トランスコーダの概要
トランスコーダは、あるコーデックによる出力ストリームを取り込み、圧縮タイプを他のタイプにトランスコーディング(変換)します。たとえば、G.711 コーデックの出力ストリームを取り込み、そのストリームを G.729 入力ストリームにリアルタイムでトランスコーディング(変換)できます。さらに、トランスコーダは MTP 機能も備えているので、必要に応じて H.323 エンドポイントに対して補助サービスを使用可能にする際に使用できます。
2 つのデバイス間で異なるコーデックを使用する場合、通常、情報は交換できません。Cisco CallManager は、エンドポイント デバイスの代わりにトランスコーダを起動します。トランスコーダは、コールに挿入されると、2 つの非互換のコーデック間で情報交換が可能になるように、そのコーデック間でデータ ストリームを変換します。
トランスコーダが動作するには、特定のハードウェアが必要です。同じハードウェアが、Conference Bridge、トランスコーダ、または public rate interface/channel associated signaling(PRI/CAS)インターフェイスもサポートします。
トランスコーダは、指定数のストリーミング メカニズムを提供します。このストリーミング メカニズムはそれぞれ、異なるコーデック間でデータ ストリームのトランスコーディングを行うことができます。さらに、必要に応じて、H.323 エンドポイントへのコールを行う場合に補助サービスを可能にします。
メディア リソース マネージャによるトランスコーダの管理
クラスタ内の Cisco CallManager はすべて、メディア リソース マネージャ(MRM)を介してトランスコーダにアクセスできます。MRM は、トランスコーダへのアクセスを管理します。
MRM は、Cisco CallManager のメディア リソース グループとメディア リソース グループ リストを使用します。メディア リソース グループ リストによって、トランスコーダは割り当てられたメディア リソース グループ内の他のデバイスと通信できます。またメディア リソース グループは、クラスタ内のリソースの管理に使用されます。
データベースに定義されているトランスコーダ デバイスごとに、トランスコーダ制御プロセスが作成されます。それぞれのトランスコーダは、初期化時に MRM に登録されます。MRM はトランスコーダ リソースのトラッキングを行い、リソースが使用可能かどうかをクラスタ全体にアドバタイズします。
トランスコーダのキャパシティ
ポートごとのトランスコーディング セッションの最大数は、24 です。サポートされるトランスコーディング能力とポートごとのセッション数は、次のとおりです。
• G711-G711 MTP:24(DSP は関連しない)
• G729-G729 MTP:24(DSP は関連しない)
• G711-G723 トランスコーディング:24
• G711-G729 トランスコーディング:24
• G711-GSM Full Rate(FR)トランスコーディング:24
• G711-GSM Enhanced Full Rate(EFR)トランスコーディング:24
たとえば、トランスコーダ 1 が 24 個のトランスコーダ リソース用に設定され、トランスコーダ 2 も 24 個のトランスコーダ リソース用に設定されているとします。両方のトランスコーダが同一の Cisco CallManager に登録されると、その Cisco CallManager は、両方のリソース セットを保持し、合計で 48 個のトランスコーダ リソースが登録されます。
24 のトランスコーダのキャパシティは、20 msec 当たり 1 パケットのパケット サイズに基づいています。より小さい 10 msec のパケット サイズを使用しても、オーディオ品質は向上せず、その代わりにトランスコーダ リソースの合計キャパシティが減少します。
コールの両側のエンドポイントで異なるコーデックが使用されていて、直接情報交換できないことを Cisco CallManager が判別すると、コーデック間でデータ ストリームのトランスコーディングを行うために、そのコールにトランスコーダが挿入されます。トランスコーダは、ユーザにも、コールに関連するエンドポイントにも見えることはありません。
MTP としてのトランスコーダの使用
CAT6000 WS-X6608-T1/E1 トランスコーダ ポート リソースは MTP 機能もサポートしており、Cisco CallManager クラスタ内でソフトウェア MTP が使用できない場合に、H.323 エンドポイントに対する補助サービスを可能にします。この機能では、コール内の 1 つのエンドポイントが MTP を要求していることを Cisco CallManager が判別すると、Cisco CallManager はトランスコーダ リソースを割り当て、コールにトランスコーダを挿入します。このトランスコーダは、MTP トランスコーダとして動作をします。
Cisco CallManager は、MTP とトランスコーディングの機能を同時にサポートします。たとえば、コールが Cisco IP Phone(G723 リージョンに存在する)から NetMeeting(G711 リージョンに存在する)に発信された場合、1 つのトランスコーダ リソースが MTP とトランスコーディングの機能を同時にサポートします。
ソフトウェア MTP/トランスコーダ リソースが必要なときに使用できない場合、コールはトランスコーダ リソースを使用せずに接続され、そのコールには補助サービスがないことになります。ハードウェア トランスコーダ機能が必要で(あるコーデリックを別のコーデリックに変換するため)、トランスコーダが使用できない場合、コールは失敗します。
トランスコーダのフェールオーバーとフェールバック
ここでは、トランスコーダ デバイスが登録されている Cisco CallManager が到達不能になった場合に、トランスコーダ デバイスがフェールオーバーとフェールバックを行う方法について説明します。また、トランスコーダ 1 で行われるリセットや再起動など、トランスコーダ デバイスに関連するコールに影響を与える状況についても説明します。
関連トピック
• 「アクティブな Cisco CallManager が非アクティブになった場合」
• 「登録済みのトランスコーダ デバイスのリセット」
アクティブな Cisco CallManager が非アクティブになった場合
次に、MTP の登録先の Cisco CallManager が非アクティブになった場合に、MTP デバイスが回復する方法を説明します。
• プライマリ Cisco CallManager に障害が発生した場合、トランスコーダは、トランスコーダの所属するデバイス プールに対して指定された Cisco CallManager グループ内で、次に使用可能な Cisco CallManager への登録を試みる。
• プライマリ Cisco CallManager が障害発生後に使用可能になり、現在使用されていない場合、トランスコーダ デバイスは即時にプライマリ Cisco CallManager に再登録される。
• トランスコーダ デバイスは、到達不能になった Cisco CallManager から登録解除される。その Cisco CallManager 上で行われていたコールまたは会議は、リスト内で次にある Cisco CallManager に登録される。
• トランスコーダが新しい Cisco CallManager への登録を試み、登録確認応答を受信しなかった場合、トランスコーダは次の Cisco CallManager への登録を行う。
登録済みのトランスコーダ デバイスのリセット
トランスコーダ デバイスは、ハード リセットまたはソフト リセット後に登録を解除し、続いて接続を解除します。リセットが完了した後、デバイスはプライマリ Cisco CallManager に再登録されます。
トランスコーダの設定チェックリスト
表 18-1 では、トランスコーダを設定する際のチェックリストを示しています。
表 18-1 トランスコーダの設定チェックリスト
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ステップ 1 |
必要なトランスコーダ リソースの数と、これらのリソースの提供に必要なトランスコーダ デバイスの数を判別する。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「トランスコーダの設定」 |
ステップ 2 |
トランスコーダを追加し、設定する。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「トランスコーダの設定」 |
ステップ 3 |
新しいトランスコーダを適切なメディア リソース グループに追加する。 |
「メディア リソースの管理」 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Media Resource Group の設定値」 |
ステップ 4 |
トランスコーダ デバイスを再起動する。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「トランスコーダのリセット」 |