DAI の概要
ここでは、DAI によって ARP スプーフィング攻撃を防止する方法について説明します。
• 「ARP の概要」
• 「ARP スプーフィング攻撃の概要」
• 「DAI および ARP スプーフィング攻撃の概要」
ARP の概要
ARP では、IP アドレスを MAC アドレスにマッピングすることで、レイヤ 2 ブロードキャスト ドメイン内の IP 通信を実現します。たとえば、ホスト B がホスト A に情報を送信しようとする場合、ホスト B の ARP キャッシュにホスト A の MAC アドレスが存在しないとします。ホスト B はホスト A の IP アドレスに関連付けられた MAC アドレスを取得するため、このブロードキャスト ドメイン内の全ホストに対してブロードキャスト メッセージを送信します。ブロードキャスト ドメイン内の全ホストはこの ARP 要求を受信し、これに対してホスト A は自身の MAC アドレスで応答します。
ARP スプーフィング攻撃の概要
ARP スプーフィング攻撃と ARP キャッシュ ポイズニングは、ARP 要求を受信していないホストでも応答できる ARP の機能性を利用して行う攻撃です。攻撃が開始されると、攻撃を受けたデバイスからのすべてのトラフィックは、攻撃者のコンピュータを経由してルータ、スイッチ、またはホストに送信されるようになります。
ARP スプーフィング攻撃は、サブネットに接続されたシステムの ARP キャッシュをポイズニング(汚染)し、このサブネット上の他のホスト宛てのトラフィックを代行受信することで、レイヤ 2 ネットワークに接続されたホスト、スイッチ、およびルータを攻撃することができます。図 42-1 は、ARP キャッシュ ポイズニングの例を示します。
図 42-1 ARP キャッシュ ポイズニング
ホスト A、B、C は、それぞれインターフェイス A、B、C を介してルータに接続されています。すべてのホストは同一サブネットに属します。カッコ内は、各ホストの IP および MAC アドレスを示します。たとえば、ホスト A は IP アドレス IA および MAC アドレス MA を使用します。ホスト A が IP レイヤ上でホスト B と通信する場合は、ホスト A は IP アドレス IB に関連付けられた MAC アドレスを尋ねる ARP 要求をブロードキャストします。ルータとホスト B はこの ARP 要求を受信すると、IP アドレス IA および MAC アドレス MA を持つホストの ARP バインディングを、それぞれの ARP キャッシュ内に読み込みます。たとえば、IP アドレス IA は MAC アドレス MA にバインドされます。ホスト B が応答すると、ルータとホスト A は、IP アドレス IB および MAC アドレス MB を持つホストのバインディングを、それぞれの ARP キャッシュ内に読み込みます。
ホスト C は、IP アドレス IA(または IB)および MAC アドレス MC を持つホストのバインディングによって偽装した ARP 応答をブロードキャストすることで、ルータ、ホスト A、およびホスト B の ARP キャッシュをポイズニングできます。ARP キャッシュがポイズニングされたホストは、IA または IB 宛てのトラフィックに、宛先 MAC アドレスとして MAC アドレス MC を使用します。つまり、ホスト C がこのトラフィックを代行受信することになります。ホスト C は IA および IB に関連付けられた本物の MAC アドレスを知っているため、正しい MAC アドレスを宛先として使用することで、代行受信したトラフィックをこれらのホストに転送できます。ホスト C は、ホスト A からホスト B へのトラフィック ストリーム内に自身を割り込ませています。これは、 man-in-the-middle 攻撃の典型的なトポロジーです。
DAI および ARP スプーフィング攻撃の概要
DAI は、ネットワーク内の ARP パケットを検証するセキュリティ機能です。DAI は、IP アドレスと MAC アドレスとの無効なバインディングを持つ ARP パケットを代行受信、記録、および廃棄します。この機能により、一部の man-in-the-middle 攻撃からネットワークを保護できます。
DAI を使用することで、有効な ARP 要求および応答だけがリレーされるようになります。ルータの動作は次のとおりです。
• 信頼できないポートを経由したすべての ARP 要求および ARP 応答を代行受信します。
• 代行受信した各パケットが、IP アドレスと MAC アドレスとの有効なバインディングを持つことを確認してから、ローカル ARP キャッシュを更新するか、適切な宛先にパケットを転送します。
• 無効な ARP パケットは廃棄します。
DAI は信頼できるデータベースに保存された IP アドレスと MAC アドレスとの有効なバインディングに基づき、ARP パケットの有効性を判断します。このデータベースを、Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP)スヌーピング バインディング データベースと呼びます。このデータベースは、VLAN およびルータ上で DHCP スヌーピングがイネーブルにされている場合に、DHCP スヌーピングによって構築されます。信頼できるインターフェイス上で ARP パケットを受信した場合は、ルータはこのパケットを検査せずに転送します。信頼できないインターフェイスでは、ルータは有効性を確認できたパケットだけを転送します。
DAI では、スタティックに設定した IP アドレスを持つホストに対し、ユーザ設定の ARP アクセス コントロール リスト(ACL)に照合することで ARP パケットを検証できます(「DAI フィルタリングのための ARP ACL の適用」を参照)。ルータは、ドロップされたパケットを記録します(「ドロップされたパケットのロギング」を参照)。
DAI では、パケット内の IP アドレスが無効な場合に ARP パケットを廃棄するのか、ARP パケット本体の MAC アドレスがイーサネット ヘッダーに指定されたアドレスと一致しない場合に ARP パケットを廃棄するのかを設定できます(「追加検証のイネーブル化」を参照)。
インターフェイスの信頼状態とネットワーク セキュリティ
DAI は、ルータの各インターフェイスに信頼状態を関連付けます。信頼できるインターフェイス上で受信されたパケットは、DAI のすべての有効性検査をバイパスしますが、信頼できないインターフェイス上で受信されたパケットには、DAI の有効性検査が行われます。
一般的なネットワーク構成では、ホスト ポートに接続されているすべてのルータ ポートを信頼できないポートとして、ルータに接続されているすべてのルータ ポートは信頼できるポートとして設定します。この構成では、特定ルータからネットワークに送信されるすべての ARP パケットは、セキュリティ検査をバイパスします。VLAN 内、またはネットワーク内のその他の場所では、他の検査を実行する必要はありません。信頼状態を設定するには、 ip arp inspection trust インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
注意 信頼状態の設定は、慎重に使用してください。信頼すべきインターフェイスを信頼できないインターフェイスとして設定すると、接続が失われる場合があります。
図 42-2 では、ルータ A と ルータ B の両方が、ホスト 1 とホスト 2 を収容する VLAN 上で DAI を実行していると仮定します。ホスト 1 とホスト 2 がルータ A に接続されている DHCP サーバから IP アドレスを取得すると、ルータ A だけがホスト 1 の IP アドレスと MAC アドレスをバインドします。したがって、ルータ A とルータ B 間のインターフェイスが信頼できない場合は、ホスト 1 からの ARP パケットはルータ B では廃棄されます。こうして、ホスト 1 とホスト 2 の間の接続が失われます。
図 42-2 DAI をイネーブルにした VLAN での ARP パケット検証
実際には信頼できないインターフェイスを信頼できるインターフェイスとして設定すると、ネットワーク内にセキュリティ ホールが生じます。ルータ A が DAI を実行していなければ、ホスト 1 は ルータ B(ルータ間のリンクが信頼可能として設定されている場合はホスト 2 も同様)の ARP キャッシュを簡単にポイズニングできます。この状況は、ルータ B が DAI を実行している場合でも発生する場合があります。
DAI は、DAI を実行するルータに接続された、信頼できないインターフェイス上のホストが、ネットワーク内の他のホストの ARP キャッシュをポイズニングしないようにします。ただし、ネットワークのその他の場所にあるホストが、DAI を実行するルータに接続されたホストのキャッシュをポイズニングする可能性は防止できません。
VLAN 内の一部のルータが DAI を実行し、他のルータは DAI を実行していない状況では、これらのルータに接続されたインターフェイスを信頼できないインターフェイスとして設定します。ただし、DAI が設定されていないルータからのパケットのバインディングを検証するには、DAI を実行するルータ上で ARP ACL を設定します。こうしたバインディングを判断できない場合は、レイヤ 3 において、DAI を実行するルータを DAI を実行しないルータから切り離します。設定の詳細については、「例 2:1 つのスイッチが DAI をサポートする場合」を参照してください。
(注) DHCP サーバとネットワークのセットアップ方法によっては、VLAN 内のすべてのルータで、特定の ARP パケットを検証できない場合もあります。
ARP パケットのレート制限
ルータは、DAI 有効性検査を実行することで着信 ARP パケットをレート制限して、DoS 攻撃を防止します。デフォルトでは、信頼できないインターフェイスのレートは 15 packets per second(pps; パケット/秒)です。信頼できるインターフェイスは、レート制限されません。この設定を変更するには、 ip arp inspection limit インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
着信 ARP パケットのレートが、設定したレート制限を超えると、ルータはこのポートを errdisable ステートにします。ユーザが介入するまで、ポートはこの状態を維持します。 errdisable recovery グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用すると、errdisable ステートの回復をイネーブルにできます。これによって、ポートは指定のタイムアウト時間が経過すると、この状態から自動的に回復するようになります。
設定の詳細については、「ARP パケットのレート制限の設定」を参照してください。
ARP ACL および DHCP スヌーピング エントリの相対的なプライオリティ
DAI では DHCP スヌーピング バインディング データベースを使用して、IP アドレスと MAC アドレスとの有効なバインディングのリストを維持します。
DHCP スヌーピング バインディング データベース内のエントリより、ARP ACL の方が優先されます。 ip arp inspection filter グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して設定している場合に限り、ACL はルータに適用されます。ルータはまず、ARP パケットを、ユーザが設定した ARP ACL と照合します。ARP パケットが ARP ACL によって拒否される場合は、DHCP スヌーピングによって読み込まれた有効なバインディングがデータベース内に存在する場合であっても、ルータはこのパケットを拒否します。
ドロップされたパケットのロギング
ルータはパケットを廃棄すると、ログ バッファ内にエントリを作成して、レート制限に基づくシステム メッセージを生成します。メッセージが生成されたあとは、ルータはこのエントリをログ バッファから消去します。各ログ エントリには、受信側の VLAN、ポート番号、送信元および宛先 IP アドレス、送信元および宛先 MAC アドレスといったフロー情報が含まれます。
ip arp inspection log-buffer グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して、バッファ内のエントリ数や、システム メッセージ生成までの指定のインターバルに必要なエントリ数を設定します。記録されるパケットの種類を指定するには、 ip arp inspection vlan logging グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。設定の詳細については、「DAI ログ機能の設定」を参照してください。
DAI 設定時の注意事項および制約事項
DAI を設定する場合、次の注意事項および制約事項に従ってください。
• DAI は入力セキュリティ機能であり、出力検査は行いません。
• DAI は、DAI をサポートしないルータ、またはこの機能がイネーブルにされていないルータに接続されたホストに対しては、効果がありません。man-in-the-middle 攻撃は 1 つのレイヤ 2 ブロードキャスト ドメインに限定されるため、DAI 検査が有効なドメインを、DAI 検査の行われないドメインから切り離します。これにより、DAI をイネーブルにしたドメイン内のホストの ARP キャッシュをセキュリティ保護できます。
• DAI では、着信 ARP 要求および ARP 応答内の IP アドレスと MAC アドレスとのバインディングを、DHCP スヌーピング バインディング データベース内のエントリに基づいて検証します。IP アドレスが動的に割り当てられた ARP パケットを許可するには、DHCP スヌーピングを必ずイネーブルにしてください。設定の詳細については、を参照してください。
• DHCP スヌーピングをディセーブルにしている場合、または DHCP 以外の環境では、ARP ACL を使用してパケットの許可または拒否を行います。
• DAI は、アクセス ポート、トランク ポート、EtherChannel ポート、およびプライベート VLAN ポートでサポートされます。
• 物理ポートを EtherChannel ポート チャネルに結合するには、この物理ポートとチャネル ポートの信頼状態が一致する必要があります。そうでない物理ポートは、ポート チャネル内で中断状態のままとなります。ポート チャネルは、チャネルと結合された最初の物理ポートの信頼状態を継承します。したがって、最初の物理ポートの信頼状態は、チャネルの信頼状態と一致する必要はありません。
逆に、ポート チャネルの信頼状態を変更すると、ルータはチャネルを構成するすべての物理ポートに対し、新たにこの信頼状態を設定します。
• ポート チャネルの動作レートは、チャネル内のすべての物理ポートによる累積値です。たとえば、ポート チャネルの ARP レート制限を 400 pps に設定すると、このチャネルに結合されたすべてのインターフェイスは、合計で 400 pps を受信します。EtherChannel ポートで受信される ARP パケットのレートは、すべてのチャネル メンバーからの受信パケット レートの合計となります。EtherChannel ポートのレート制限は、各チャネル ポート メンバーが受信する ARP パケットのレートを確認してから設定してください。
物理ポートで受信されるパケットのレートは、物理ポートの設定ではなく、ポート チャネルの設定に照合して検査されます。ポート チャネルのレート制限設定は、物理ポートの設定には依存しません。
EtherChannel が、設定したレートより多くの ARP パケットを受信すると、このチャネル(すべての物理ポートを含む)は errdisable ステートとなります。
• 着信トランク ポートでは、ARP パケットを必ずレート制限してください。トランク ポートは、各ポートのアグリゲーションを考慮し、DAI をイネーブルにした複数の VLAN でパケットを処理できるように、高い値に設定します。また、 ip arp inspection limit none インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用すると、レートを無制限として設定できます。1 つの VLAN に高いレート制限値を設定すると、ソフトウェアによってこのポートが errdisable ステートにされた場合に、他の VLAN への DoS 攻撃を招く可能性があります。
• Cisco IOS Release 12.2(33)SRD2 は 512k までの ARP スケール(スタティックまたはダイナミック)をサポートします。この機能は、2G SP メモリを搭載した RSP720-3CXL-GE または 2G SP メモリを搭載した RSP720-3CXL-10GE を備えた Cisco 7600 シリーズ ES+ ラインカードの 3CXL バージョンでサポートされます。次の注意事項に従ってください。
– レイヤ 3 インターフェイスとして Switched Virtual Interface(SVI; スイッチ仮想インターフェイス)を使用している場合は、MAC ラーニングをディセーブルにする必要があります。
– IPv4 の Cisco Express Forwarding(CEF; シスコ エクスプレス フォワーディング)の容量を増やすには、mls cef maximum-routes コマンドを使用します。
DAI の設定
ここでは、DAI の設定手順について説明します。
• 「VLAN での DAI のイネーブル化」
• 「DAI インターフェイスの信頼状態の設定」
• 「DAI フィルタリングのための ARP ACL の適用」
• 「ARP パケットのレート制限の設定」
• 「DAI errdisable ステート回復のイネーブル化」
• 「追加検証のイネーブル化」
• 「DAI ログ機能の設定」
• 「DAI 情報の表示」
VLAN での DAI のイネーブル化
VLAN で DAI をイネーブルにするには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip arp inspection vlan { vlan_ID | vlan_range } |
VLAN で DAI をイネーブルにします(デフォルトではディセーブル)。 |
Router(config)# no ip arp inspection vlan { vlan_ID | vlan_range } |
VLAN で DAI をディセーブルにします。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# do show ip arp inspection vlan { vlan_ID | vlan_range } | begin Vlan |
設定を確認します。 |
DAI は 1 つの VLAN、または特定の VLAN 範囲でイネーブルにできます。
• 1 つの VLAN でイネーブルにするには、1 つの VLAN 番号を入力します。
• 特定の VLAN 範囲でイネーブルにするには、一組の VLAN 番号をダッシュ(-)でつなげて入力します。
• 複数の VLAN 番号をカンマで区切って入力することも、一組の VLAN 番号をダッシュでつなげて入力することもできます。
次に、VLAN 10 ~ 12 で DAI をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# ip arp inspection vlan 10-12
次に、VLAN 10 ~ 12 で DAI をイネーブルにするもう 1 つの方法を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# ip arp inspection vlan 10,11,12
次に、VLAN 10 ~ 12、および VLAN 15 で DAI をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# ip arp inspection vlan 10-12,15
次に、設定を確認する例を示します。
Router(config)# do show ip arp inspection vlan 10-12,15 | begin Vlan
Vlan Configuration Operation ACL Match Static ACL
---- ------------- --------- --------- ----------
Vlan ACL Logging DHCP Logging
---- ----------- ------------
DAI インターフェイスの信頼状態の設定
ルータは、信頼できるインターフェイス上の他のルータから受信した ARP パケットは検査しません。この場合、パケットはそのまま転送されます。
信頼できないインターフェイスでは、ルータはすべての ARP 要求および ARP 応答を代行受信します。ルータは、代行受信されたパケットが有効な IP-to-MAC アドレス バインディングを持つことを確認してから、ローカル キャッシュを更新するか、適切な宛先にパケットを転送します。ルータは無効なパケットを廃棄し、 ip arp inspection vlan logging グローバル コンフィギュレーション コマンドで指定されたログ設定に基づき、ログ バッファに廃棄パケットを記録します。詳細については、 「DAI ログ機能の設定」 を参照してください。
DAI インターフェイスの信頼状態を設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# interface { type slot/port | port-channel number } |
別のルータに接続されているインターフェイスを指定して、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# ip arp inspection trust |
ルータ間の接続を、trusted として設定します(デフォルトでは untrusted)。 |
Router(config)# no ip arp inspection trust |
ルータ間の接続を、untrusted として設定します。 |
ステップ 4 |
Router(config-if)# do show ip arp inspection interfaces |
DAI の設定を確認します。 |
次に、ファスト イーサネット ポート 5/12 を信頼できるポートとして設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# interface fastethernet 5/12
Router(config-if)# ip arp inspection trust
Router(config-if)# do show ip arp inspection interfaces | include Int|--|5/12
Interface Trust State Rate (pps) Burst Interval
--------------- ----------- ---------- --------------
DAI フィルタリングのための ARP ACL の適用
(注) arp access-list コマンドの詳細については、『Cisco 7600 Series Router Cisco IOS Command Reference』を参照してください。
ARP ACL を適用するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router# ip arp inspection filter arp_acl_name vlan { vlan_ID | vlan_range } [static] |
ARP ACL を VLAN に適用します。 |
ステップ 3 |
Router(config)# do show ip arp inspection vlan { vlan_ID | vlan_range } |
入力を確認します。 |
ARP ACL を適用する場合、次の点に注意してください。
• vlan_range には、1 つの VLAN、または特定の VLAN 範囲を指定できます。
– 1 つの VLAN を指定するには、1 つの VLAN 番号を入力します。
– 特定の VLAN 範囲で指定にするには、一組の VLAN 番号をダッシュ(-)でつなげて入力します。
– 複数の VLAN 番号をカンマで区切って入力することも、一組の VLAN 番号をダッシュでつなげて入力することもできます。
• (任意) static を指定すると、ARP ACL 内の暗黙的な拒否が明示的な拒否と見なされ、それ以前に指定された ACL 句に一致しないパケットは廃棄されます。DHCP バインディングは使用されません。
このキーワードを指定しない場合は、ACL 内にはパケットを拒否する明示的な拒否が存在しないことになります。この場合は、ACL 句に一致しないパケットを許可するか拒否するかは、DHCP バインディングによって決定されます。
• IP-to-MAC アドレス バインディングしか持たない ARP パケットは、ACL と比較されます。パケットは、アクセス リストで許可された場合だけに許可されます。
次に、example_arp_acl という名前の ARP ACL を、VLAN 10 ~ 12、および VLAN 15 に適用する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection filter example_arp_acl vlan 10-12,15
Router(config)# do show ip arp inspection vlan 10-12,15 | begin Vlan
Vlan Configuration Operation ACL Match Static ACL
---- ------------- --------- --------- ----------
10 Enabled Inactive example_arp_acl No
11 Enabled Inactive example_arp_acl No
12 Enabled Inactive example_arp_acl No
15 Enabled Inactive example_arp_acl No
Vlan ACL Logging DHCP Logging
---- ----------- ------------
ARP パケットのレート制限の設定
DAI をイネーブルにすると、ルータは ARP パケットの有効性検査を実行します。これにより、ルータは ARP パケットの DoS 攻撃を受けやすくなります。ARP パケットをレート制限することで、ARP パケットの DoS 攻撃を防止できます。
ARP パケットのレート制限をポートに設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# interface { type slot/port | port-channel number } |
設定するインターフェイスを選択します。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# ip arp inspection limit { rate pps [ burst interval seconds ] | none } |
(任意)ARP パケットのレート制限を設定します。 |
Router(config-if)# no ip arp inspection limit |
ARP パケットのレート制限設定を解除します。 |
ステップ 4 |
Router(config-if)# do show ip arp inspection interfaces |
設定を確認します。 |
ARP パケットのレート制限を設定する場合、次の点に注意してください。
• デフォルト レートは、信頼できないインターフェイスでは 15 pps、信頼できるインターフェイスでは無制限です。
• rate pps には、1 秒あたりに処理される着信パケット数の上限を指定します。有効な範囲は 0 ~ 2048 pps です。
• rate none キーワードは、処理できる着信 ARP パケットのレートに上限がないことを指定します。
• (任意) burst interval seconds (デフォルトは 1)には、インターフェイスをモニタして高レートの ARP パケットの有無を確認するための、連続するインターバルを秒単位で指定します。有効な範囲は 1 ~ 15 です。
• 着信 ARP パケットのレートが、設定したレート制限を超えると、ルータはこのポートを errdisable ステートにします。ポートは、errdisable ステートの回復がイネーブルにされるまで、errdisable ステートを維持します。errdisable ステートの回復をイネーブルにすると、指定のタイムアウト時間が経過した時点で、ポートは errdisable ステートから回復します。
• インターフェイスのレート制限値を設定しない限り、インターフェイスの信頼状態を変更すると、このレート制限値も、設定した信頼状態に対応するデフォルト値に変更されます。レート制限値を設定すると、信頼状態を変更した場合でも、インターフェイスはこのレート制限値を維持します。 no ip arp inspection limit インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力すると、インターフェイスはデフォルトのレート制限値に戻ります。
• トランク ポートおよび EtherChannel ポートで受信される ARP パケットのレート制限を設定するうえでの注意事項については、「DAI 設定時の注意事項および制約事項」を参照してください。
次に、ファスト イーサネット ポート 5/14 に ARP パケットのレート制限を設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# interface fastethernet 5/14
Router(config-if)# ip arp inspection limit rate 20 burst interval 2
Router(config-if)# do show ip arp inspection interfaces | include Int|--|5/14
Interface Trust State Rate (pps) Burst Interval
--------------- ----------- ---------- --------------
DAI errdisable ステート回復のイネーブル化
DAI の errdisable ステート回復をイネーブルにするには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# errdisable recovery cause arp-inspection |
(任意)DAI の errdisable ステート回復をイネーブルにします(デフォルトはディセーブル)。 |
Router(config-if)# no errdisable recovery cause arp-inspection |
DAI の errdisable ステート回復をディセーブルにします。 |
ステップ 3 |
Router(config)# do show errdisable recovery | include Reason|---|arp- |
設定を確認します。 |
次に、DAI の errdisable ステート回復をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# errdisable recovery cause arp-inspection
Router(config)# do show errdisable recovery | include Reason|---|arp-
ErrDisable Reason Timer Status
----------------- --------------
追加検証のイネーブル化
DAI は、IP アドレスと MAC アドレスとの無効なバインディングを持つ ARP パケットを代行受信、記録、および廃棄します。宛先 MAC アドレス、送信元および宛先 IP アドレス、送信元 MAC アドレスに対し、追加検証をイネーブルにすることができます。
追加検証をイネーブルにするには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip arp inspection validate {[ dst-mac ] [ ip ] [ src-mac ]} |
(任意)追加検証をイネーブルにします(デフォルトはなし)。 |
Router(config)# no ip arp inspection validate {[ dst-mac ] [ ip ] [ src-mac ]} |
追加検証をディセーブルにします。 |
ステップ 3 |
Router(config)# do show ip arp inspection | include abled$ |
設定を確認します。 |
追加検証をイネーブルにする場合、次の点に注意してください。
• 少なくとも 1 つのキーワードを指定する必要があります。
• 各 ip arp inspection validate コマンドは、それまでに指定したコマンドの設定を上書きします。 ip arp inspection validate コマンドによって src および dst mac 検証をイネーブルにし、2 つめの ip arp inspection validate コマンドで IP 検証だけをイネーブルにした場合は、2 つめのコマンドの結果によって src および dst mac 検証がディセーブルになります。
• 次の追加検証を実行できます。
– dst-mac :イーサネット ヘッダー内の宛先 MAC アドレスを、ARP 本体のターゲット MAC アドレスと比較して検査します。この検査は、ARP 応答に対して実行されます。イネーブルにすると、異なる MAC アドレスを持つパケットは無効パケットとして分類され、廃棄されます。
– ip :ARP 本体を検査し、無効かつ予期されない IP アドレスの有無を確認します。アドレスには 0.0.0.0、255.255.255.255、およびすべての IP マルチキャスト アドレスが含まれます。送信元 IP アドレスはすべての ARP 要求および ARP 応答内で検査され、宛先 IP アドレスは ARP 応答内だけで検査されます。
– src-mac :イーサネット ヘッダー内の送信元 MAC アドレスを、ARP 本体の送信元 MAC アドレスと比較して検査します。この検査は、ARP 要求および ARP 応答の両方に対して実行されます。イネーブルにすると、異なる MAC アドレスを持つパケットは無効パケットとして分類され、廃棄されます。
次に、src-mac 追加検証をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection validate src-mac
Router(config)# do show ip arp inspection | include abled$
Source Mac Validation : Enabled
Destination Mac Validation : Disabled
IP Address Validation : Disabled
次に、dst-mac 追加検証をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection validate dst-mac
Router(config)# do show ip arp inspection | include abled$
Source Mac Validation : Disabled
Destination Mac Validation : Enabled
IP Address Validation : Disabled
次に、ip 追加検証をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection validate ip
Router(config)# do show ip arp inspection | include abled$
Source Mac Validation : Disabled
Destination Mac Validation : Disabled
IP Address Validation : Enabled
次に、src-mac および dst-mac 追加検証をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection validate src-mac dst-mac
Router(config)# do show ip arp inspection | include abled$
Source Mac Validation : Enabled
Destination Mac Validation : Enabled
IP Address Validation : Disabled
次に、src-mac、dst-mac、および ip 追加検証をイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection validate src-mac dst-mac ip
Router(config)# do show ip arp inspection | include abled$
Source Mac Validation : Enabled
Destination Mac Validation : Enabled
IP Address Validation : Enabled
DAI ログ機能の概要
DAI はパケットを廃棄すると、ログ バッファ内にエントリを作成して、レート制限に基づくシステム メッセージを生成します。メッセージが生成されたあとは、DAI はこのエントリをログ バッファから消去します。各ログ エントリには、受信側の VLAN、ポート番号、送信元および宛先 IP アドレス、送信元および宛先 MAC アドレスといったフロー情報が含まれます。
ログ バッファ エントリは、複数のパケットを表すことができます。たとえば、同じ ARP パラメータを持つ同一 VLAN 上で、1 つのインターフェイスが多数のパケットを受信した場合は、DAI のログ バッファではこれらのパケットが 1 つのエントリとして結合され、このエントリに対して 1 つのシステム メッセージが生成されます。
ログ バッファがオーバーフローする場合は、ログ イベントがログ バッファに収まらないことを意味しており、 show ip arp inspection log 特権 EXEC コマンドの出力が影響を受けます。この場合は、パケット数と時間だけが表示され、あとはデータの代わりに 2 つのダッシュ(--)が表示されます。このエントリに対しては、その他の統計情報は表示されません。このようなエントリが表示された場合は、ログ バッファ内のエントリ数を増やすか、またはログ レートを高くしてください。
DAI のログ バッファ サイズの設定
DAI のログ バッファ サイズを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip arp inspection log-buffer entries number |
DAI のログ バッファ サイズを設定します(有効範囲は 0 ~ 1024)。 |
Router(config)# no ip arp inspection log-buffer entries |
デフォルトのバッファ サイズ(32)に戻します。 |
ステップ 3 |
Router(config)# do show ip arp inspection log | include Size |
設定を確認します。 |
次に、DAI ログ バッファを 64 メッセージに設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection log-buffer entries 64
Router(config)# do show ip arp inspection log | include Size
Total Log Buffer Size : 64
DAI のログ システム メッセージの設定
DAI のログ システム メッセージを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip arp inspection log-buffer logs number_of_messages interval length_in_seconds |
DAI のログ バッファを設定します。 |
Router(config)# no ip arp inspection log-buffer logs |
デフォルトのシステム メッセージ設定に戻します。 |
ステップ 3 |
Router(config)# do show ip arp inspection log |
設定を確認します。 |
DAI のログ システム メッセージを設定する場合、次の点に注意してください。
• logs number_of_messages の有効範囲は 0 ~ 1024 です(デフォルトは 5)。値 0 は、エントリはログ バッファ内に入力されますが、システム メッセージが生成されないことを意味します。
• interval length_in_seconds の有効範囲は 0 ~ 86400 秒(1 日)です(デフォルトは 1)。0 は、システム メッセージがただちに生成されることを意味します。この場合、ログ バッファは常に空となります。インターバル値を 0 に設定すると、ログ値 0 は上書きされます。
• システム メッセージは、 length_in_seconds あたり number_of_messages のレートで送信されます。
次に、2 秒おきに 12 メッセージが送信されるように DAI のログ機能を設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection log-buffer logs 12 interval 2
Router(config)# do show ip arp inspection log | include Syslog
Syslog rate : 12 entries per 2 seconds.
次に、60 秒おきに 20 メッセージが送信されるように DAI のログ機能を設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection log-buffer logs 20 interval 60
Router(config)# do show ip arp inspection log | include Syslog
Syslog rate : 20 entries per 60 seconds.
DAI のログ フィルタリングの設定
DAI のログ フィルタリングを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip arp inspection vlan vlan_range logging { acl-match { matchlog | none } | dhcp-bindings { all | none | permit }} |
各 VLAN に対するログ フィルタリングを設定します。 |
ステップ 3 |
Router(config)# do show running-config | include ip arp inspection vlan vlan_range |
設定を確認します。 |
DAI のログ フィルタリングを設定する場合、次の点に注意してください。
• デフォルトでは、拒否されたすべてのパケットが記録されます。
• vlan_range には、1 つの VLAN、または特定の VLAN 範囲を指定できます。
– 1 つの VLAN を指定するには、1 つの VLAN 番号を入力します。
– 特定の VLAN 範囲で指定にするには、一組の VLAN 番号をダッシュ(-)でつなげて入力します。
– 複数の VLAN 番号をカンマで区切って入力することも、一組の VLAN 番号をダッシュでつなげて入力することもできます。
• acl-match matchlog:DAI ACL の設定に基づきパケットを記録します。このコマンドに matchlog キーワードを指定して、さらに permit または deny ARP アクセス リスト コンフィギュレーション コマンドに log キーワードを指定すると、ACL によって許可または拒否された ARP パケットが記録されます。
• acl-match none :ACL と一致したパケットを記録しません。
• dhcp-bindings all:DHCP バインディングと一致したすべてのパケットが記録されます。
• dhcp-bindings none:DHCP バインディングと一致したパケットは記録されません。
• dhcp-bindings permit:DHCP バインディングによって許可されたパケットが記録されます。
次に、VLAN 100 の DAI ログ フィルタリングを、ACL と一致したパケットを記録しないように設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# ip arp inspection vlan 100 logging acl-match none
Router(config)# do show running-config | include ip arp inspection vlan 100
ip arp inspection vlan 100 logging acl-match none
DAI 情報の表示
DAI 情報を表示するには、 表 42-2 に示す各特権 EXEC コマンドを使用します。
表 42-2 DAI 情報を表示するためのコマンド
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show arp access-list [ acl_name ] |
ARP ACL についての詳細情報を表示します。 |
show ip arp inspection interfaces [ interface_id ] |
指定のインターフェイス、またはすべてのインターフェイスに対して、ARP パケットの信頼状態およびレート制限を表示します。 |
show ip arp inspection vlan vlan_range |
指定の VLAN に対し、DAI の設定内容および動作状態を表示します。VLAN を指定しない場合、または VLAN を範囲で指定した場合は、DAI がイネーブル(アクティブ)にされている VLAN だけの情報が表示されます。 |
DAI 統計情報を消去または表示するには、 表 42-3 に示す各特権 EXEC コマンドを使用します。
表 42-3 DAI 統計情報を消去または表示するためのコマンド
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clear ip arp inspection statistics |
DAI 統計情報を消去します。 |
show ip arp inspection statistics [ vlan vlan_range ] |
指定の VLAN において、転送されたパケット、廃棄されたパケット、MAC 検証に失敗したパケット、IP 検証に失敗したパケット、ACL によって許可および拒否されたパケット、DHCP によって許可および拒否されたパケットの統計情報を表示します。VLAN を指定しない場合、または VLAN を範囲で指定した場合は、DAI がイネーブル(アクティブ)にされている VLAN だけの情報が表示されます。 |
show ip arp inspection statistics コマンドでは、ルータは信頼できる DAI ポートにおいて、個々の ARP 要求および応答パケットに対して転送されたパケット数を増分します。ルータは送信元 MAC、宛先 MAC、または IP 検証の結果拒否された各パケットに対し、ACL によって許可されたパケット、または DHCP によって許可されたパケットの数を増分します。また、ルータは、該当する失敗回数の値も増分します。
DAI ログ情報を消去または表示するには、 表 42-4 に示す各特権 EXEC コマンドを使用します。
表 42-4 DAI ログ情報を消去または表示するためのコマンド
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clear ip arp inspection log |
DAI のログ バッファを消去します。 |
show ip arp inspection log |
DAI ログ バッファの設定および内容を表示します。 |
DAI の設定例
ここでは、次の例について説明します。
• 「例 1:2 つのスイッチが DAI をサポートする場合」
• 「例 2:1 つのスイッチが DAI をサポートする場合」
例 1:2 つのスイッチが DAI をサポートする場合
この手順は、2 つのルータが DAI 機能をサポートする場合の DAI の設定方法を示します。図 42-2 に示すように、ホスト 1 はルータ A に、ホスト 2 はルータ B にそれぞれ接続されています。両方のルータは、各ホストが属する VLAN 1 上で DAI を実行しています。DHCP サーバは ルータ A に接続されています。両方のホストは、同一の DHCP サーバから IP アドレスを取得します。ルータ A はホスト 1 およびホスト 2 のバインディングを持ち、ルータ B はホスト 2 のバインディングを持ちます。ルータ A のファスト イーサネット ポート 6/3 は、ルータ B のファスト イーサネット ポート 3/3 に接続されています。
(注) • DAI では、着信 ARP 要求および ARP 応答内の IP アドレスと MAC アドレスとのバインディングを、DHCP スヌーピング バインディング データベース内のエントリに基づいて検証します。IP アドレスが動的に割り当てられた ARP パケットを許可する際は、DHCP スヌーピングをイネーブルにしてください。設定の詳細については、を参照してください。
• この構成は、DHCP サーバがルータ A から別の場所に移動されてしまうと機能しません。
• この構成によってセキュリティが損なわれないようにするには、ルータ A のファスト イーサネット ポート 6/3、およびルータ B のファスト イーサネット ポート 3/3 を、信頼できるポートとして設定します。
ルータ A の設定
ルータ A において DAI をイネーブルにし、ファスト イーサネット ポート 6/3 を信頼できるポートとして設定するには、次の作業を行います。
ステップ 1 ルータ A およびルータ B 間の接続を確認します。
RouterA# show cdp neighbors
Capability Codes: R - Router, T - Trans Bridge, B - Source Route Bridge
S - Switch, H - Host, I - IGMP, r - Repeater, P - Phone
Device ID Local Intrfce Holdtme Capability Platform Port ID
RouterB Fas 6/3 177 R S I WS-C6506 Fas 3/3
ステップ 2 VLAN 1 で DAI をイネーブルにし、設定を確認します。
RouterA# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
RouterA(config)# ip arp inspection vlan 1
RouterA# show ip arp inspection vlan 1
Source Mac Validation : Disabled
Destination Mac Validation : Disabled
IP Address Validation : Disabled
Vlan Configuration Operation ACL Match Static ACL
---- ------------- --------- --------- ----------
Vlan ACL Logging DHCP Logging
---- ----------- ------------
ステップ 3 ファスト イーサネット ポート 6/3 を、信頼できるポートとして設定します。
RouterA# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
RouterA(config)# interface fastethernet 6/3
RouterA(config-if)# ip arp inspection trust
RouterA# show ip arp inspection interfaces fastethernet 6/3
Interface Trust State Rate (pps)
--------------- ----------- ----------
ステップ 4 バインディングを確認します。
RouterA# show ip dhcp snooping binding
MacAddress IpAddress Lease(sec) Type VLAN Interface
------------------ --------------- ---------- ------------- ---- --------------------
00:02:00:02:00:02 1.1.1.2 4993 dhcp-snooping 1 FastEthernet6/4
ステップ 5 DAI がパケットを処理する前後の統計情報を調べます。
RouterA# show ip arp inspection statistics vlan 1
Vlan Forwarded Dropped DHCP Drops ACL Drops
---- --------- ------- ---------- ----------
Vlan DHCP Permits ACL Permits Source MAC Failures
---- ------------ ----------- -------------------
Vlan Dest MAC Failures IP Validation Failures
---- ----------------- ----------------------
このあと、ホスト 1 が IP アドレス 1.1.1.2 および MAC アドレス 0002.0002.0002 を持つ 2 つの ARP 要求を送信すると、両方の要求が許可されます。これは、次の統計情報で確認できます。
RouterA# show ip arp inspection statistics vlan 1
Vlan Forwarded Dropped DHCP Drops ACL Drops
---- --------- ------- ---------- ----------
Vlan DHCP Permits ACL Permits Source MAC Failures
---- ------------ ----------- -------------------
Vlan Dest MAC Failures IP Validation Failures
---- ----------------- ----------------------
ホスト 1 がこのあと、IP アドレス 1.1.1.3 を持つ ARP 要求を送信しようとすると、このパケットは廃棄され、エラー メッセージが記録されます。
00:12:08: %SW_DAI-4-DHCP_SNOOPING_DENY: 2 Invalid ARPs (Req) on Fa6/4, vlan 1.([0002.0002.0002/1.1.1.3/0000.0000.0000/0.0.0.0/02:42:35 UTC Tue Jul 10 2001])
RouterA# show ip arp inspection statistics vlan 1
この場合に表示される統計情報は次のようになります。
Vlan Forwarded Dropped DHCP Drops ACL Drops
---- --------- ------- ---------- ----------
Vlan DHCP Permits ACL Permits Source MAC Failures
---- ------------ ----------- -------------------
Vlan Dest MAC Failures IP Validation Failures
---- ----------------- ----------------------
ルータ B の設定
ルータ B において DAI をイネーブルにし、ファスト イーサネット ポート 3/3 を信頼できるポートとして設定するには、次の作業を行います。
ステップ 1 接続を確認します。
RouterA# show cdp neighbors
Capability Codes: R - Router, T - Trans Bridge, B - Source Route Bridge
S - Switch, H - Host, I - IGMP, r - Repeater, P - Phone
Device ID Local Intrfce Holdtme Capability Platform Port ID
RouterB Fas 3/3 120 R S I WS-C6506 Fas 6/3
ステップ 2 VLAN 1 で DAI をイネーブルにし、設定を確認します。
RouterB# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
RouterB(config)# ip arp inspection vlan 1
RouterB# show ip arp inspection vlan 1
Source Mac Validation : Disabled
Destination Mac Validation : Disabled
IP Address Validation : Disabled
Vlan Configuration Operation ACL Match Static ACL
---- ------------- --------- --------- ----------
Vlan ACL Logging DHCP Logging
---- ----------- ------------
ステップ 3 ファスト イーサネット ポート 3/3 を、信頼できるポートとして設定します。
RouterB# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
RouterB(config)# interface fastethernet 3/3
RouterB(config-if)# ip arp inspection trust
RouterB# show ip arp inspection interfaces
Interface Trust State Rate (pps)
--------------- ----------- ----------
ステップ 4 DHCP スヌーピング バインディングのリストを確認します。
RouterB# show ip dhcp snooping binding
MacAddress IpAddress Lease(sec) Type VLAN Interface
------------------ --------------- ---------- ------------- ---- --------------------
00:01:00:01:00:01 1.1.1.1 4995 dhcp-snooping 1 FastEthernet3/4
ステップ 5 DAI がパケットを処理する前後の統計情報を調べます。
RouterB# show ip arp inspection statistics vlan 1
Vlan Forwarded Dropped DHCP Drops ACL Drops
---- --------- ------- ---------- ----------
Vlan DHCP Permits ACL Permits Source MAC Failures
---- ------------ ----------- -------------------
Vlan Dest MAC Failures IP Validation Failures
---- ----------------- ----------------------
ホスト 2 がこのあと、IP アドレス 1.1.1.1 および MAC アドレス 0001.0001.0001 を持つ ARP 要求を送信すると、このパケットは転送され、統計情報も適切に更新されます。
RouterB# show ip arp inspection statistics vlan 1
Vlan Forwarded Dropped DHCP Drops ACL Drops
---- --------- ------- ---------- ----------
Vlan DHCP Permits ACL Permits Source MAC Failures
---- ------------ ----------- -------------------
Vlan Dest MAC Failures IP Validation Failures
---- ----------------- ----------------------
ホスト 2 が IP アドレス 1.1.1.2 を持つ ARP 要求を送信しようとすると、この要求は廃棄され、システム メッセージが記録されます。
00:18:08: %SW_DAI-4-DHCP_SNOOPING_DENY: 1 Invalid ARPs (Req) on Fa3/4, vlan 1.([0001.0001.0001/1.1.1.2/0000.0000.0000/0.0.0.0/01:53:21 UTC Fri May 23 2003])
この場合に表示される統計情報は次のようになります。
RouterB# show ip arp inspection statistics vlan 1
Vlan Forwarded Dropped DHCP Drops ACL Drops
---- --------- ------- ---------- ----------
Vlan DHCP Permits ACL Permits Source MAC Failures
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Vlan Dest MAC Failures IP Validation Failures
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例 2:1 つのスイッチが DAI をサポートする場合
この手順では、図 42-2 に示すルータ B が、DAI または DHCP スヌーピングをサポートしていない場合に DAI を設定する方法を示します。
ルータ B が DAI または DHCP スヌーピングをサポートしていない場合は、ルータ A のファスト イーサネット ポート 6/3 を信頼できるポートとして設定すると、セキュリティ ホールが生じます。これは、ルータ A およびホスト 1 が、ルータ B またはホスト 2 によって攻撃される可能性があるためです。
この可能性を排除するには、ルータ A のファスト イーサネット ポート 6/3 を信頼できないポートとして設定する必要があります。ホスト 2 からの ARP パケットを許可するには、ARP ACL をセットアップして、これを VLAN 1 に適用する必要があります。ホスト 2 の IP アドレスがスタティックではない場合は、ルータ A に ACL 設定を適用できなくなるため、レイヤ 3 でルータ B からルータ A を切り離す必要があります。これらのルータ間では、ルータを使用してパケットをルーティングします。
ルータ A に対して ARP ACL をセットアップするには、次の作業を行います。
ステップ 1 IP アドレス 1.1.1.1 および MAC アドレス 0001.0001.0001 を許可するアクセス リストを設定して、設定内容を確認します。
RouterA# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
RouterA(config)# arp access-list H2
RouterA(config-arp-nacl)# permit ip host 1.1.1.1 mac host 1.1.1
RouterA(config-arp-nacl)# end
RouterA# show arp access-list
permit ip host 1.1.1.1 mac host 0001.0001.0001
ステップ 2 VLAN 1 に ACL を適用して、設定を確認します。
RouterA# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
RouterA(config)# ip arp inspection filter H2 vlan 1
RouterA# show ip arp inspection vlan 1
Source Mac Validation : Disabled
Destination Mac Validation : Disabled
IP Address Validation : Disabled
Vlan Configuration Operation ACL Match Static ACL
---- ------------- --------- --------- ----------
Vlan ACL Logging DHCP Logging
---- ----------- ------------
ステップ 3 ファスト イーサネット ポート 6/3 を信頼できないポートとして設定し、設定内容を確認します。
RouterA# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
RouterA(config)# interface fastethernet 6/3
RouterA(config-if)# no ip arp inspection trust
Switch# show ip arp inspection interfaces fastethernet 6/3
Interface Trust State Rate (pps)
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ホスト 2 がルータ A のファスト イーサネット ポート 6/3 から 5 つの ARP 要求を送信し、1 つの「get」要求がルータ A によって許可された場合は、統計情報は次のように適切に更新されます。
Switch# show ip arp inspection statistics vlan 1
Vlan Forwarded Dropped DHCP Drops ACL Drops
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Vlan DHCP Permits ACL Permits Source MAC Failures
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Vlan Dest MAC Failures IP Validation Failures
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