを使用する場合だけです。詳細については、「リージョン」を参照してください。
• Survivable Remote Site Telephony (SRST) リファレンス:デバイス プール内のデバイスに SRST 機能を提供するゲートウェイを指定します。詳細については、「SRST リファレンス」を参照してください。
• メディア リソース グループ リスト(オプション):メディア リソース グループを優先順に並べたリストを指定します。アプリケーションは、メディア リソース グループ リストに指定されている優先順位に従って、使用可能なメディア リソース グループから必要なメディア リソース(たとえば、保留音楽サーバ、トランスコーダ、Conference Bridge)を選択します。詳細については、「メディア リソース グループ リスト」を参照してください。
• ユーザ Music On Hold(MOH; 保留音楽)オーディオ ソース(オプション):ユーザ保留用のオーディオ ソースを指定します。詳細については、『 Cisco CallManager Features and Services Guide 』の 「Music On Hold Audio Sources」 を参照してください。
• ネットワーク Music On Hold(MOH)オーディオ ソース(オプション):ネットワーク保留用のオーディオ ソースを指定します。詳細については、『 Cisco CallManager Features and Services Guide 』の「 Music On Hold Audio Sources」 を参照してください。
• ユーザ ロケール:言語やフォントなど、ユーザをサポートするための一連の詳細情報を識別します。この特性は、デバイス プール内の電話機およびゲートウェイに関連付けられます。
• ネットワーク ロケール:特定の地域にあるデバイス プール内の電話機およびゲートウェイが使用するトーンと音の流れの定義が含まれています。
(注) 関連デバイスでサポートされている、インストール済みのネットワーク ロケールだけを選択する必要があります。リストにはこの設定で使用できるすべてのネットワーク ロケールが表示されますが、すべてのネットワーク ロケールがインストールされているとは限りません。デバイスが、ファームウェアでサポートされないネットワーク ロケールに関連付けられている場合、そのデバイスは起動しません。
• 自動登録用のコール検索スペース(オプション):自動登録されたデバイスがコールの発信時に接続できるパーティションを指定します。詳細については、「パーティションおよびコール検索スペース」を参照してください。
• ソフトキー テンプレート:Cisco IP Phone 上のアプリケーションに関連付けられているソフトキーの管理に使用されます。詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「ソフトキー テンプレートの設定」 を参照してください。
前述の機能をデバイス プールとして選択する場合は、デバイス プールを設定する前に、これらの機能を設定しておく必要があります。
新しいデバイス プールをデータベースに追加した後、そのデバイス プールを使用して、Cisco IP Phone、ゲートウェイ、Conference Bridge、トランスコーダ、メディア終端ポイント、ボイスメール ポート、CTI ルート ポイントなどのデバイスを設定できます。
特定のタイプのデバイスすべてを 1 つのデバイス プールに割り当てるには、Cisco CallManager Administration の Device Defaults ウィンドウを使用します。詳細については、「デバイス デフォルト」を参照してください。
デバイス プールの更新
デバイス プールに変更を加える場合は、そのデバイス プール内のデバイスをリセットするまで、変更内容は有効になりません。
デバイスに割り当てられているデバイス プール、またはデバイス デフォルトのコンフィギュレーションに使用されているデバイス プールは削除できません。使用中のデバイス プールを削除しようとすると、エラー メッセージが表示されます。現在使用中のデバイス プールを削除する場合は、事前に、次のどちらかまたは両方の作業を実行しておく必要があります。
• デバイスを更新して別のデバイス プールに割り当てる。
• 削除を予定しているデバイス プールに割り当てられているデバイスを削除する。
エンタープライズ パラメータ
エンタープライズ パラメータでは、同じクラスタ内のすべてのデバイスとサービスに適用されるデフォルト設定値を指定します(クラスタは、同一データベースを共用する Cisco CallManager のセットで構成されています)。
Cisco CallManager を新規にインストールすると、Cisco CallManager は、エンタープライズ パラメータを、デバイス デフォルトの初期値として使用します。
エンタープライズ パラメータを追加または削除できませんが、既存のエンタープライズ パラメータは更新できます。
Enterprise Parameters Configuration ページの i ボタンを使用して、エンタープライズ パラメータの詳しい説明を表示できます。
コール アドミッション制御
コール アドミッション制御は、WAN リンク上でユーザが期待するレベルの音声品質を維持する場合に使用します。たとえば、メイン キャンパスとリモート サイトを接続する 56 kbps フレーム リレー回線の音声品質は、コール アドミッション制御で調整できます。
リンク上に存在するアクティブ コール数が増えすぎて帯域幅の使用量が過剰になると、音声品質が低下し始める場合があります。コール アドミッション制御は、特定のリンク上で同時にアクティブにするコール数を制限することにより、音声品質を調整します。コール アドミッション制御を使用して、リンク上で特定レベルの音声品質を保証することはできませんが、リンク上のアクティブ コールが消費する帯域幅を調整できます。
Cisco CallManager でサポートされるアドミッション制御には、次の 2 つのタイプがあります。
• ロケーション:コール アドミッション制御を集中型コール処理システムに実装するには、ロケーションを使用します。コール アドミッション制御では、ロケーション間のリンクを経由したコールに使用できる帯域幅を制限することにより、音声品質を調整できます。
• H.323 ゲートキーパ:Cisco Multimedia Conference Manager(MCM)として知られている H.323 ゲートキーパでは、各サイトに Cisco CallManager または Cisco CallManager クラスタを別々にもっている分散システムで、コール アドミッション制御を行います。
(注) コール アドミッション制御で IP WAN リンクの音声帯域幅を制限しない場合、そのリンク上でコールが無制限にアクティブになりえます。このため、リンクがコールで溢れる状態になると、各コールの音声品質が低下します。
詳細については、「コール アドミッション制御」を参照してください。
自動代替ルーティング
Automated Alternate Routing(AAR; 自動代替ルーティング)は、代替番号を使用して、PSTN または他のネットワーク経由でコールを再ルーティングするメカニズムを提供します。AAR 機能のサブセットとして、Cisco CallManager は、ロケーションの帯域幅が不十分なことによりコールをブロックする場合は、PSTN または他のネットワーク経由でコールを自動的に再ルーティングします。AAR を使用すると、発信者が電話を切って着信側にリダイヤルする必要がなくなります。
あるロケーションのデバイスから別のロケーションのデバイスにコールが発信される場合、どちらのロケーションでも、使用可能な最大帯域幅から、そのコールに必要なロケーション帯域幅が差し引かれます。どちらかのロケーションで、そのコールに対してロケーションの帯域幅が不足している場合、Cisco CallManager は、コールをブロックせずに、AAR グループのテーブルと終端電話番号の外部番号を使用して、PSTN または他のネットワーク経由でコールを再ルーティングするための代替番号を提供します。Cisco IP Phone により、"Network congestion, rerouting." というメッセージが表示されます。Cisco CallManager は、代替番号を使用して、コールを自動的に再ルーティングしようとします。再ルーティングに成功すると、発信者は着信側に接続されます。
AAR は、帯域幅が十分ではない場合に、次のコール シナリオをサポートしています。
• コールが、あるロケーション内の IP Phone の回線または電話番号(DN)から発信され、別のロケーション内の別の IP Phone の回線または DN で終端する。このシナリオには、複数のロケーションに存在する終端 IP Phone デバイスとの共有回線で終端するコール、および Cisco ボイスメール ポートで終端するコールが含まれます。
• あるロケーション内のゲートウェイ デバイスを経由する着信コールが、別のロケーション内の IP Phone の回線または DN で終端する。このシナリオには、複数のロケーションに存在する終端 IP Phone デバイスとの共有回線で終端するコール、および Cisco ボイスメール ポートで終端するコールが含まれます。
Cisco CallManager は、AAREnable エンタープライズ パラメータが true に設定されている場合に限り、帯域幅が十分でないという理由で、PSTN または他のネットワーク経由でコールの再ルーティングを自動的に試行します。PSTN または他のネットワークに接続されているゲートウェイ デバイスにコールをルーティングしようとする場合、Cisco CallManager は、Cisco IP Phone のステーション デバイスおよびゲートウェイ デバイスに割り当てられているデバイスベースの AAR コール検索スペースを使用します。Cisco CallManager は、回線または DN および Cisco ボイスメール ポートの外部電話番号マスクと電話番号を使用して、コールの再ルーティングに使用される代替番号を導出します。
AAR グループは、回線/DN テーブル、Cisco ボイスメール ポート テーブル、およびゲートウェイ デバイス テーブル内のエントリとして表示されます。AAR グループは文字ストリングから構成され、デフォルト値はヌル(null)ストリングです。AAR グループは、回線/DN、Cisco ボイスメール ポート、およびゲートウェイが配置されているダイヤル区域を表します。Cisco CallManager は、AAR グループ値を使用して、AAR ダイヤル プレフィックス マトリックス テーブルに索引を付けます。このテーブルには、代替番号を変換するための接頭数字が含まれています。
自動代替ルーティングの例
次のシナリオでは、Richardson AAR グループの回線/DN 5000 が San Jose AAR グループの回線 5001 をコールします。ロケーションの帯域幅が十分でない場合、PSTN または他のネットワーク経由でコールの再ルーティングが試行されます。AAR グループ Richardson から AAR グループ San Jose にコールをルーティングするには、Cisco CallManager が、PSTN または他のネットワークにダイヤルアウトするためのアクセス番号、長距離ダイヤルの要件(ある場合)、および代替番号を認識する必要があります。Cisco CallManager は、AAR ダイヤル プレフィックス マトリックス テーブルから情報を取得します。このテーブルは、発信側回線の AAR グループ値と終端側回線の AAR グループ値によって索引が付けられています。 表 4-2 に、回線/DN テーブル内の AAR グループ フィールドのデータ例を示します。
表 4-2 回線/DN と AAR グループの関連付け
|
|
5000 |
Richardson |
5001 |
San Jose |
5002 |
Dallas |
Cisco CallManager は、発信側の回線/DN とゲートウェイ デバイスの AAR グループ値、および終端側の回線と Cisco ボイスメール ポートの AAR グループ値に基づいて、AAR ダイヤル プレフィックス マトリックス テーブルから接頭数字を取得し、導出した代替番号を変換します。 表 4-3 に、AAR ダイヤル プレフィックス マトリックス テーブル内のデータ例を示します。
表 4-3 AAR ダイヤル プレフィックス マトリックス テーブルの例
|
|
|
Richardson |
San Jose |
91 |
Richardson |
Dallas |
9 |
Richardson |
Richardson |
9 |
San Jose |
Richardson |
91 |
San Jose |
Dallas |
91 |
San Jose |
San Jose |
9 |
Dallas |
Richardson |
9 |
Dallas |
San Jose |
91 |
Dallas |
Dallas |
9 |
Cisco CallManager は、AAR ダイヤル プレフィックス マトリックス テーブルから取得した接頭数字を、導出した代替番号の前に付加します。番号分析は、変換された番号と AAR コール検索スペースを使用して、コールを PSTN または他のネットワークにルーティングします。
ゲートウェイが発信側または終端側のデバイスと同じロケーションにある場合、自動代替ルーティングの成功率は非常に高くなります。したがって、発信側デバイスと同じロケーションにあるゲートウェイから PSTN または他のネットワークに発信し、終端側デバイスと同じロケーションにあるゲートウェイから着信するコールが、最良のシナリオです。他のシナリオの場合は、発信側デバイスと発信ゲートウェイの間、および終端側デバイスと着信ゲートウェイの間で、コールがロケーション帯域幅検証の影響を受けやすい状態になります。
SRST リファレンス
IP Phone が IP ネットワークのリモート部分にある(たとえば、Cisco CallManager から広域ネットワークを経由する)場合、その電話機が Cisco CallManager への IP 接続を失っても、基本的なコール機能が維持されることが望まれます。SRST リファレンスは、このような状況で制限付きのコール機能を提供します。SRST リファレンスを使用すると、IP ゲートウェイが、制限付きの Cisco CallManager 機能を継承できます。電話機が、関連付けられているすべての Cisco CallManagers への接続を失った場合、デバイス プール内の電話機は SRST リファレンスの IP ゲートウェイに対して Cisco CallManager 接続を確立しようとします。
システム管理者は、電話機のデバイス プール用に SRST の設定を行うことができます。使用可能な設定オプションは、次のとおりです。
• Disable:電話機は、どの Cisco CallManager にも到達できない場合、SRST ゲートウェイへの接続を試行しません。
• Use Default Gateway:電話機は、どの Cisco CallManager にも到達できない場合、SRST ゲートウェイとして、その電話機の IP ゲートウェイへの接続を試行します。
• User-defined:電話機は、どの Cisco CallManager にも到達できない場合、管理者によって指定された SRST ゲートウェイへの接続を試行します。Device Pool Configuration の SRST Reference フィールドには、ユーザ定義の SRST リファレンスのリストが表示されます。
管理者は、SRST Reference Configuration ページで SRST の設定を定義します。前述の SRST の設定オプションはすべて、デバイス プールに適用できます。Cisco TFTP は、SRST の設定を読み取り、その設定を .cnf.xml ファイルで IP Phone に提供します。IP Phone は、SRST の設定に対して適切に応答します。
システム設定チェックリスト
表 4-4 は、システム レベルの設定値を設定するための一般的な手順を示しています。
表 4-4 システム設定チェックリスト
|
|
ステップ 1 |
冗長化に対して Cisco CallManager グループを設定する。 |
「Cisco CallManager グループ」 「冗長化」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「Cisco CallManager グループの設定」 |
ステップ 2 |
必要に応じ、リージョンを設定する。 デフォルトの G.711 音声コーデックだけを使用する場合、リージョンを設定する必要はありません。 |
「リージョン」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「リージョンの設定」 |
ステップ 3 |
日付/時刻グループを設定する。 |
「日付/時刻グループ」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「Date/Time Group の設定」 |
ステップ 4 |
メディア リソース グループとメディア リソース グループ リストを設定する。 |
「メディア リソースの管理」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group の設定」 |
ステップ 5 |
デバイス プールを設定する。 |
「デバイス プール」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「デバイス プールの設定」 |
ステップ 6 |
必要に応じ、デバイス デフォルトを更新する。 |
「デバイス デフォルト」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「デバイス プールの設定」 |
ステップ 7 |
コール アドミッション制御用にロケーションまたはゲートキーパを設定する。 |
「ロケーションとリージョン」 「コール アドミッション制御」 |
ステップ 8 |
帯域幅が十分でないときにコールの代替ルーティングを行うために、自動代替ルーティングを設定する。 |
「自動代替ルーティング」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「自動代替ルーティングのグループ設定」 |
ステップ 9 |
SRST リファレンスを設定する。 |
「SRST リファレンス」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Survivable Remote Site Telephony の設定」 |
ステップ 10 |
必要に応じ、エンタープライズ パラメータを更新する。 |
「エンタープライズ パラメータ」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「Survivable Remote Site Telephony の設定」 |