メディア リソースの管理
Cisco IP テレフォニー機能では、メディア リソースを使用する必要があります。メディア リソースは、トランスコーディング、会議、保留音楽、メディア終端などのサービスを提供します。以前のリリースでは、メディア リソースを登録してあるローカル Cisco CallManager だけがこれらのメディア リソースにアクセスできましたが、クラスタ内のすべての Cisco CallManager は使用できませんでした。今回のリリースのメディア リソース マネージャでは、クラスタ内のすべての Cisco CallManager がメディア リソースを共有しています。
メディア リソース マネージャは、Cisco CallManager の機能を拡張して、Cisco CallManager がメディア終端ポイント、トランスコーディング、会議、および保留音楽のサービスをより簡単に展開できるようにします。リソースをクラスタ内全体に分散することによりリソースは最大限に活用されるので、リソースの効率と経済性が高まります。
この章の構成は、次のとおりです。
• 「メディア リソースの概要」
• 「メディア リソース グループ」
• 「メディア リソース グループ リスト」
• 「メディア リソース グループおよびメディア リソース グループ リストの設定チェックリスト」
• 「要件とシステムの制限」
• 「参考情報」
メディア リソースの概要
メディア リソース管理では、クラスタ内のすべての Cisco CallManager がアクセスできるメディア リソースを提供しています。各 Cisco CallManager には、メディア リソース マネージャというソフトウェア コンポーネントが組み込まれています。メディア リソース マネージャは、メディア ストリームの接続先のメディア リソースの場所を検索します。
メディア リソース マネージャは、次のメディア リソース タイプを管理します。
• Music On Hold(MOH; 保留音楽)サーバ
• ユニキャスト Conference Bridge(CFB)
• ソフトウェア メディア終端ポイント(メディア ストリーミング アプリケーション サーバ)
• トランスコーダ(XCODE)
リソースを共有する理由は、次のとおりです。
• ハードウェアとソフトウェアの両デバイスが Cisco CallManager 内で共存できる。
• クラスタ内で使用可能なリソースへのアクセスを Cisco CallManager が共有できる。
• 類似したリソースのグループ内で Cisco CallManager の負荷バランシングを行うことができる。
• Cisco CallManager はユーザのプリファレンスに基づいてリソースを割り当てることができる。
Cisco CallManager が初期化されると、メディア リソース マネージャが作成されます。データベースに定義されているメディア終端ポイント、保留音楽、トランスコーダ、および Conference Bridge の各デバイスは、メディア リソース マネージャに登録されます。メディア リソース マネージャは、提供されているデバイスのリストをデータベースから取得し、これらのリソースを追跡するためのテーブルを作成して管理します。メディア リソース マネージャはこのテーブルを使用して、登録されているデバイスを検証します。メディア リソース マネージャは、システム内で使用できるデバイス全体をトラッキングし、また使用可能なリソースがあるデバイスもトラッキングします。
メディア デバイスの登録時に、Cisco CallManager はこのデバイスを制御するためのコントローラを作成します。デバイスの検証後、システムはリソースをクラスタ全体にアドバタイズします。このメカニズムにより、リソースをクラスタ全体で共有できます。
リソース予約は、検索基準に基づいて行われます。指定された基準により、リソース タイプとメディア リソース グループ リストが決まります。
Cisco CallManager がリソースを不要になると、リソースの割り当て解除が行われます。割り当てと割り当て解除を行うたびに、Cisco CallManager はリソース テーブルを更新して同期をとります。
メディア リソース マネージャは、次の主なコンポーネントと情報交換を行います。
• コール制御
• メディア制御
• メディア終端ポイント制御
• ユニキャスト ブリッジ制御
• 保留音楽制御
コール制御
コール制御ソフトウェア コンポーネントは、接続の確立や破棄などのコール処理を実行します。コール制御は、機能レイヤと対話して転送、保留、会議などのサービスを提供します。コール制御は、会議コールと保留音楽を実行する際に必要となるリソースのある場所を見つけるときに、メディア リソース マネージャとのインターフェイスの役割をします。
メディア制御
メディア制御ソフトウェア コンポーネントは、エンドポイントに対するメディア ストリームの作成と破棄を管理します。デバイス間を接続するメディアの要求を受け取ると、エンドポイントのタイプに応じて、メディア制御は適切なインターフェイスを設定してストリームを確立します。
メディア終端ポイントまたはトランスコーディングを設定する際に必要となるリソースのある場所を見つけるときに、メディア レイヤはメディア リソース マネージャとのインターフェイスの役割をします。
メディア終端ポイント制御
メディア終端ポイント(MTP)は、着信 H.245 ストリームから発信 H.245 ストリームへのブリッジ機能を実行します。メディア終端ポイントは、接続されたエンドポイントからのストリーミングが停止したときに、H.323 エンドポイントに対する H.245 セッションを維持します。現在、メディア終端ポイントは G.711 コーデックだけをサポートしています。メディア終端ポイントは、G.711 a-law から mu-law へのトランスコーディングも実行できます。
Cisco CallManager に登録されているメディア終端ポイント デバイスごとに、Cisco CallManager はメディア終端ポイント制御プロセスを作成します。このメディア終端ポイント制御プロセスは、初期化時にデバイス マネージャに登録されます。デバイス マネージャは、メディア終端ポイント制御プロセスが使用可能かどうかをクラスタ全体にアドバタイズします。
ユニキャスト ブリッジ制御
ユニキャスト ブリッジ(CFB)は、着信ユニキャスト ストリームを混合して複合出力ストリームにする機能を実行します。ユニキャスト ブリッジは、ad hoc 会議と meet-me 会議を Cisco CallManager にインプリメントするためのリソースを提供します。
Cisco CallManager に登録されているユニキャスト ブリッジ デバイスごとに、Cisco CallManager はユニキャスト制御プロセスを作成します。このユニキャスト制御プロセスは、初期化時にデバイス マネージャに登録されます。デバイス マネージャは、ユニキャスト ストリーム リソースが使用可能かどうかをクラスタ全体にアドバタイズします。
保留音楽制御
保留音楽(MOH)は、保留中の通話者をオーディオ サーバにリダイレクトする機能です。Cisco CallManager に登録されている保留音楽サーバ デバイスごとに、Cisco CallManager は保留音楽制御プロセスを作成します。この保留音楽制御プロセスは、初期化時にデバイス マネージャに登録されます。デバイス マネージャは、保留音楽リソースが使用可能かどうかをクラスタ全体にアドバタイズします。保留音楽は、ユニキャストとマルチキャストの両方のオーディオ ソースをサポートします。
メディア リソース グループ
Cisco CallManager メディア リソース グループおよびメディア リソース グループ リストは、ある特定のクラスタ内のリソースを管理する手段を提供します。これらの 2 つのリソースは、会議、トランスコーディング、メディア終端、および保留音楽に使用されます。
メディア リソース グループは、メディア サーバが論理グループを構成するよう定義します。必要に応じ、メディア リソース グループを地理上の場所やサイトと関連付けることができます。また、サーバの使用状況やサービスのタイプ(ユニキャストまたはマルチキャスト)を制御するためのメディア リソース グループも、必要に応じて作成できます。
メディア リソースを設定した後でメディア リソース グループを定義しない場合、メディア リソースはすべてデフォルト グループに属することになるため、ある特定クラスタ内にあるすべての Cisco CallManager はすべてのメディア リソースで使用できます。
メディア リソース グループ リスト内のメディア リソース グループからリソースを選択する際には、次の規則が適用されます。
• メディア リソース グループ リストの最初にあるメディア リソース グループを検索して、要求されたリソースを探す。見つかった場合は、リソース ID を戻す。
• 要求されたリソースが見つからなかった場合は、メディア リソース グループ リスト内で次にあるメディア リソース グループを検索する。一致が見つかった場合は、リソース ID を戻す。
• メディア リソース グループ リスト内のどのメディア リソース グループにも要求されたタイプのリソースがない場合、リソース マネージャはデフォルト グループ内のリソースの使用を試みる。
例
デフォルトの Cisco CallManager メディア リソースグループには、次のメディア リソースから構成されています。MOH1、MTP1、XCODE1、XCODE2、およびXCODE3です。トランスコーダを必要とするコールの場合、このCisco CallManager はデフォルト メディア リソース グループ内のトランスコーダ間で負荷を均等に振り分けます。トランスコーダを必要とする着信コールに対しては、次の順序で割り当てが行われます。
メディア リソース グループ リスト
メディア リソース グループ リストは、メディア リソース グループを優先順に並べたリストを指定します。アプリケーションは、メディア リソース リストに定義されている優先順に従って、必要なメディア リソースを使用可能なリソースの中から選択できます。メディア リソース グループ リストは、デバイスに関連付けられていて、メディア リソース グループの冗長化を実現しています。
メディア リソース グループ リストの選択には、次の規則が適用されます。
• メディア リソース グループ リストは、Media Resource Group List Configuration ウィンドウ内で設定され、デバイスまたはデバイス プールのどちらかに割り当てられる。
• コール処理は、メディア リソース グループ リストが選択されている場合に限り、メディア リソース グループ リストをデバイス レベルで使用する。リソースが見つからない場合、コール処理はデフォルトの割り当てからリソースを取得できる。
• メディア リソース グループ リストがデバイス レベルで選択されていない場合だけ、コール処理はデバイス プール内のメディア リソース グループ リストを使用する。リソースが見つからない場合、コール処理はデフォルトの割り当てからリソースを取得できる。
メディア リソース グループ リストを使用してリソースをタイプ別にグループ化する例
次のリストのとおりに、すべてのリソースを 3 つのメディア リソース グループに割り当てます。
• SoftwareGroup メディア リソース グループ:MTP1、MTP2、SW-CONF1、SW-CONF2
• HardwareGroup メディア リソース グループ:XCODE1、XCODE2、HW-CONF1、HW-CONF2
• MusicGroup メディア リソース グループ:MOH1、MOH2
RESOURCE_LIST という名前のメディア リソース グループ リストを作成し、SoftwareGroup、HardwareGroup、MusicGroup という順でメディア リソース グループを割り当てます。
結果:この配置では、会議が必要になると Cisco CallManager はソフトウェア会議リソースを最初に割り当てられるため、ハードウェア会議はすべてのソフトウェア会議リソースが枯渇するまで使用されません。
メディア リソース グループ リストを使用してリソースをロケーション別にグループ化する例
次のリストのとおりに、リソースを 4 つのメディア リソース グループに割り当てます。
• DallasSoftware:MTP1、MTP2、SW-CONF1、SWCONF2
• SanJoseSoftware:MTP2、MOH2、SW-CONF2
• DallasHardware:XCODE1、HW-CONF1
• SanJoseHardware:XCODE2、HW-CONF2
Cisco CallManager は、CM1 および CM2 として指定されます。
DALLAS_LIST メディア リソース グループ リストを作成し、次のリスト順でメディア リソース グループを割り当てます:DallasSoftware、DallasHardware、SanJoseSoftware、SanJoseHardware。
SANJOSE_LIST メディア リソース グループ リストを作成し、次のリスト順でメディア リソース グループを割り当てます:SanJoseSoftware、SanJoseHardware、DallasSoftware、DallasHardware。
Dallas CM1 の電話機に DALLAS_LIST の使用を割り当て、San Jose CM2 の電話機に SANJOSE_LIST の使用を割り当てます。
結果:この配置では、CM1 の電話機は SANJOSE_LIST のリソースを使用する前に DALLAS_LIST のリソースを使用します。
メディア リソース グループ リストを使用して会議リソースへのアクセスを制限する例
デフォルト グループにリソースを残さずに、リストのとおりすべてのリソースを 4 つのグループに割り当てます。
• MtpGroup:MTP1、MTP2
• ConfGroup:SW-CONF1、SW-CONF2、HW-CONF1、HW-CONF2
• MusicGroup:MOH1、MOH2
• XcodeGroup:XCODE1、XCODE2
NO_CONF_LIST という名前のメディア リソース グループ リストを作成し、次のリスト順でメディア リソース グループを割り当てます:MtpGroup、XcodeGroup、MusicGroup。
デバイス設定では、デバイスのメディア リソース グループ リストとして NO_CONF_LIST を割り当てます。
結果:このデバイスは、会議リソースを使用できません。つまり、このデバイスに利用可能なリソースは、メディア終端ポイント、トランスコーダ、および音楽の各リソースに限られます。
メディア リソース グループおよびメディア リソース グループ リストの設定チェックリスト
表 16-1 では、メディア リソース グループおよびメディア リソース グループ リストを設定する際のチェックリストを示しています。
表 16-1 メディア リソース グループおよびメディア リソース グループ リストの設定チェックリスト
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ステップ 1 |
メディア リソース グループを作成する。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group の設定」 |
ステップ 2 |
メディア リソース グループにデバイスを割り当てる(順序に意味はありません)。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group の設定」 |
ステップ 3 |
メディア リソース グループ リストを作成する(順序に意味があります)。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group List の設定」 |
ステップ 4 |
メディア リソース グループをメディア リソース グループ リストに割り当てる。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group List の設定」 |
ステップ 5 |
メディア リソース グループ リストをデバイスまたはデバイス プールに割り当てる。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「デバイス デフォルトの設定」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「デバイス プールの設定」 |
要件とシステムの制限
各種のメディア リソースに適用される制限は、次のとおりです。
メディア終端ポイントの制限
メディア終端ポイントには、次の制限が適用されます。
• 設定可能な半二重ストリーム数は、最大で 128。
• ストリーム数を 128 に設定した場合、メディア終端ポイント アプリケーション用に使用可能な全二重リソース数は、64。
ソフトウェア会議の制限
ソフトウェア会議には、次の制限が適用されます。
• 設定可能な全二重ストリーム数は、最大で 128。
• ストリーム数を 128 に設定した場合、ソフトウェア会議メディア リソースで処理可能なユーザ数は、単独の会議内で 128 人。または、次を参照。
• ストリーム数を 128 に設定した場合、ソフトウェア会議メディア リソースで処理可能な会議リソース数は、各会議に 3 人が参加するものとして最大で 42。
トランスコーダの制限
Cisco Catalyst 6000 ベースのトランスコーダには、次の制限が適用されます。登録可能なストリーム数は、48。提供されるトランスコーディング リソース数は、最大で 24。
ハードウェア会議の制限
Cisco Catalyst 6000 ハードウェアを使用するハードウェア会議には、次の制限が適用されます。登録可能なストリーム数は、32。ハードウェア会議で処理可能なユーザ数は、単独の会議内で 32 人。または、ハードウェア会議で処理可能な会議リソース数は、各会議に 3 人が参加するものとして最大で 10。
保留音楽サーバの制限
保留音楽メディア リソースには、次の制限が適用されます。
• 設定可能なシンプレックス ストリーム数は、最大で 500。
• ストリーム数を 500 に設定した場合、保留音楽アプリケーションで使用可能なリソース数は、最大で 500。
保留音楽の詳細は、「保留音楽」を参照してください。
メディア リソースのモニタリング
Windows2000 に付属する Performance Monitor ソフトウェアのカウンタを使用すると、メディア リソースの使用状況を監視することができます。次に、Cisco CallManager の統計カウンタを示します。カウンタは、次のメディア リソース デバイスをトラッキングします。
• ハードウェア会議
• メディア終端ポイント
• 保留音楽
• ソフトウェア会議
• トランスコーダ
メディア終端ポイント リソースのモニタリング
次のカウンタは、メディア終端ポイント リソースを監視します。
• MediaTermPointsActive:現在使用中のメディア終端ポイントの数。
• MediaTermPointsAvailable:現在 Cisco CallManager に登録はされているが、現時点では使用中ではないメディア終端ポイントの数。
• MediaTermPointsOutOfResources:メディア終端ポイントがコールにより要求されたが、使用できるリソースがなかった回数。
トランスコーダ リソースのモニタリング
次のカウンタは、トランスコーダ リソースを監視します。
• TranscoderActive:現在使用中のトランスコーダの数。
• TranscoderAvailable:現在 Cisco CallManager に登録はされているが、現時点では使用中ではないトランスコーダの数。
• TranscoderOutOfResources:コールに対してトランスコーダが要求されたが、使用できるリソースがなかった回数。
ソフトウェア会議リソースのモニタリング
次のカウンタは、ソフトウェア会議リソースを監視します。
• UnicastSoftwareConferencesAvailable:現在 Cisco CallManager に登録はされているが、現時点では使用中ではない会議の数。
• UnicastSoftwareConferenceActive:現在使用中の会議の数。
• UnicastSoftwareConferenceCompleted:会議が完了した回数。
• UnicastSoftwareOutOfResources:コールに対して会議が要求されたが、使用できるリソースがなかった回数。
ハードウェア会議リソースのモニタリング
次のカウンタは、ハードウェア会議リソースを監視します。
• UnicastHardwareConferenceActive:現在使用中の会議の数。
• UnicastHardwareConferenceAvailable:現在 Cisco CallManager に登録はされているが、現時点では使用中ではないハードウェア会議の数。
• UnicastHardwareConferenceCompleted:ハードウェア会議が完了した回数。
• UnicastHardwareConferenceOutOfResources:コールに対してハードウェア会議が要求されたが、使用できるリソースがなかった回数。
MOH リソースのモニタリング
次の PerfMon カウンタは、MOH リソースを監視します。
• MOHMulticastActiveStreams
• MOHMulticastAvailableStreams
• MOHOutOfResources
• MOHTotalMulticastStreams
• MOHTotalUnicastStreams
• MOHUnicastActiveStreams
• MOHUnicastAvailableStreams
「保留音楽」には、MOH に関連したカウンタの説明があります。
参考情報
参考資料
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group の設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group List の設定」
• 『 Cisco CallManager Features and Services Guide』の「 Music On Hold Audio Source Configuration 」
• 『 Cisco CallManager Features and Services Guide』の「 Music On Hold Server Configuration 」