UDE および UDLR の概要
ここでは、UDE および UDLR について説明します。
• 「UDE および UDLR の概要」
• 「サポート対象ハードウェア」
• 「UDE の概要」
• 「UDLR の概要」
UDE および UDLR の概要
単一方向リンクが双方向リンクをエミュレートする場合に限り、ルーティング プロトコルは同一インターフェイスにおけるトラフィックを送受信するはずなので、ルーティング プロトコルでは単一方向リンクがサポートされます。
単一方向リンクには有利な点があります。ほとんど確認応答されていない単一方向の大量のトラフィック(ビデオ ブロードキャスト ストリームなど)を大容量全二重双方向リンクで送信する場合は、送信元からレシーバへのリンク、および同様に大容量な逆方向リンク(レシーバから送信元への少ない確認応答を搬送する「バック チャネル」と呼ばれる)の両方を使用するからです。
UDE および UDLR では、大量トラフィック用の大容量単一方向リンクの使用が、バック チャネル用の同様に大容量のリンクを消費せずにサポートされます。UDE では、大容量単一方向リンクが提供されます。UDLR では、通常の容量のリンクで設定されるトンネルでバック チャネルが提供されます。また、トランスペアレントにバック チャネルと大容量単一方向リンクと同じインターフェイス上にあるかのようにして双方向リンクをエミュレートします。
サポート対象ハードウェア
Cisco 7600 シリーズ ルータでは、次のスイッチング モジュールのインターフェイスで UDE および UDLR がサポートされます。
• WS-X6704-10GE 4 ポート 10 ギガビット イーサネット
• WS-X6816-GBIC 16 ポート ギガビット イーサネット
• WS-X6516A-GBIC 16 ポート ギガビット イーサネット
• WS-X6516-GBIC 16 ポート ギガビット イーサネット
UDE の概要
Cisco 7600 シリーズ ルータでは、ハードウェアまたはソフトウェアで UDE を実装できます。ハードウェアベース UDE およびソフトウェアベース UDE の両方で、双方向トラフィックが必要とする 2 本のファイバではなく、1 本のファイバだけが使用されます。
単一方向トランシーバは、ハードウェアベース UDE が受信専用であるか送信専用であるかを判断します。ソフトウェアベース UDE は、送信専用または受信専用のどちらかに設定できます。
ハードウェアベース UDE を実装するポートで、ソフトウェアベース UDE を設定する必要はありません。
(注) ハードウェアベース UDE およびソフトウェアベース UDE をサポートするインターフェイスを含むモジュールのリストについては、「サポート対象ハードウェア」を参照してください。
ハードウェアベース UDE の概要
双方向トランシーバより安価の単一方向トランシーバを使用して、単一方向リンクを作成できます。では、次の単一方向トランシーバがサポートされます。Cisco 7600 シリーズ ルータでは、単一方向トランシーバがサポートされます。
• 受信専用 WDM GBIC(WDM-GBIC-REC=)
• 受信専用 XENPAK(WDM-XENPAK-REC=)
ソフトウェアベース UDE の概要
トラフィックを単一方向で送信するか受信するように、双方向トランシーバに装備されているポートを設定し、単一方向リンクを作成できます。適切な単一方向トランシーバを使用できない場合は、ソフトウェアベース UDE を使用できます。たとえば送信専用トランシーバがサポートされていない場合は、ソフトウェアベース UDE で送信専用リンクを設定する必要があります。
UDLR の概要
UDLR では、単一方向大容量リンクのバック チャネルとしての単一方向トンネルが提供され、ユニキャスト トラフィックおよびマルチキャスト トラフィック用に 1 つの双方向リンクがトランスペアレントにエミュレートされます。
UDLR は、受信専用インターフェイスで送信する必要があるパケットを代行受信し、UDLR バックチャネル トンネルで送信します。ルータが UDLR バックチャネル トンネルでこのようなパケットを受信すると、パケットは、UDLR によって、送信専用インターフェイスで受信したかのような形になります。
UDLR バックチャネル トンネルでは、次の IPv4 機能がサポートされます。
• アドレス解決プロトコル(ARP)
• Next Hop Resolution Protocol(NHRP)
• すべての IPv4 トラフィックの双方向リンクのエミュレーション(ブロードキャストおよびマルチキャストの制御トラフィックだけではない)
• 受信専用トンネルにおける IPv4 GRE マルチポイント
(注) UDLR バックチャネル トンネルでは、IPv6 または MPLS がサポートされません。
UDE および UDLR の設定
ここでは、UDE および UDLR の設定手順について説明します。
• 「UDE の設定」
• 「UDLR の設定」
(注) 次の説明は、UDLR をサポートするリリースで公開されています。ネイバー ISIS ルータは、UDLR トポロジで認識されません (CSCee56596)。
UDE 設定時の注意事項
UDE を設定する場合は、次の注意事項に従ってください。
• UDE は Supervisor Engine 720 でサポートされています。
• STP では、単一方向リンクを含むトポロジにおいてレイヤ 2 ループを防止できません。
• 送信専用ポートは、BPDU を受信しないので、STP フォワーディング ステートに常に移行します。
• 受信専用ポートは BPDU を送信できません。
• 単一方向ポートでは、次のようにリンクの反対側の終端にあるポートとのネゴシエーションが必要になる機能またはプロトコルがサポートされません。
– 速度およびデュプレックス モードの自動ネゴシエーション
– リンク ネゴシエーション
– IEEE 802.3Z フロー制御
– ダイナミック トランキング プロトコル(DTP)
レイヤ 2 プロトコルによって一般的に制御されるパラメータは、手動で設定する必要があります。
• VLAN トランキング プロトコル(VTP)サーバが VTP ドメインのすべてのルータに VTP フレームを送信できる場合、単一方向リンクを含むトポロジでは、VTP だけがサポートされます。
• VTP プルーニングは情報の双方向の交換によって異なるので、送信専用ポートがあるルータでは VTP プルーニングをディセーブルにしてください。
• 単一方向 EtherChannel では PAgP または LACP をサポートできません。単一方向 EtherChannel を作成するには、EtherChannel「オン」モードを設定する必要があります。
• EtherChannel の物理ポートでソフトウェアベース UDE を設定できます。ポートチャネル インターフェイスなどの物理的でないインターフェイスでは、ソフトウェアベース UDE を設定できません。
• ハードウェアベース UDE をポートで実装するか、ソフトウェアベース UDE をポートで設定する場合、UDLD はそのポートで自動的にディセーブルになります。
• CDP は、送信専用ポートから CDP フレームを送信し、受信専用ポートから CDP フレームを受信します。つまり、単一方向リンクの送信専用側にあるルータは、CDP 情報を受信しません。
• SPAN は、単一方向ポートの設定を送信側や宛先に限定しません。
– 送信専用ポートは、SPAN 宛先にすることができます。
– 受信専用ポートは、SPAN 送信元にすることができます。
• 単一方向ポートでは、IEEE 802.1X ポートベース認証がサポートされません。
• 12.2(33) SRD4 リリースよりも前は、インターフェイスが SPAN 宛先ポートになっているポート上で SPAN と UDLD の組み合わせを設定すると、UDLD がローカル エンドでディセーブルになっているように、UDLD ピアの現在の動作状態がディセーブルになります。12.2(33) SRD4 リリース以降は、インターフェイスが SPAN 宛先として設定されている場合は、UDLD ピアの現在の動作状態が「Disabled」ではなく、「Advertisement」と表示されます。
• IGMP スヌーピングでは、ルータおよびマルチキャスト トラフィックを受信するホストの間に単一方向リンクがあるトポロジがサポートされません。
• スイッチの IGMP スヌーピングとマルチキャスト ルータの間で単一方向リンクによる通信をサポートするには、UDLR を UDE とともに設定します。
• 単一方向リンクでは ARP がサポートされません。
• OIR の間は、ラインカードがオンラインではない場合、UDE 設定を削除すべきではありません。削除した場合、ポート上の UDLD 機能が失われます。
カードがオフラインの間に UDE 設定を削除してしまった場合で、UDLD を再度イネーブルにするには、次の作業を行う必要があります。
– ルータをリロードするか、または、
– そのポートの UDE を再度設定し、ラインカードがオンラインのときにだけ、UDE の設定を解除します。
ハードウェアベース UDE の設定
ハードウェアベース UDE をサポートする場合に、必要なソフトウェア設定手順はありません。単一方向トランシーバを設置し、ハードウェアベース UDE を実装してください。
ポートのハードウェアベース UDE を確認するには、次の作業を行います。
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Router# show interfaces [{ gigabitethernet | tengigabitethernet } slot/interface }] status |
設定を確認します。 |
次に、ギガビット イーサネット ポート 1/1 の設定を確認する例を示します。
Router# show interfaces gigabitethernet 1/1 status
Port Name Status Vlan Duplex Speed Type
Gi1/1 notconnect 1 full 1000 WDM-RXONLY
ソフトウェアベース UDE の設定
ポートのソフトウェアベース UDE を設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router(config)# interface {{ gigabitethernet | tengigabitethernet } slot/interface } |
設定するインターフェイスを選択します。 |
ステップ 2 |
Router(config-if)# unidirectional { send-only | receive-only } |
ソフトウェアベース UDE を設定します。 |
Router(config-if)# no unidirectional |
ソフトウェアベース UDE 設定を削除します。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# end |
コンフィギュレーション モードを終了します。 |
ステップ 4 |
Router# show interface {{ gigabitethernet | tengigabitethernet } slot/interface } unidirectional |
設定を確認します。 |
次に、10 ギガビット イーサネット ポート 1/1 を UDE 送信専用ポートとして設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# interface tengigabitethernet 1/1
Router(config-if)# unidirectional send-only
Enable port unidirectional mode will automatically disable port udld. You must manually ensure that the unidirectional link does not create a spanning tree loop in the network.
Enable l3 port unidirectional mode will automatically disable ip routing on the port. You must manually configure static ip route and arp entry in order to route ip traffic.
次に、10 ギガビット イーサネット ポート 1/2 を UDE 受信専用ポートとして設定する例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# interface tengigabitethernet 1/2
Router(config-if)# unidirectional receive-only
Enable port unidirectional mode will automatically disable port udld. You must manually ensure that the unidirectional link does not create a spanning tree loop in the network.
Enable l3 port unidirectional mode will automatically disable ip routing on the port. You must manually configure static ip route and arp entry in order to route ip traffic.
次に、設定を確認する例を示します。
Router> show interface tengigabitethernet 1/1 unidirectional
Unidirectional configuration mode: send only
CDP neighbour unidirectional configuration mode: receive only
次に、10 ギガビット イーサネット インターフェイス 1/1 で UDE をディセーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# interface tengigabitethernet 1/1
Router(config-if)# no unidirectional
次の例は、単一方向イーサネットをサポートしないポートで show interface コマンドを入力した結果を示しています。
Router# show interface fastethernet 6/1 unidirectional
Unidirectional Ethernet is not supported on FastEthernet6/1
UDLR バックチャネル トンネル設定時の注意事項
UDLR バックチャネル トンネルの設定時には、次の注意事項に従ってください。
• PFC3 では、UDLR バックチャネル トンネルがハードウェアでサポートされません。MSFC3 および MSFC4(RSP720)では UDLR バックチャネル トンネルがソフトウェアでサポートされます。
• 単一方向リンクごとに、UDLR バックチャネル トンネルを設定してください。
• UDE 送信専用インターフェイスでは、UDLR バックチャネル トンネル インターフェイスを受信に設定してください。
• UDE 受信専用インターフェイスでは、UDLR バックチャネル トンネル インターフェイスを送信に設定してください。
• UDLR バックチャネル トンネル インターフェイスでは、IPv4 アドレスを設定する必要があります。
• UDLR バックチャネル トンネル インターフェイスでは、送信元および宛先の IPv4 アドレスを設定する必要があります。
• UDLR バックチャネル トンネルのデフォルト モードは GRE です。
• UDLR バックチャネル トンネルでは、IPv6 または MPLS がサポートされません。
UDE 送信専用ポートの受信専用トンネル インターフェイスの設定
UDE 送信専用ポートに受信専用トンネル インターフェイスを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router(config)# interface tunnel number |
トンネル インターフェイスを選択します。 |
ステップ 2 |
Router(config-if)# tunnel udlr receive-only ude_send_only_port |
トンネル受信専用インターフェイスを UDE 送信専用ポートと関連付けます。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# ip address ipv4_address |
トンネル IPv4 アドレスを設定します。 |
ステップ 4 |
Router(config-if)# tunnel source { ipv4_address | type number } |
トンネル送信元を設定します。 |
ステップ 5 |
Router(config-if)# tunnel destination { hostname | ipv4_address } |
トンネル宛先を設定します。 |
UDE 受信専用ポートの送信専用トンネル インターフェイスの設定
UDE 受信専用ポートに送信専用トンネル インターフェイスを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router(config)# interface tunnel number |
トンネル インターフェイスを選択します。 |
ステップ 2 |
Router(config-if)# tunnel udlr send-only ude_receive_only_port |
トンネル送信専用インターフェイスを UDE 受信専用ポートと関連付けます。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# ip address ipv4_address |
トンネル IPv4 アドレスを設定します。 |
ステップ 4 |
Router(config-if)# tunnel source { ipv4_address | type number } |
トンネル送信元を設定します。 |
ステップ 5 |
Router(config-if)# tunnel destination { hostname | ipv4_address } |
トンネル宛先を設定します。 |
ステップ 6 |
Router(config-if)# tunnel udlr address-resolution |
ARP および NHRP をイネーブルにします。 |
次の UDE および UDLR の設定例は、次のようになっています。
• ルータ A の場合:
– Open Shortest Path First(OSPF)および PIM が設定されています。
– 10 ギガビット イーサネット ポート 1/1 は送信専用 UDE ポートです。
– UDLR バックチャネル トンネルは受信専用として設定され、10 ギガビット イーサネット ポート 1/1 と関連しています。
• ルータ B の場合:
– OSPF および PIM が設定されています。
– 10 ギガビット イーサネット ポート 1/2 は受信専用 UDE ポートです。
– UDLR バックチャネル トンネルは送信専用として設定され、10 ギガビット イーサネット ポート 1/2 と関連しています。
– ARP および NHRP がイネーブルです。
ルータ A の設定
! tengigabitethernet 1/1 is send-only
interface tengigabitethernet 1/1
ip address 10.1.0.1 255.255.0.0
! Configure tunnel as receive-only UDLR tunnel.
tunnel destination 11.0.0.2
tunnel udlr receive-only tengigabitethernet 1/1
network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 0
ルータ B の設定
! tengigabitethernet 1/2 is receive-only
interface tengigabitethernet 1/2
unidirectional receive-only
ip address 10.1.0.2 255.255.0.0
! Configure tunnel as send-only UDLR tunnel.
tunnel destination 11.0.0.1
tunnel udlr send-only tengigabitethernet 1/2
tunnel udlr address-resolution
network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 0