Cisco IOS ACL 設定時の注意事項および制約事項
Cisco IOS ACL 設定には、次の注意事項および制約事項が適用されます。
• Cisco IOS ACL をレイヤ 3 ポートおよび VLAN インターフェイスに直接、適用できます。
• VLAN ACL(VACL)を VLAN に適用できます(を参照)。
• 各タイプの ACL(IP、IPX、および MAC)は対応するトラフィック タイプだけをフィルタリングします。Cisco IOS MAC ACL が IP または IPX トラフィックを照合することはありません。
• PFC では、ハードウェアで Cisco IOS IPX ACL をサポートしません。Cisco IOS IPX ACL は、MSFC のソフトウェアでサポートされます。
• パケットがアクセス グループによって拒否された場合、デフォルトで MSFC が Internet Control Message Protocol(ICMP)到達不能メッセージを送信します。
ip unreachables コマンドがイネーブルの場合(デフォルト)、スーパーバイザ エンジンは拒否されたパケットの大部分をハードウェアで廃棄し、一部のパケット(最大で 10 パケット/秒)だけが MSFC に送信されて廃棄されます(これにより ICMP 到達不能メッセージが生成されます)。
拒否されたパケットを廃棄し、ICMP 到達不能メッセージを生成することによって MSFC の CPU にかかる負荷を軽減するには、 no ip unreachables インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力して、ICMP 到達不能メッセージをディセーブルにします。これにより、アクセス グループによって拒否されたすべてのパケットがハードウェアで廃棄されます。
• パケットが VACL によって拒否された場合、ICMP 到達不能メッセージは送信されません。
• アクセス コントロール エントリ(ACE)の一致 IP オプションは、ハードウェア転送パスではサポートされません。
ハードウェアおよびソフトウェア ACL のサポート
アクセス コントロール リスト(ACL)は、ハードウェアの場合には Policy Feature Card(PFC; ポリシー フィーチャ カード)、Distributed Forwarding Card(DFC; 分散型フォワーディング カード)で、ソフトウェアの場合には Multilayer Switch Feature Card(MSFC)で処理できます。次の動作における、ACL のソフトウェアとハードウェア処理を説明します。
• PFC では、番号付き ACL より名前付き ACL の方がより効率的にハードウェアでサポートされます。
• 標準 ACL および拡張 ACL(入力および出力)の「deny」ステートメントに一致する ACL フローは、「ip unreachables」がディセーブルに設定されている場合、ハードウェアによってドロップされます。
• 標準 ACL および拡張 ACL(入力および出力)の「permit」ステートメントに一致する ACL フローは、ハードウェアで処理されます。
• VLAN ACL(VACL)フローはハードウェアで処理されます。VACL で指定されたフィールドのハードウェア処理がサポートされていない場合、このフィールドは無視されるか(ACL の log キーワードなど)、または設定全体が拒否されます(IPX ACL パラメータを含む VACL など)。
• VACL ロギングはソフトウェアで処理されます。
• ダイナミック ACL フローはハードウェアで処理されます。
• アイドル タイムアウトはソフトウェアで処理されます。
(注) アイドル タイムアウトは設定できません。Cisco 7600 シリーズ ルータでは access-enable host timeout コマンドがサポートされません。
• 特定のポート上の ACL アクセス違反の IP アカウントは、そのポート上で拒否された全パケットを MSFC に転送し、ソフトウェアで処理させることによってサポートされます。この動作は他のフローには影響しません。
• PFC では、ハードウェアで Cisco IOS IPX ACL をサポートしません。Cisco IOS IPX ACL は、MSFC のソフトウェアでサポートされます。
• 名前ベースの拡張 MAC アドレス ACL は、ハードウェアでサポートされています。
• 次の ACL タイプは、ソフトウェアによって処理されます。
– Internetwork Packet Exchange(IPX)アクセス リスト
– 標準 XNS アクセス リスト
– 拡張 XNS アクセス リスト
– DECnet アクセス リスト
– 拡張 MAC アドレス アクセス リスト
– プロトコル タイプコード アクセス リスト
(注) ヘッダー長が 5 バイト未満の IP パケットは、アクセス コントロールされません。
• 最適化 ACL ロギング(OAL)を設定しない限り、ロギングを必要とするフローはソフトウェアで処理され、ハードウェアでの非ロギング フローの処理には影響しません(「PFC3 での最適化 ACL ロギング」を参照)。
• ソフトウェアで処理されるフローの転送レートは、ハードウェアで処理されるフローに比べると、大幅に小さくなります。
• show ip access-list コマンドの出力に表示される一致カウントには、ハードウェアで処理されたパケットは含まれません。
PFC3 での最適化 ACL ロギング
ここでは OAL について説明します。
• 「OAL の概要」
• 「OAL に関する注意事項および制約事項」
• 「OAL の設定」
OAL の概要
Optimized ACL Logging(OAL; 最適化 ACL ロギング)は、ACL ロギングをハードウェアでサポートしています。OAL を設定しない限り、ロギングを必要とするパケットは、MSFC のソフトウェアで完全に処理されます。OAL では、PFC3 のハードウェアでパケットの許可または廃棄を行い、最適化ルーチンを使用して情報を MSFC3 に送信し、ロギング メッセージを生成します。
OAL に関する注意事項および制約事項
OAL には、次の注意事項および制約事項が適用されます。
• OAL キャプチャと VACL キャプチャには互換性がありません。ルータで両方の機能を一緒に設定しないでください。OAL が設定された状態で、SPAN を使用してトラフィックをキャプチャします。
• OAL は PFC3 だけでサポートされます。
• OAL は IPv4 ユニキャスト パケットだけをサポートしています。
• OAL は、許可された入力トラフィックの VACL ロギングをサポートしています。
• OAL は、次のものに対してはハードウェアでのサポートをしていません。
– 再帰 ACL
– 他の機能(QoS など)のトラフィックのフィルタ処理に使用される ACL
– 例外パケット(存続可能時間(TTL)障害や MTU 障害など)
– IP オプションが指定されたパケット
– レイヤ 3 でルータへのアドレスが指定されたパケット
– ICMP 到達不能メッセージを生成するために MSFC3 へ送信されるパケット
– ハードウェアでは加速されず、機能によって処理されるパケット
• 拒否されたパケットに OAL サポートを提供するには、 mls rate-limit unicast ip icmp unreachable acl-drop 0 コマンドを入力します。
OAL グローバル パラメータの設定
OAL グローバル パラメータを設定するには、次の作業を行います。
|
|
Router(config)# logging ip access-list cache {{ entries number_of_entries } | { interval seconds } | { rate-limit number_of_packets } | { threshold number_of_packets }} |
OAL グローバル パラメータを設定します。 |
Router(config)# no logging ip access-list cache { entries | interval | rate-limit | threshold } |
OAL グローバル パラメータをデフォルトに戻します。 |
OAL グローバル パラメータを設定する場合、次の情報に注意してください。
• entries number_of_entries :
– キャッシュされるエントリの最大数を設定します。
– 範囲:0~1,048,576(カンマを含めないで入力)。
– デフォルト:8000
• interval seconds :
– ログのためにエントリが送信されるまでの最大時間を設定します。この時間中エントリが非アクティブの場合、キャッシュから削除されます。
– 範囲:5~86,400(1440 分つまり 24 時間、カンマを含めないで入力)。
– デフォルト:300 秒(5 分)。
• rate-limit number_of_packets :
– ソフトウェアで 1 秒間にログに記録されるパケット数を設定します。
– 範囲:10~1,000,000(カンマを含めないで入力)。
– デフォルト:0(レート制限がオフになり、すべてのパケットがログに記録されます)。
• threshold number_of_packets :
– エントリがログに記録されるまでに一致するパケット数を設定します。
– 範囲:1~1,000,000(カンマを含めないで入力)。
– デフォルト:0(一致パケット数に達してもログの記録は開始されません)。
インターフェイスでの OAL の設定
インターフェイスで OAL を設定するには、次の作業を行います。
|
|
|
ステップ 1 |
Router(config)# interface {{ type slot/port } |
設定するインターフェイスを指定します。 |
ステップ 2 |
Router(config-if)# logging ip access-list cache in |
インターフェイスの入力トラフィックに対して OAL をイネーブルにします。 |
Router(config-if)# no logging ip access-list cache |
インターフェイスでの OAL をディセーブルにします。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# logging ip access-list cache out |
インターフェイスの出力トラフィックに対して OAL をイネーブルにします。 |
Router(config-if)# no logging ip access-list cache |
インターフェイスでの OAL をディセーブルにします。 |
OAL 情報の表示
OAL 情報を表示するには、次の作業を行います。
|
|
Router #
show logging ip access-list cache
|
OAL 情報を表示します。 |
キャッシュされた OAL エントリのクリア
キャッシュされた OAL エントリをクリアするには、次の作業を行います。
|
|
Router #
clear logging ip access-list cache
|
キャッシュされた OAL エントリをクリアします。 |
ACL におけるレイヤ 4 演算の使用上の注意事項および制約事項
ここでは、レイヤ 4 ポート演算を含む ACL を設定する場合の注意事項および制約事項について説明します。
• 「レイヤ 4 演算の使用」
• 「論理演算ユニットの使用」
レイヤ 4 演算の使用
次のタイプの演算子を指定できます。
• gt(geater than:より大きい)
• lt(less than:より小さい)
• neq(not equal:等しくない)
• eq(equal:等しい)
• range(inclusive range:包含範囲)
1 つの ACL に、9 つより多くの 異なる 演算を指定しないよう推奨します。この数を超えると、新しい演算によって影響される ACE が、複数の ACE に分割されることがあります。
レイヤ 4 演算を使用するときは、次の 2 つの注意事項に従ってください。
• レイヤ 4 演算は、演算子またはオペランドが異なっていると、違う演算であると見なされます。たとえば、次の ACL には 3 つの異なるレイヤ 4 演算が定義されています(「gt 10」と「gt 11」は 2 つの異なるレイヤ 4 演算です)。
(注) 「eq」演算子の使用に制限はありません。「eq」演算子は論理演算ユニット(LOU)またはレイヤ 4 演算ビットを使用しないためです。LOU については、「論理演算ユニットの使用」を参照してください。
• レイヤ 4 演算は、同じ演算子/オペランドの組み合わせでも、送信元ポートに適用するか宛先ポートに適用するかによって異なる演算になります。たとえば次の ACL では、1 つの ACE には送信元ポート、もう 1 つの ACE には宛先ポートが指定されているので、2 つの異なるレイヤ 4 演算が定義されていることになります。
論理演算ユニットの使用
論理演算ユニット(LOU)は、演算子/オペランドの組み合わせを保存するレジスタです。ACL はすべて、LOU を使用します。最大 32 の LOU があります。各 LOU には、2 つの異なる演算子/オペランドの組み合わせを保存できますが、range 演算子だけは例外です。レイヤ 4 演算は、次のように LOU を使用します。
• gt は、1/2 LOU を使用します。
• lt は、1/2 LOU を使用します。
• neq は、1/2 LOU を使用します。
• range は、1 LOU を使用します。
• eq は、LOU を使用しません。
たとえば、次の ACL では、1 つの LOU に 2 つの異なる演算子/オペランドの組み合わせが保存されます。
以下は、より詳細な例です。
... (dst port) gt 10 permit
... (dst port) gt 11 deny
... (dst port) neq 6 permit
... (src port) neq 6 deny
... (dst port) gt 10 deny
... (dst port) gt 20 deny
... (src port) range 11 13 deny
... (dst port) neq 6 permit
レイヤ 4 演算数と LOU 数は、次のとおりです。
• ACL1 のレイヤ 4 演算:5
• ACL2 のレイヤ 4 演算:4
• LOU:4
LOU は、次のように使用されています。
• LOU1 に、「gt 10」および「lt 9」が保存されます。
• LOU2 に、「gt 11」および「neq 6」が保存されます。
• LOU 3 に、「gt 20」が保存されます(半分は空き)。
• LOU 4 に、「range 11 13」が保存されます(range は 1 LOU を使用)。