RSP720 の機能
RSP720 は、Cisco 7600 シリーズ ルータの最新タイプのスーパーバイザ エンジンです。2 枚の統合ドーター カード(PFC3C または PFC3CXL と、MSFC4)が搭載された RSP720 では、前のスーパーバイザ エンジンに対して多くの拡張機能と新機能が用意されています。これらの拡張機能や新機能は、次のセクションで説明します。
(注) では、(PFC3B または PFC3BXL 搭載の)Supervisor Engine 720 の機能がすべてサポートされます。RSP720特に注意書きがない限り、このマニュアルの後の章で説明する機能の設定と動作は、両方のタイプのプロセッサ(RSP720 と Sup720)で同じです。
ハードウェア
• 2 枚の統合ドーター カード(PFC3C または PFC3CXL と、MSFC4 )
• ルート プロセッサ(RP)とスイッチ プロセッサ(SP)での、より高速な CPU と、より容量の大きいデフォルト メモリ
– RSP720-3C-GE:RP と SP の 1-GB DRAM
– RSP720-3CXL-GE:2-GB DRAM(RP)と 1-GB DRAM(SP)
• より大きな MAC アドレス テーブルが提供される追加メモリ
• レイヤ 2 およびレイヤ 3 の機能は、1 つの ASIC に統合済み
• ASIC(ハードウェア)による IP トラフィックと MPLS トラフィックの転送
RSP720 でサポートされているハードウェアの詳細については、『 Cisco 7600 Series Router Supervisor Engine and Route Switch Processor Guide 』の第 2 章のルート スイッチ プロセッサ 720の項を参照してください。
パフォーマンス
• より高速なソフトウェア ブートアップ
• より高速なプロトコル統合(BGP、OSPF)と ARP ラーニング
• IGMP スヌーピング回数の改善
• DHCP サーバ、Label Distribution Protocol(LDP; ラベル配布プロトコル)セッション、IP セッション、トラフィック エンジニアリング(TE)の確立における速度の高速化
• Bidirectional Forwarding Detection(BFD; 双方向フォワーディング検出)、Resource Reservation Setup Protocol(RSVP; リソース予約プロトコル)、その他のコントロール プレーン機能でのより高速な処理
• ローカル ファイルへのアクセスとコピーの速度の改善
スケーラビリティ
• レイヤ 2 およびレイヤ 3 のトラフィックの転送レートは、1 秒あたり 3000 万パケット(Mpps)。RSP720 ハードウェア ベースの Cisco Express Forwarding(CEF; シスコ エクスプレス フォワーディング)が使用されます。転送レートは次のとおりです。
– IP 転送レート:30 Mpps
– MPLS 転送レート:20 Mpps
• より大規模なカスタマー環境の設定とより多くのインターフェイスに対するサポートは、次のとおりです。
– 32000 IP 登録者のセッション
– 100 万のルート
– 最大 96000 の MAC アドレス(実際には 80000)、64000 から
– 32000 の VLAN
– 128000 のアドレス解決プロトコル(ARP)エントリ
• VLAN の拡張性を実現する 802.1ad のサポート
ハイ アベイラビリティ機能
• Online Insertion and Removal(OIR; ホットスワップ)
• Route Processor Redundancy(RPR と RPR+)
• Nonstop Forwarding with Stateful Switchover(NSF/SSO)
• ファブリック スイッチオーバー
• In Service Software Upgrade(ISSU)と enhanced Fast Software Upgrade(eFSU)
(Cisco IOS Release 12.2SRB1 およびそれ以降)
IPv6 ACL の機能拡張(セキュリティ)
2K アクセス コントロール リスト(ACL)のラベルと 16K アクセス コントロール エントリ(ACE)が、1K マスクと 8K ACE から改善
未知のユニキャスト パケットのレート制限
ルータが処理する未知のユニキャスト パケットの数を制限でき、パケットがネットワークにフラッディングすることを防ぐ。ルータが受信する未知のパケットの数が、指定されたレートを超えた場合、超過分のパケットは転送されません。設定のガイドラインについては、次のセクション(「未知のユニキャスト パケット レート制限の設定時の注意事項」)を参照してください。
この機能を設定し、確認するために、次の新しいコマンドが用意されています。
• 次のコマンドを使用して、レート制限を設定します。 pps は、1 秒間に認められる未知のユニキャスト パケットの最大数(10 から 1000000)で、 packets-in-burst は、オプションのパケット バースト率(1 から 255 で、デフォルト値は 10)です。コマンドの no 形式により、未知のパケットのレート制限がオフに設定されます。
Router(config)# mls rate-limit layer2 unknown pps [packets-in-burst]
Router(config)# no mls rate-limit layer2 unknown
(注) ルータの物理ポートでルーティングを設定する場合、これらの各ポートで mac-address-table learning interface interface コマンド(グローバル コンフィギュレーション モード)を使用します。このコマンドを使用しなかった場合、レート制限の数が正確ではなくなる可能性があります。
• 未知のユニキャスト パケットのレート制限がイネーブルであるか確認するには、 show mls rate-limit コマンドを使用します。未知のユニキャスト パケットのレート制限がイネーブルの場合、出力には次のレート制限タイプが含まれます。
Router(config)# show mls rate-limit
Sharing Codes: S - static, D - dynamic
Codes dynamic sharing: H - owner (head) of the group, g - guest of the group
Rate Limiter Type Status Packets/s Burst Sharing
--------------------- ---------- --------- ----- -------
UCAST IP TINY FRAG On 100000 100 Not sharing
未知のユニキャスト パケット レート制限の設定時の注意事項
未知のユニキャスト パケット レート制限を構成する際には、次の事項に注意してください。
• この機能は、PFC3C と PFC3CXL(RSP720)でのみ使用できます。これは、PFC3B または PFC3BXL では使用できません。
• 未知のユニキャスト レート制限が設定された状態で、Remote Switched Port Analyzer(RSPAN; リモート スイッチ ポート アナライザ)を実行する場合、RSPAN の送信元ポートと宛先ポートでは、トラフィック量が異なる場合があります。モニタされているトラフィックに未知のユニキャスト パケットが含まれている場合、この違いが発生します。この場合、RSPAN の宛先ポートに送信する前に、未知のユニキャスト トラフィックがレート制限され、この結果、RSPAN の送信元ポートと宛先ポートでのトラフィック量の間にミスマッチが生じます。
GRE トンネル上のパケット フラグメンテーション
Generic Routed Encapsulation(GRE)トンネル上のパケット フラグメンテーションのサポート。PFC3C および PFC3CXL では、[ no ] mls cef tunnelfragment コマンドを使用して don't fragment(DF)ビットをゼロに設定できます。これによって、PFC3C または PFC3CXL を使用して、フラグメント化された GRE トラフィックを再構成できます。コマンドの no 形式により、トンネルのフラグメンテーションがオフに設定され、フラグメント化された GRE トラフィックが破棄されます。
(注) この機能を使用するには、トンネルのもう一方の端にあるルータで、トンネルのフラグメンテーションがサポートされている必要があります。
GE バンドルでのロード バランシングの改良
802.1q トランクとして設定されているギガビット イーサネット(GE)バンドルでの、ロード バランシングの改良
• VLAN ID は、マルチキャスト トラフィックのバンドル ハッシュに含まれるようになっています。
• 複数の VLAN でマルチキャスト トラフィックを処理するマルチキャスト レシーバーでは、バンドルのメンバー リンク間でのトラフィックのロード バランシングを行うことができます。
• ルータでは、フラグメント化されたトラフィックについて、より効率的なロード バランシングを行えます。
QoS の機能拡張
• PFC3C と PFC3CXL では、( シリアル モード で)お互いに独立して動作するよう、入出力のポリシング機能を設定できます。通常、入出力のポリシング機能はパラレル モードで動作し、1 つのポリシング機能によるアクションが、他での対応するアクションを引き起こします。たとえば、出力ポリシング機能でパケットが破棄される場合、入力ポリシング機能でもパケットは数えられません。この変更は、ポリシング機能を使用したマーキングには影響しないことに、注意してください。
PFC3C または PFC3CXL で入出力ポリシング機能のシリアル モードをイネーブルにするには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。コマンドの no 形式により、シリアル モードがディセーブルに設定され、ポリシング モードがパラレルにリセットされます。
[ no ] mls qos police serial
• 再循環後のパケットのマーキング。PFC3C と PFC3CXL では、元のインターフェイスの信頼を使用するのではなく、再循環パケットが信頼できないパケットとして扱われます。この機能拡張では、再循環パケットが入力ポリシーによってマークされます。
• IP/MPLS エッジでの、入力 IP DSCP と MPLS EXP マーキング。PFC3C と PFC3CXL のこの機能拡張により、MPLS のラベル インポジション中に、IP DSCP ビット( set ip dscp )と MPLS EXP ビット( set mpls exp )の両方をマークできます。 set mpls exp コマンドを使用しなかった場合、ルータでは、IP DSCP ビットが EXP にコピーされることに注意してください。
• 入力 EXP マーキングでは、ローカル ルートを経由する IP/IP トラフィックには影響が及ぼされません。PFC3C と PFC3CXL では、 no mls qos rewrite ip dscp コマンドを使用して、PFC QoS ロジックの出力 QoS 再書き込みがオフに設定されます。このロジックでは、ローカル ルートを経由する IP/IP トラフィックが EXP マーキングから影響を受けます。
• レイヤ 2 VPN の並列 CoS と DSCP の透過性。PFC3C と PFC3CXL のこの拡張機能を使用すると、トリプル プレイ ネットワーク(ビデオ、Voice over IP(VoIP)、データ アクセス(Internet))で使用するために、レイヤ 2 VPN とレイヤ 3 VPN を組み合わせて導入できます。トラフィックの Quality of Service(QoS)の保証もサポートされます。この機能により、次のような機能拡張も導入されます。
– no mls qos rewrite ip dscp コマンドとの組み合わせで platform vfi dot1q-transparency コマンドを使用すると、VPLS と SVI ベースの EoMPLS の CoS 設定と DSCP 設定を保護できます。
– no mls qos rewrite ip dscp コマンドは、MPLS とともに使用できるようになりました。ルータは、PFC3C モードまたは PFC3CXL モードである必要があります。これは、ルータには、Cisco 7600 SIP-600 または WS-X6 xxx カード(DFC3B または DFC3BXL とともに)を搭載できないことを意味します。
– no mls qos rewrite ip dscp コマンドが MPLS との互換性を持つことになったため、レイヤ 3 VPN は、同じプロバイダー エッジ(PE)で終了できます。
• 新しい CLI コマンドの mls qos recirc untrust は、MVPN ケースの内部 VLAN 上での第 2 パス検索中に QoS データがリセットされないようにするために使用します。
(注) mls qos recirc untrust コマンドの完全な構文と使用方法については、次の URL にある『Cisco 7600 Series Routers Command References』を参照してください。http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/qos/command/reference/qos_book.html
その他の機能拡張
• Ethernet over MPLS(EoMPLS)制御ワードのサポート
• ACL カウンタが、ルート プロセッサ(RP)から受信するパケットの数が含まれるように、機能が拡張
• ハードウェアで処理される IPv6 パケット フラグメント
サポートされない機能
RSP720 では、次の Sup720 機能はサポートされていません。
• Server Load Balancing(SLB)
スイッチ ファブリック機能の設定とモニタリング
ここでは、スイッチング モードの設定手順、および ルート スイッチ プロセッサ 720 に組み込まれたスイッチ ファブリック機能のモニタ手順について説明します。
• 「スイッチ ファブリック機能の機能概要」
• 「スイッチ ファブリック機能の設定」
• 「スイッチ ファブリック機能のモニタ」
スイッチ ファブリック機能の概要
スイッチ ファブリック機能は ルート スイッチ プロセッサ 720 に内蔵された機能です。ファブリック対応モジュール間の専用接続を作成し、これらのモジュール間で連続的なフレーム伝送を行います。スイッチ ファブリック機能によって提供されるファブリック対応モジュール間の直接接続に加えて、ファブリック対応モジュールは 32 Gbps 転送バスへの直接接続も備えています。
レイヤ 3 スイッチド トラフィックの転送の決定
PFC3 または分散型フォワーディング カード 3(DFC3)は、次のようにレイヤ 3 スイッチド トラフィックの転送について決定します。
• PFC3 は、DFC3 を搭載していないモジュールを介してルータに着信する各パケットの転送先をすべて決定します。
• DFC3 は、次の場合に、DFC3 対応モジュールを介してルータに着信する各パケットの転送先をすべて決定します。
– 出力ポートが入力ポートと同じモジュールにある場合、DFC3 はパケットをローカルに転送します(パケットがモジュールの外部に送信されません)。
– 出力ポートが別のファブリック対応モジュール上にある場合、DFC3 はパケットを出力モジュールに送信し、出力ポートから送信します。
– 出力ポートが別のファブリック非対応モジュール上にある場合、DFC3 はパケットを ルート スイッチ プロセッサ 720 に送信します。ルート スイッチ プロセッサ 720 のファブリック インターフェイスが 32 Gbps スイッチング バスにパケットを転送し、パケットは出力モジュールで受信されたあと、出力ポートから送信されます。
スイッチング モード
ルート スイッチ プロセッサ 720 が搭載されている場合、モジュール間のトラフィック転送は、次のいずれかのモードで行われます。
• compact モード:ルータにファブリック対応モジュールだけが搭載されている場合は、すべてのトラフィックに対してこのモードが使用されます。このモードでは、スイッチ ファブリック チャネルを通じて DBus ヘッダー(32 バイト)のコンパクト版が転送され、最良のパフォーマンスが得られます。
• truncated モード:ルータにファブリック対応モジュールとファブリック非対応モジュールが両方とも搭載されている場合は、ファブリック対応モジュール間のトラフィックに対して、このモードが使用されます。このモードでは、ルータはスイッチ ファブリック チャネルを通じて、切り捨てた形のトラフィック(フレームの最初の 64 バイト)を送信します。
• bus モード:ルータは、ファブリック非対応モジュール間のトラフィックや、ファブリック非対応モジュールとファブリック対応モジュール間のトラフィックに対して、このモードを使用します。このモードでは、すべてのトラフィックがローカル バスとスーパーバイザ エンジン バスまたは RSP バスとの間で送受信されます。
表 4-2 に、搭載されているファブリック対応モジュールおよび非対応モジュール別に、使用されるスイッチング モードを示します。
表 4-2 スイッチ ファブリック機能のスイッチング モード
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ファブリック対応モジュール間(ファブリック非対応モジュールが搭載されていない場合) |
compact |
ファブリック対応モジュール間(ファブリック非対応モジュールも搭載されている場合) |
truncated |
ファブリック対応モジュールとファブリック非対応モジュール間 |
bus |
ファブリック非対応モジュール間 |
bus |
スイッチ ファブリック機能の設定
スイッチング モードを設定するには、次の作業を行います。
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Router(config)# [ no ] fabric switching-mode allow { bus-mode | { truncated [{ threshold [ number ]}]}} |
スイッチング モードを設定します。 |
スイッチング モードを設定するときには、次の情報に注意してください。
• ファブリック非対応モジュールの使用、またはファブリック対応モジュールで bus モードの使用を可能にするには、 fabric switching-mode allow bus-mode コマンドを入力します。
• ファブリック非対応モジュールの使用、またはファブリック対応モジュールで bus モードの使用を防止するには、 no fabric switching-mode allow bus-mode コマンドを入力します。
注意
no fabric switching-mode allow bus-mode コマンドを入力すると、ルータに搭載されたファブリック非対応モジュールへの電力供給が停止します。
• ファブリック対応モジュールで truncated モードの使用を可能にするには、 fabric switching-mode allow truncated コマンドを入力します。
• ファブリック対応モジュールで truncated モードの使用を禁止するには、 no fabric switching-mode allow truncated コマンドを入力します。
• bus モードの代わりに truncated モードを使用する場合に、事前にインストールしなければならないファブリック対応モジュールの数を設定するには、 fabric switching-mode allow truncated threshold number コマンドを入力します。
• デフォルトの truncated モードのしきい値に戻すには、 no fabric switching-mode allow truncated threshold コマンドを入力します。
スイッチ ファブリック冗長ステータスの表示
スイッチ ファブリックの冗長ステータスを表示するには、次の作業を行います。
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Router# show fabric active |
スイッチ ファブリックの冗長ステータスを表示します。 |
次に、スイッチ ファブリックの冗長ステータスを表示する例を示します。
Router# show fabric active
Active fabric card in slot 5
No backup fabric card in the system
ファブリック チャネルのスイッチング モードの表示
特定のモジュールまたは全モジュールについて、ファブリック チャネルのスイッチング モードを表示するには、次の作業を行います。
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Router# show fabric switching-mode [ module slot_number | all ] |
特定のモジュールまたは全モジュールについて、ファブリック チャネルのスイッチング モードを表示します。 |
次に、全モジュールについて、ファブリック チャネルのスイッチング モードを表示する例を示します。
Router# show fabric switching-mode all
%Truncated mode is allowed
%System is allowed to operate in legacy mode
Module Slot Switching Mode Bus Mode
ファブリック ステータスの表示
特定のスイッチング モジュールまたは全スイッチング モジュールのファブリック ステータスを表示するには、次の作業を行います。
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Router# show fabric status [ slot_number | all ] |
ファブリック ステータスを表示します。 |
次に、全モジュールのファブリック ステータスを表示する例を示します。
Router# show fabric status all
slot channel speed module fabric
ファブリック使用率の表示
特定のモジュールまたは全モジュールのファブリック使用率を表示するには、次の作業を行います。
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Router# show fabric utilization [ slot_number | all ] |
ファブリック使用率を表示します。 |
次に、全モジュールのファブリック使用率を表示する例を示します。
Router# show fabric utilization all
Lo% Percentage of Low-priority traffic.
Hi% Percentage of High-priority traffic.
slot channel speed Ingress Lo% Egress Lo% Ingress Hi% Egress Hi%
ファブリック エラーの表示
特定のモジュールまたは全モジュールのファブリック エラーを表示するには、次の作業を行います。
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Router# show fabric errors [ slot_number | all ] |
ファブリック エラーを表示します。 |
次に、全モジュールのファブリック エラーを表示する例を示します。
Router# show fabric errors all
slot channel crc hbeat sync DDR sync
slot channel sync buffer timeout