Cisco 7600 シリーズ ルータ Cisco IOS ソフトウェア コンフィギュレーション ガイド Release 15.0S

MLDv2 スヌーピングの概要

MLDv2 スヌーピングにより、Cisco 7600 シリーズ ルータで MLDv2 パケットを調べ、パケットの内容に基づいて転送先を決定することができます。

MLDv2 または MLDv2 スヌーピング クエリアからの MLDv2 クエリーを受信するサブネットで、MLDv2 スヌーピングを使用するように、ルータを設定できます。MLDv2 スヌーピングは、IPv6 マルチキャスト トラフィックを受信するポートだけにそのトラフィックをダイナミックに転送するように、レイヤ 2 LAN ポートを設定することにより、レイヤ 2 で IPv6 マルチキャスト トラフィックを抑制します。

MLDv2 は、マルチキャスト ルータのレイヤ 3 で稼働し、マルチキャスト トラフィックのルーティングが必要なサブネットでレイヤ 3 MLDv2 クエリーを生成します。

MLDv2 スヌーピング クエリアをルータで設定し、マルチキャスト ルータ インターフェイスがないサブネットで MLDv2 スヌーピングをサポートできます。MLDv2 スヌーピング クエリアの詳細については、「MLDv2 スヌーピング クエリアのイネーブル化」を参照してください。

（マルチキャスト ルータ上の）MLDv2 または（スーパーバイザ エンジン上の）MLDv2 スヌーピング クエリアは、ルータが VLAN のすべてのポートを経由して転送し、ホストが応答する一般的な MLDv2 クエリーを定期的に送信します。MLDv2 スヌーピングは、レイヤ 3 MLDv2 トラフィックをモニタします。

（注） マルチキャスト グループで、VLAN 中に送信元だけがありレシーバーがない場合は、MLDv2 スヌーピングはマルチキャスト トラフィックをマルチキャスト ルータ ポート宛てだけに抑制します。

MLDv2 メッセージ

MLDv2 では次のメッセージが使用されます。

• マルチキャスト リスナー クエリー

– 一般クエリー：どのマルチキャスト アドレスにリスナーがあるかを学習するために、マルチキャスト ルータが送信します。

– マルチキャスト アドレス固有クエリー：特定マルチキャスト アドレスにリスナーがあるかどうかを学習するために、マルチキャスト ルータが送信します。

– マルチキャスト アドレスおよび送信元固有クエリー：特定マルチキャスト アドレスの指定リストからの送信元にリスナーがあるかどうかを学習するために、マルチキャスト ルータが送信します。

• マルチキャスト リスナー レポート

– 現行状態レコード（送信請求）：クエリーに応答してホストが送信し、ホストが関係するマルチキャスト グループごとに INCLUDE モードまたは EXCLUDE モードを指定します。

– フィルタ モード変更レコード（非送信請求）：1 つ以上のマルチキャスト グループの INCLUDE モードまたは EXCLUDE モードを変更するため、ホストが送信します。

– 送信元リスト変更レコード（非送信請求）：マルチキャスト送信元に関する情報を変更するため、ホストが送信します。

送信元ベース フィルタリング

MLDv2 では送信元ベース フィルタリングが使用されます。送信元ベース フィルタリングでは、特定マルチキャスト グループでどのマルチキャスト送信元を許可するかブロックするかをホストおよびルータによって特定できるようにします。送信元ベース フィルタリングでは、MLDv2 メッセージの次の情報に基づいてトラフィックの許可またはブロックが行われます。

• 送信元リスト

• INCLUDE モードまたは EXCLUDE モード

レイヤ 2 テーブルが（MAC グループ、VLAN）ベースのため、MLDv2 のホストを使用する場合、マルチキャストの送信元は、各 MAC グループごとに 1 つだけ設定することを推奨します。

（注） 送信元ベース フィルタリングはハードウェアでサポートされません。このステートはソフトウェアでのみ維持され、明示的ホスト トラッキングおよび統計情報収集に使用されます。

明示的ホスト トラッキング

MLDv2 では、ポート上のメンバーシップ情報の明示的なトラッキングをサポートします。明示的なトラッキング データベースは、高速脱退処理、プロキシ レポート機能、統計情報収集に使用されます。VLAN で明示的なトラッキングがイネーブルの場合、MLDv2 スヌーピング ソフトウェアはホストから受信する MLDv2 レポートを処理し、次の情報を含む明示的なトラッキング データベースを作成します。

• ホストに接続されたポート

• ホストによって報告されたチャネル

• ホストによって報告された各グループのフィルタ モード

• ホストによって報告された各グループの送信元リスト

• 各グループのルータ フィルタ モード

• 送信元を要求するグループごとのホスト リスト

（注） • 明示的ホスト トラッキングをディセーブルにすると、高速脱退処理およびプロキシ レポート機能はディセーブルになります。

• 明示的トラッキングがイネーブル化されていて、ルータがレポート抑制モードになっている場合、マルチキャスト ルータは VLAN インターフェイス経由でアクセスするすべてのホストを追跡できないことがあります。

MLDv2 スヌーピング プロキシ レポート機能

MLDv2 にはレポート抑制がないので、すべてのホストがクエリーに応答して詳細なマルチキャスト グループ メンバーシップ情報をマルチキャスト ルータに送信します。ルータはこれらの応答を調べて、データベースを更新し、レポートをマルチキャスト ルータに転送します。マルチキャスト ルータがレポートで過負荷になることを防止するため、MLDv2 スヌーピングはプロキシ レポートを実行します。

プロキシ レポート機能では、マルチキャスト グループの最初のレポートだけがルータに転送され、同一マルチキャスト グループのその他すべてのレポートが抑制されます。

プロキシ レポート機能では、送信請求レポートおよび非送信請求レポートが処理されます。プロキシ レポート機能はイネーブルになっており、ディセーブルにすることはできません。

（注） 明示的ホスト トラッキングをディセーブルにすると、高速脱退処理およびプロキシ レポート機能はディセーブルになります。

IPv6 マルチキャスト グループへの加入

ホストは、IPv6 マルチキャスト ルータからの一般的なクエリーに応答して、非送信請求 MLDv2 レポートを送信するか、または MLDv2 レポートを送信して、IPv6 マルチキャスト グループに加入します（ルータが、一般的なクエリーを、IPv6 マルチキャスト ルータから VLAN 中のすべてのポートに転送します）。ルータはこれらのレポートをスヌーピングします。

ルータは、調べた MLDv2 レポートに応答して、レポートを受信する VLAN のレイヤ 2 転送テーブルにエントリを作成します。このマルチキャスト トラフィックに関係する別のホストが MLDv2 レポートを送信する場合、ルータはレポートをスヌーピングして、既存のレイヤ 2 転送テーブル エントリにそれを追加します。ルータは、MLDv2 レポートをスヌーピングするマルチキャスト グループごとに、レイヤ 2 転送テーブルで VLAN ごとに 1 つのエントリだけを生成します。

MLDv2 スヌーピングは、マルチキャスト グループごとに 1 つを残して他のすべてのホスト レポートを抑制し、この 1 つのレポートを IPv6 マルチキャスト ルータに転送します。

ルータは、レポートで指定されたマルチキャスト グループ用のマルチキャスト トラフィックを、レポートを受信したインターフェイスに転送します（図 32-1 を参照）。

MLDv2 スヌーピングを通じて学習されるレイヤ 2 マルチキャスト グループは、ダイナミックです。ただし、 mac-address-table static コマンドを使用して、レイヤ 2 マルチキャスト グループをスタティックに設定することもできます。マルチキャスト グループ アドレスのグループ メンバーシップをスタティックに指定した場合、そのスタティックな設定は、MLDv2 スヌーピングの学習よりも優先されます。マルチキャスト グループ メンバーシップのリストは、スタティックな設定値と、MLDv2 スヌーピングによって学習された設定値の両方で構成できます。

図 32-1 初期 MLDv2 リスナー レポート

マルチキャスト ルータ A がルータに MLDv2 の一般的なクエリーを送信し、ルータがそのクエリーをポート 2 ～ 5（同じ VLAN 内のすべてのメンバー）に転送します。ホスト 1 は IPv6 マルチキャスト グループに加入する必要があり、MAC 宛先アドレスが 0x0100.5E01.0203 であるグループに MLDv2 レポートをマルチキャストします。ホスト 1 による MLDv2 レポート マルチキャストをルータがスヌーピングすると、ルータは MLDv2 レポート内の情報を使用して、 表 32-1 のような転送テーブル エントリを作成します。このエントリには、ホスト 1 のポート番号、マルチキャスト ルータ、ルータが含まれています。

ルータのハードウェアは、MLDv2 情報パケットをマルチキャスト グループの他のパケットと区別できます。テーブル中の最初のエントリは、ルータに対して、MLDv2 パケットだけを CPU に送信するように指示します。これによって、ルータ がマルチキャスト フレームで過負荷になるのを防止できます。2 番めのエントリは、ルータに、0x0100.5E01.0203 マルチキャスト MAC アドレス宛てのフレームを送信するように指示します。このフレームは、マルチキャスト ルータ宛て、およびグループに加入しているホスト宛ての MLDv2 パケット（!MLDv2）ではありません。

別のホスト（たとえば、ホスト 4）が、同じグループ用に非送信請求 MLDv2 レポートを送信する場合（図 32-2 を参照）、ルータがそのメッセージをスヌーピングして、ホスト 4 のポート番号を転送テーブルに追加します（ 表 32-2 を参照）。転送テーブルはルータ宛てだけに MLDv2 メッセージを送るので、メッセージは他のポートへフラッディングされません。認識されているマルチキャスト トラフィックは、ルータ宛てではなくグループ宛てに転送されます。

図 32-2 2 番めのホストのマルチキャスト グループへの加入

マルチキャスト グループからの脱退

ここでは、マルチキャスト グループからの脱退について説明します。

• 「通常の脱退処理」

• 「高速脱退処理」

通常の脱退処理

関係するホストは、MLDv2 一般クエリーに定期的に応答を続ける必要があります。VLAN 中の少なくとも 1 つのホストが MLDv2 一般クエリーに定期的に応答している限り、マルチキャスト ルータはマルチキャスト トラフィックを VLAN に転送し続けます。ホストをマルチキャスト グループから脱退させたい場合は、そのホストで定期的な MLDv2 一般クエリーを無視するか（「暗黙的脱退」と言います）、または MLDv2 フィルタ モード変更レコードを送信します。

グループの EXCLUDE モードを設定するホストからフィルタ モード変更レコードを MLDv2 スヌーピングが受信すると、MLDv2 スヌーピングは MAC アドレス付き一般クエリーを送信し、そのインターフェイスに接続されているその他のホストが、指定マルチキャスト グループのトラフィックに関係するかどうかを判断します。

MLDv2 スヌーピングは、この一般クエリーの応答で MLDv2 レポートを受信しなかった場合、インターフェイスに接続されている他のホストは、指定マルチキャスト グループのトラフィックの受信に関係していないと見なし、指定マルチキャスト グループのレイヤ 2 転送テーブル エントリからそのインターフェイスを削除します。

ホストがグループに関係する残りのインターフェイスのみからフィルタ モード変更レコードを受信し、MLDv2 スヌーピングが一般クエリーに応答して MLDv2 レポートを受信しなかった場合、MLDv2 スヌーピングはグループ エントリを削除し、MLDv2 フィルタ モード変更レコードをマルチキャスト ルータにリレーします。マルチキャスト ルータが VLAN からレポートを受信しない場合、マルチキャスト ルータは MLDv2 キャッシュからその VLAN 用のグループを削除します。

テーブル エントリを更新するまでルータが待機する時間は、「最終メンバ クエリー時間」と言います。時間を設定するには、ipv6 mld snooping last-member-query-interval interval コマンドを入力します。

高速脱退処理

高速脱退処理は、デフォルトでイネーブルになっています。高速脱退処理をディセーブルにするには、明示的ホスト トラッキングをオフにします。

高速脱退処理は、ソフトウェアで送信元グループ ベースのメンバーシップ情報を維持し、LTL インデックスを MAC GDA 単位で割り当てることによって実装されます。

高速脱退処理をイネーブルにすると、ホストは送信元からこれ以上トラフィックを受信したくない場合に特定のグループに対し BLOCK_OLD_SOURCES{src-list} メッセージを送信します。このようなメッセージをホストから受信すると、ルータは所定のグループに対応するホストの送信元リストを解析します。この送信元リストが脱退メッセージで受信された送信元リストとまったく同じである場合、ルータはこのホストを LTL インデックスから削除し、ホストへのマルチキャスト グループ トラフィックの転送を停止します。

送信元リストが一致しない場合、このホストがどの送信元からのトラフィック受信にも関与しなくなるまで、ルータは LTL インデックスからホストを削除しません。

（注） 明示的ホスト トラッキングをディセーブルにすると、高速脱退処理およびプロキシ レポート機能はディセーブルになります。

MLDv2 スヌーピング クエリアの概要

マルチキャスト トラフィックをルーティングする必要がないため、PIM および MLDv2 を設定していない VLAN 内で MLDv2 スヌーピングをサポートするには、MLDv2 スヌーピング クエリアを使用します。

IP マルチキャスト ルーティングが設定されているネットワークでは、IP マルチキャスト ルータは MLDv2 クエリアとして機能します。VLAN 内の IP マルチキャスト トラフィックにレイヤ 2 スイッチングだけを行う必要があり、IP マルチキャスト ルータが不要で、VLAN 上に IP マルチキャスト ルータが存在しない場合は、別のルータを MLDv2 クエリアに設定し、このルータからクエリーを送信できるようにする必要があります。

MLDv2 スヌーピング クエリアがイネーブルの場合、MLDv2 スヌーピング クエリアは定期的に MLDv2 クエリーを送信し、IP マルチキャスト トラフィックを受信するルータからの MLDv2 レポート メッセージをトリガーします。MLDv2 スヌーピングはこれらの MLDv2 レポートを待ち受けて、適切な転送を確立します。

VLAN 内のすべてのCisco 7600 シリーズ ルータで MLDv2 スヌーピング クエリアをイネーブルにできます。ただし、MLDv2 を使用して IP マルチキャスト トラフィックとの関係をレポートするスイッチがある場合は、これらのスイッチに接続された VLAN ごとに、少なくとも 1 つのルータを MLDv2 スヌーピング クエリアとして設定する必要があります。

IP マルチキャスト ルーティングがイネーブルであるかどうかに関係なくルータを設定して VLAN 上に MLDv2 クエリーを生成することができます。

MLDv2 スヌーピングのイネーブル化

MLDv2 スヌーピングをグローバルにイネーブルにするには、次の作業を行います。

次に、MLDv2 スヌーピングをグローバルにイネーブルにし、設定を確認する例を示します。

特定の VLAN で MLDv2 スヌーピングをイネーブルにするには、次の作業を行います。

次に、VLAN 25 で MLDv2 スヌーピングをイネーブルにし、設定を確認する例を示します。

マルチキャスト レシーバへのスタティック接続の設定

マルチキャスト レシーバへのスタティックな接続を設定するには、次の作業を行います。

スタティックな接続を設定する場合、 disable-snooping キーワードを入力して、スタティックに設定されたマルチキャスト MAC アドレスにアドレス指定されたマルチキャスト トラフィックが、同じ VLAN 内の別のポートへ送信されるのを防止します。

次に、マルチキャスト レシーバへのスタティックな接続を設定する例を示します。

マルチキャスト ルータ ポートのスタティックな設定

マルチキャスト ルータへのスタティックな接続を設定するには、次の作業を行います。

ルータへのインターフェイスは、コマンドを入力する VLAN 内である必要があります。インターフェイスは管理上アップ状態で、回線プロトコルはアップ状態である必要があります。

次に、マルチキャスト ルータへのスタティックな接続を設定する例を示します。

MLD スヌーピング クエリー時間の設定

特定のマルチキャスト グループにホストがまだ関係しているかどうかを判別するグループ固有のクエリーを送信したあとで、ルータが待機する時間を設定できます。

（注） MLD スヌーピング高速脱退処理と MLD スヌーピング クエリー時間の両方を設定した場合は、高速脱退処理が優先されます。

ルータによって送信される MLD スヌーピング クエリー時間を設定するには、次の作業を行います。

次に、MLD スヌーピング クエリー時間を設定する例を示します。

高速脱退処理のイネーブル化

特定の VLAN 上で高速脱退処理をイネーブルにするには、次の作業を行います。

次に、VLAN 200 インターフェイスで高速脱退処理をイネーブルにし、設定を確認する例を示します。

SSM セーフ レポート機能のイネーブル化

Source-Specific Multicast（SSM）セーフ レポート機能をイネーブルにするには、次の作業を行います。

次に、SSM セーフ レポート機能をイネーブルにする例を示します。

明示的ホスト トラッキングの設定

（注） 明示的ホスト トラッキングをディセーブルにすると、高速脱退処理およびプロキシ レポート機能はディセーブルになります。

特定の VLAN で明示的ホスト トラッキングをイネーブルにするには、次の作業を行います。

次に、明示的ホスト トラッキングをイネーブルにする例を示します。

レポート抑制の設定

VLAN でレポート抑制をイネーブルにするには、次の作業を行います。

次に、明示的ホスト トラッキングをイネーブルにする例を示します。

MLDv6 スヌーピング情報の表示

ここでは、MLDv6 スヌーピング情報の表示について説明します。

• 「マルチキャスト ルータ インターフェイスの表示」

• 「MAC アドレス マルチキャスト エントリの表示」

• 「VLAN インターフェイスの MLDv2 スヌーピング情報の表示」

マルチキャスト ルータ インターフェイスの表示

IGMP スヌーピングをイネーブルにすると、ルータはマルチキャスト ルータの接続先インターフェイスを自動的に学習します。

マルチキャスト ルータ インターフェイスを表示するには、次の作業を行います。

次に、VLAN 1 のマルチキャスト ルータ インターフェイスを表示する例を示します。

MAC アドレス マルチキャスト エントリの表示

VLAN の MAC アドレス マルチキャスト エントリを表示するには、次の作業を行います。

次に、VLAN 1 の MAC アドレス マルチキャスト エントリを表示する例を示します。

次に、特定の VLAN について MAC アドレス エントリの総数を表示する例を示します。

VLAN インターフェイスの MLDv2 スヌーピング情報の表示

VLAN インターフェイスの MLDv2 スヌーピング情報を表示するには、次の作業を行います。

次に、VLAN 25 の明示的トラッキング情報を表示する例を示します。

次に、VLAN 1 のマルチキャスト ルータ インターフェイスを表示する例を示します。

次に、VLAN 25 の IGMP スヌーピング統計情報の例を示します。