MVPN の機能概要
ここでは MVPN について説明します。
• 「MVPN の概要」
• 「マルチキャスト ルーティング、転送、マルチキャスト ドメイン」
• 「マルチキャスト配信ツリー」
• 「Multicast Tunnel Interface」
• 「MVPN の PE ルータ ルーティング テーブルのサポート」
• 「Multicast Distributed Switching サポート」
• 「ハードウェア処理の IPv4 マルチキャスト」
MVPN の概要
MVPN は規格に基づいた機能であり、IPv4 マルチキャスト トラフィックが MPLS VPN クラウドで送信されます。Cisco 7600 シリーズ ルータの MVPN では IPv4 マルチキャスト トラフィックの既存 PFC ハードウェア サポートを使用して、ワイヤ速度で VPN 上でマルチキャスト トラフィックが転送されます。MVPN では、レイヤ 3 IPv4 VPN 上における IPv4 マルチキャスト トラフィックのサポートが、既存の IPv4 ユニキャスト サポートに追加されます。
MVPN では、VPN ルーティングおよび転送(VRF)インスタンスごとにマルチキャスト パケットのルーティングおよび転送が行われ、サービス プロバイダー バックボーンを横断して VPN トンネルでマルチキャスト パケットが送信されます。
MVPN は IP-in-IP 総称ルーティング カプセル化(GRE)トンネルの代替策です。GRE トンネルは容易にスケールできるソリューションではなく、カスタマーに提供される粒度に制限されます。
マルチキャスト ルーティング、転送、マルチキャスト ドメイン
MVPN では、VPN ルーティング/転送テーブルにマルチキャスト ルーティング情報が追加されます。プロバイダー エッジ(PE)ルータがマルチキャスト データまたは制御パケットをカスタマー エッジ(CE)ルータから受信すると、マルチキャスト VRF(MVRF)の情報に従って転送が実行されます。
(注) MVRF は、VRF-Lite 上のマルチキャストとも一般的に呼ばれます。
それぞれの MVRF では、特定 VRF インスタンスに必要となるルーティング情報および転送情報が維持されます。MVRF の作成と設定は既存 VRF と同じ方法で行われますが、それぞれの MVRF ではマルチキャスト ルーティングもイネーブルになります。
マルチキャスト ドメインは、MPLS ネットワークで相互にマルチキャスト トラフィックを送信できるホストのセットで構成されます。たとえば、特定タイプのマルチキャスト トラフィックをすべてのグローバルな従業員に送信するカスタマーのマルチキャスト ドメインは、そのエンタープライズと関連するすべての CE ルータから構成されます。
マルチキャスト配信ツリー
MVPN 機能では、最低でも 1 つのマルチキャスト配信ツリー(MDT)がマルチキャスト ドメインごとに確立されます。MDT では、さまざまな PE ルータに存在する同一 MVRF の相互接続に必要となる情報が提供されます。
MVPN では、次の 2 つの MDT タイプがサポートされます。
• デフォルト MDT:特定マルチキャスト ドメインのすべての PE ルータ間における PIM 制御メッセージおよび低帯域幅ストリームの永続チャネルです。デフォルト MDT におけるすべてのマルチキャスト トラフィックは、ドメインのその他すべての PE ルータに複製されます。各 PE ルータは、ドメインのその他すべての PE ルータから、論理的に PIM ネイバー(1 ホップ先)と見なされます。
• データ MDT:これはオプションです。イネーブルにするとダイナミックに作成され、フルモーション ビデオなど、すべての PE ルータに送信する必要がない高帯域幅送信用に最適なパスが提供されます。これにより、PE ルータ間において高帯域幅トラフィックのオンデマンド転送が可能になるので、作成されるすべての高帯域幅ストリームですべての PE ルータがフラッディングされなくなります。
データ MDT を作成するため、バックボーンにマルチキャスト ストリームを定期的に転送する各 PE ルータは、各デフォルト MDT で送信されるトラフィックを次のように定期的に検査します。
1. 各 PE ルータはマルチキャスト トラフィックを定期的にサンプル抽出して(ソフトウェア スイッチングの場合は約 10 秒ごと、ハードウェア スイッチングの場合は 90 秒ごと)、マルチキャスト ストリームが設定しきい値を超えているかどうかを判断します。(ストリームのサンプル抽出タイミングにより、最悪の場合は、高帯域幅ストリームが検出されるまでに最大 180 秒かかることがあります)。
(注) データ MDT は、VRF マルチキャスト ルーティング テーブル内で、(S,G)マルチキャスト ルート エントリ専用に作成されます。(*,G)エントリ用には作成されません。
2. 特定マルチキャスト ストリームが定義済みしきい値を超えた場合、送信側 PE ルータは、その特定マルチキャスト トラフィック用にデータ MDT をダイナミックに作成します。
3. 送信側 PE ルータは、その他の PE ルータに DATA-MDT JOIN 要求(ポート 3232 へのユーザ データグラム プロトコル(UDP)メッセージ)を送信し、新しいデータ MDT について通知します。
4. 受信側 PE ルータは VRF ルーティング テーブルを調べて、このデータ ストリームの受信に関係するカスタマーがいるかどうかを判断します。そのようなカスタマーがいる場合、受信側 PE ルータは PIM プロトコルを使用し、この特定データ MDT グループの PIM JOIN メッセージ(グローバル テーブル PIM インスタンス)を送信してストリームを受け入れます。このストリームのカスタマーがいないルータは、カスタマーがあとでそのストリームを要求したときのため、情報をキャッシュします。
5. 送信側 PE ルータは、DATA-MDT JOIN メッセージ送信の 3 秒後、高帯域幅マルチキャスト ストリームをデフォルト MDT から削除し、新しいデータ MDT で送信し始めます。
6. 送信側 PE ルータは、マルチキャスト ストリームが定義済みしきい値を超え続ける限り、60 秒ごとに DATA-MDT JOIN メッセージの送信を続けます。ストリームが 60 秒より長くしきい値を下回った場合、送信側 PE ルータは DATA-MDT JOIN メッセージの送信を停止し、ストリームをデフォルト MDT に戻します。
7. 受信側ルータは、3 分より長く DATA-MDT JOIN メッセージを受信しなかった場合、デフォルト MDT のキャッシュ情報と期限切れにします。
データ MDT では高帯域幅の送信元が VPN 内部で許可されますが、MPLS VPN コアでの最適トラフィック転送が確保されます。
(注) DATA-MDT JOIN メッセージとその他のデータ MDT 作成および使用法に関する技術情報については、Eric C. Rosen らによる インターネット ドラフト『Multicast in MPLS/BGP IP VPNs』を参照してください。
次の例のサービス プロバイダーには、San Jose、New York、Dallas にオフィスがあるマルチキャスト カスタマーがいます。San Jose サイトは、単方向マルチキャスト プレゼンテーションを送信しています。サービス プロバイダー ネットワークでは、このカスタマーと関連する 3 つすべてのサイト、および別のエンタープライズの顧客の Houston サイトがサポートされます。
エンタープライズの顧客のデフォルト MDT は、プロバイダーのルータ P1、P2、P3、およびその関連 PE ルータから構成されています。PE4 は、MPLS コアのその他のルータに相互接続されていますが、別のカスタマーと関連しているので、デフォルト MDT の一部ではありません。
図 27-1 は、San Jose の外側でマルチキャスト ブロードキャストに加入するユーザがいない場合、つまりデフォルト MDT でデータが流れない場合のネットワークの状況を示しています。各 PE ルータはデフォルト MDT 上にあるその他の PE ルータとの PIM 関係を維持し、直接接続している PE ルータとの PIM 関係も維持します。
図 27-1 デフォルト マルチキャスト配信ツリーの概要
New York の従業員がマルチキャスト セッションに加入した場合、ニューヨーク サイトに関連する PE ルータは加入要求を送信します。この加入要求は、マルチキャスト ドメインのデフォルト MDT に流れます。マルチキャスト セッション送信元(PE1)と関連する PE ルータは、この要求を受信します。図 27-2 は、PE ルータが、マルチキャスト送信元(CE1a)と関連する CE ルータに要求を転送する方法を示しています。
図 27-2 データ MDT の初期化
CE ルータ(CE1a)は関連 PE ルータ(PE1)にマルチキャスト データを送信し始め、PE ルータは、マルチキャスト データが帯域幅しきい値を超えているためにデータ MDT を作成する必要があることを認識します。PE1 はデータ MDT を作成し、データ MDT に関する情報を含むデフォルト MDT を使用してすべてのルータにメッセージを送信します。
約 3 秒後、PE1 は、データ MDT を使用してその特定ストリームのマルチキャスト データを送信し始めます。この送信元に関係するレシーバは PE2 だけにいるので、PE2 だけがデータ MDT に加入してデータ MDT でトラフィックを受信します。
Multicast Tunnel Interface
PE ルータは、マルチキャスト ドメインのマルチキャスト VRF Multicast VRF(MVRF)ごとに Multicast Tunnel Interface(MTI)を作成します。MVRF はトンネル インターフェイスを使用してマルチキャスト ドメインにアクセスし、MVRF とグローバル MVRF を接続するコンジットを提供します。
ルータの場合、MTI はクラス D マルチキャスト アドレスを含むトンネル インターフェイスです( interface tunnel コマンドで作成)。この MVRF 用にデフォルト MDT で設定したすべての PE ルータは論理ネットワークを作成し、この論理ネットワークでは、各 PE ルータが、マルチキャスト ドメインにあるその他すべての PE ルータの PIM ネイバー(1 ホップ先)として表示されます。この場合、各ルータ間の物理的な距離は関係ありません。
MVRF を設定すると、MTI は自動的に作成されます。BGP ピアリング アドレスは MTI インターフェイス送信元アドレスとして割り当てられ、PIM プロトコルは各 MTI で自動的にイネーブルになります。
ルータは、ネットワークのカスタマー側からマルチキャスト パケットを受信すると、着信インターフェイスの VRF を使用して、受信する MVRF を判断します。次にルータは、GRE カプセル化を使用してパケットをカプセル化します。ルータは、パケットをカプセル化するとき、送信元アドレスを BGP ピアリング インターフェイスの送信元アドレスに、デフォルト MDT のマルチキャスト アドレス、またはデータ MDT の送信元アドレス(設定されている場合)に宛先アドレスを設定します。次にルータは、適切な数の MTI インターフェイスで転送するために、必要に応じてパケットを複製します。
ルータは、MTI インターフェイスでパケットを受信すると、宛先アドレスを使用して適切なデフォルト MDT またはデータ MDT を識別し、適切な MVRF を識別します。次にパケットのカプセル化を解除し、必要なだけ複製して適切なインターフェイスに転送します。
(注) • MVPN MTI は、Cisco ルータで一般的に使用されるその他のトンネル インターフェイスと異なり、ポイントツーポイント インターフェイスではなく、LAN インターフェイスとして分類されます。MTI インターフェイスは設定可能でありませんが、show interface tunnel コマンドを使用してそのステータスを表示できます。
• MTI インターフェイスは、VPN トンネル上のマルチキャスト トラフィックに排他的に使用されます。
• このトンネルは、ユニキャストでルーティングされたトラフィックを搬送しません。
MVPN の PE ルータ ルーティング テーブルのサポート
MVPN フィーチャをサポートする各 PE ルータは、次のルーティング テーブルを使用して、VPN トラフィックおよび MVPN トラフィックを正しくルーティングします。
• デフォルト ルーティング テーブル:すべての Cisco ルータで使用される標準ルーティング テーブル。このテーブルには、バックボーン トラフィック、および MPLS 以外の VPN ユニキャスト トラフィックとマルチキャスト トラフィック(総称ルーティング カプセル化(GRE)マルチキャスト トラフィックを含む)に必要なルートが含まれています。
• VPN ルーティング/転送(VRF)テーブル:VRF インスタンスごとに作成されるルーティング テーブル。MPLS ネットワークの VPN 間でユニキャスト トラフィックをルーティングします。
• マルチキャスト VRF(MVRF)テーブル:VRF インスタンスごとに作成されるマルチキャスト ルーティング テーブルおよびマルチキャスト ルーティング プロトコル インスタンス。ネットワークのマルチキャスト ドメインでマルチキャスト トラフィックをルーティングします。このテーブルには、マルチキャスト ドメインへのアクセスに使用される Multicast Tunnel Interface も含まれます。
Multicast Distributed Switching サポート
MVPN では、インターフェイス単位および VRF 単位でマルチキャストをサポートするため、Multicast Distributed Switching(MDS)がサポートされます。MDS を設定するときには、ループバック インターフェイスも含めたすべてのインターフェイスに no ip mroute-cache コマンドが設定されていないことを確認する必要があります。
ハードウェア処理の IPv4 マルチキャスト
PFC では、VPN トラフィック上の IPv4 マルチキャスト用にハードウェア アクセラレーションがサポートされ、MSFC3 CPU の使用率を上げずにワイヤ速度で適切な VPN にマルチキャスト トラフィックが転送されます。
カスタマー VRF の場合は、PFC ハードウェア アクセラレーションにより、PIM dense(密)モード、PIM sparse(疎)モード、PIM 双方向モード、PIM Source Specific Multicast(SSM; 送信元固有マルチキャスト)モードのマルチキャスト トラフィックがサポートされます。
サービス プロバイダー コアの場合は、PFC ハードウェア アクセラレーションにより、PIM sparse モード、PIM 双方向モード、PIM SSM モードでマルチキャスト トラフィックがサポートされます。サービス プロバイダー コアの場合は、PFC ハードウェア アクセラレーションは PIM デンス モードでマルチキャスト トラフィックをサポートしません。
MVPN 設定時の注意事項および制約事項
MVPN を設定する場合は、次の注意事項および制約事項に従ってください。
• Cisco 7600 シリーズ ルータで MVPN を実行するには、PFC3B、PFC3BXL、PFC3C、PFC3CXL のいずれかをインストールする必要があります。
• マルチキャスト ドメインのすべての PE ルータでは、MVPN 機能をサポートする Cisco IOS ソフトウェア イメージを実行する必要があります。P ルータおよび CE ルータには、MVPN をサポートするための要件がありません。
• すべてのバックボーン ルータでは、IPv4 マルチキャスト トラフィックのサポートもイネーブルにする必要があります。
• マルチキャスト トラフィックをサポートするすべてのルータでは、ボーダー ゲートウェイ プロトコル(BGP)ルーティング プロトコルを設定して動作させる必要があります。BGP 拡張コミュニティをイネーブルにしないと( neighbor send-community both コマンドまたは neighbor send-community extended コマンドを使用)、ネットワークにおける MDT の使用がサポートされません。
• MVPN を設定した場合は、入力複製だけがサポートされます。出力複製用にルータを設定している場合は、最初の MVRF を設定したとき、強制的に入力複製になります。
• ルータが PE として動作しており、存続可能時間(TTL)値が 2 であるカスタマー ルータからマルチキャスト パケットを受信した場合、そのパケットは、カプセル化されて MVPN リンクを横断して転送される代わりにドロップされます。MVPN リンクの反対側の PE がこのようなパケットを正常にドロップするので、トラフィック フローは影響されません。
• コア マルチキャスト ルーティングが SSM を使用する場合は、データ マルチキャスト配信ツリー(MDT)グループおよびデフォルト マルチキャスト配信ツリー(MDT)グループを IPv4 アドレスの SSM 範囲内で設定する必要があります。
• BGP ピアリングの更新送信元インターフェイスは、ルータで設定されているすべての BGP ピアリングで同一でないと、デフォルト MDT は適切に設定されません。BGP ピアリングにループバック アドレスを使用する場合は、ループバック アドレスで PIM スパース モードをイネーブルにする必要があります。
• BGP ピアリング インターフェイスとして使用されるループバック インターフェイスで ip mroute-cache コマンドをイネーブルにしないと、分散マルチキャスト スイッチングは、それをサポートするプラットフォームで機能しません。 no ip mroute-cache コマンドは、これらのインターフェイスでは使用 できません 。
• デンス モード マルチキャスト フローにはフラッディングとプルーニングという性質があり、データ MDT の周期的な始動および分解という結果になるので、データ MDT は VRF PIM デンス モード マルチキャスト ストリームで作成されません。
• 送信元情報が使用できないので、VRF PIM 双方向モードではデータ MDT が作成されません。
• MVPN では複数の BGP ピアリング更新送信元がサポートされず、これを設定すると、MVPN RPF チェックが中断することがあります。MVPN トンネルの送信元 IPv4 アドレスは、BGP ピアリング更新送信元に使用される最高の IPv4 アドレスによって決まります。この IPv4 アドレスが、リモート PE ルータを含む BGP ピアリング アドレスとして使用される IPv4 アドレスでない場合、MVPN は適切に機能しません。
• MDT トンネルではユニキャスト トラフィックが搬送されません。
• MVPN は MPLS VPN ネットワークのインフラストラクチャを使用しますが、MPLS タグやラベルは、VPN 上のマルチキャスト トラフィックに適用できません。
• デフォルト MDT で設定されている各 MVRF は、ユーザに表示される外部 VLAN に加えて、3 つの非表示 VLAN(カプセル化、カプセル化解除、インターフェイスに 1 つずつ)を使用します。つまり各ルータでは、絶対最大値の 1,000 MVRF がサポートされます (MDT が設定されていない MVRF では 1 つの内部 VLAN が使用されるので、未使用 MVRF を削除して VLAN 割り当てを維持する必要があります)。
• MVPN では MPLS が使用されるので、MVPN では RPR および RPR+ の冗長モードだけがサポートされます。MPLS は Stateful Switchover(SSO)冗長モードの Nonstop Forwarding(NSF)と共存できますが、ステートフル MPLS スイッチオーバーはサポートされません。
• MPLS VPN ネットワークに VRF のネットワークがすでに含まれている場合は、そのネットワークを削除したり再作成したりしなくても、MVRF トラフィックをサポートできます。その代わりに次の手順に示すように mdt default コマンドおよび mdt data コマンドを設定し、VRF 上でマルチキャスト トラフィックをイネーブルにしてください。
• マルチキャスト トラフィックの送受信を行うすべてのルータでは、BGP を設定して動作させる必要があります。BGP 拡張コミュニティをイネーブルにしないと( neighbor send-community both コマンドまたは neighbor send-community extended コマンドを使用)、ネットワークにおける MDT の使用がサポートされません。
• 特定 VPN 接続をサポートする各 PE ルータでは、同一 MVRF を設定する必要があります。
• 特定 MVRF をサポートする各 PE ルータは、同じ mdt default コマンドで設定する必要があります。
• Cisco IOS Release 15.0(1)S では、Cisco 7600 シリーズ ルータで MVPN が設定されている場合、出力および入力レプリケーション モードがサポートされています。ルータは、入力または出力レプリケーション モードに設定できます。
• ネイティブ マルチキャストに対してサポートされている最大スケールは 20k です。
MVPN の設定
ここでは、MVPN の設定手順について説明します。
• 「出力および入力マルチキャスト レプリケーション モードの設定」
• 「マルチキャスト VPN ルーティング/転送インスタンスの設定」
• 「マルチキャスト VRF ルーティングの設定」
• 「MVPN をサポートするマルチキャスト ルーティング用インターフェイスの設定」
(注) この設定タスクでは、マルチキャスト トラフィックを送受信するすべてのルータで BGP がすでに設定されていて動作していることを想定しています。BGP 拡張コミュニティをイネーブルにしないと(neighbor send-community both コマンドまたは neighbor send-community extended コマンドを使用)、ネットワークにおける MDT の使用がサポートされません。
出力および入力マルチキャスト レプリケーション モードの設定
出力または入力マルチキャスト レプリケーション モードを設定するには、次のコマンドを使用します。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip multicast hardware-switching replication-mode {egress | ingress} または |
入力マルチキャスト レプリケーション モードを設定し、レプリケーション モードの自動検出をディセーブルにします(デフォルトではイネーブル)。 |
Router(config)# no ip multicast hardware-switching replication-mode {egress | ingress} |
システムを自動検出モードに戻します。 |
ステップ 3 |
Router(config)# show platform software multicast ip capability |
設定を確認します。 |
次に、入力レプリケーション モードが出力レプリケーション モードにされた場合の実行コンフィギュレーションのサンプル出力を示します。
Router(config)# ip multicast hardware-switching replication-mode ingress
Warning: This command will change the replication mode for all address families.
Router(config)# do sh runn | i ingress
ip multicast hardware-switching replication-mode ingress
ipv6 multicast hardware-switching replication-mode ingress
Router(config)# ip multicast hardware-switching replication-mode egress
Warning: This command will change the replication mode for all address families.
Warning: Egress replication-mode forced by CLI in presence of an egress-incapable card
*Apr 19 05:07:30.180: %CONST_MFIB_RP-6-REPLICATION_MODE_CHANGE: Replication Mode Change Detected.
Current system replication mode is Egress
Router(config)# do sh runn | i egress
ip multicast hardware-switching replication-mode egress
次に、マルチキャスト レプリケーション モードを確認する例を示します。
Router# show platform software multicast ip capability
Current System HW Replication Mode : Egress
Auto-detection of Replication Mode : ON
Slot Replication-Capability Replication-Mode
現在のレプリケーション モードが出力である場合、またはいずれかのスイッチング モジュールで出力レプリケーション モードが可能になっている場合は、スケジュールされているメンテナンス期間中に入力レプリケーション モードを設定し、カスタマー トラフィックの混乱を最低限に抑えてください。
入力マルチキャスト レプリケーション モードを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip multicast hardware-switching replication-mode {egress | ingress} |
入力マルチキャスト レプリケーション モードを設定し、レプリケーション モードの自動検出をディセーブルにします(デフォルトではイネーブル)。 |
Router(config)# no ip multicast hardware-switching replication-mode ingress |
レプリケーション モードの自動検出をイネーブルにします。 |
ステップ 3 |
Router(config)# show platform software multicast ip capability |
設定を確認します。 |
次に、入力マルチキャスト レプリケーション モードを設定し、設定を確認する例を示します。
Router(config)# ip multicast hardware-switching replication-mode ingress
Router(config)# show platform software multicast ip capability
Current System HW Replication Mode : Egress
Auto-detection of Replication Mode : ON
Slot Replication-Capability Replication-Mode
VRF エントリの設定
VRF エントリを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip vrf vrf_name |
VRF ルーティング テーブル エントリおよびシスコ エクスプレス フォワーディング(CEF)テーブル エントリを設定し、VRF コンフィギュレーション モードを開始します。 |
Router(config)# no ip vrf vrf_name |
VRF エントリを削除します。 |
ステップ 3 |
Router(config-vrf)# do show ip vrf vrf_name |
設定を確認します。 |
次に、blue という名前の VRF を設定し、設定を確認する例を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# ip vrf blue
Router(config-vrf)# do show ip vrf blue
Name Default RD Interfaces
ルート識別子の設定
ルート識別子を設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router(config-vrf)#
rd
route_distinguisher
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VPN IPv4 プレフィックスのルート識別子を指定します。 |
Router(config-vrf)# no rd route_distinguisher |
ルート識別子を削除します。 |
ステップ 2 |
Router(config-vrf)# do show ip vrf vrf_name |
設定を確認します。 |
ルート識別子の設定時には、次のうちいずれかの形式でルート識別子を入力してください。
• 16 ビット AS 番号:32 ビット番号(101:3)
• 32 ビット IPv4 アドレス:16 ビット番号(192.168.122.15:1)
次に、ルート識別子として 55:1111 を設定し、設定を確認する例を示します。
Router(config-vrf)# rd 55:1111
Router(config-vrf)# do show ip vrf blue
Name Default RD Interfaces
ルートターゲット拡張コミュニティの設定
ルートターゲット拡張コミュニティを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router(config-vrf)# route-target [ import | export | both ] route_target_ext_community |
ルートターゲット拡張コミュニティを VRF 用に設定します。 |
Router(config-vrf)# no route-target [[ import | export | both ] route_target_ext_community ] |
ルートターゲット拡張コミュニティを削除します。 |
ステップ 2 |
Router(config-vrf)# do show ip vrf detail |
設定を確認します。 |
ルートターゲット拡張コミュニティの設定時には、次に注意してください。
• import :ターゲット VPN 拡張コミュニティからルーティング情報をインポートします。
• export :ターゲット VPN 拡張コミュニティにルーティング情報をエクスポートします。
• both :インポートおよびエクスポートを行います。
• route_target_ext_community :48 ビット ルートターゲット拡張コミュニティを VRF に追加します。次のうちいずれかの形式で数値を入力してください。
– 16 ビット AS 番号:32 ビット番号(101:3)
– 32 ビット IPv4 アドレス:16 ビット番号(192.168.122.15:1)
次に、インポートおよびエクスポートのルートターゲット拡張コミュニティとして 55:1111 を設定し、設定を確認する例を示します。
Router(config-vrf)# route-target both 55:1111
Router(config-vrf)# do show ip vrf detail
VRF blue; default RD 55:1111; default VPNID <not set>
VRF Table ID = 1
No interfaces
Connected addresses are not in global routing table
Export VPN route-target communities
RT:55:1111
Import VPN route-target communities
RT:55:1111
No import route-map
No export route-map
CSC is not configured.
デフォルト MDT の設定
デフォルト MDT を設定するには、次の作業を行います。
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Router(config-vrf)# mdt default group_address |
デフォルト MDT を設定します。 |
Router(config-vrf)# no mdt default |
デフォルト MDT を削除します。 |
デフォルト MDT の設定時には、次に注意してください。
• group_address は、デフォルト MDT グループのマルチキャスト IPv4 アドレスです。このアドレスは MVRF コミュニティの識別子として動作します。この同一グループ アドレスで設定したすべてのプロバイダー エッジ(PE)ルータはグループのメンバーになり、メンバーは、グループの他のメンバーが送信した PIM 制御メッセージおよびマルチキャスト トラフィックを受信します。
• これと同じデフォルト MDT を各 PE ルータで設定しないと、PE ルータは、この特定 MVRF のマルチキャスト トラフィックを受信できません。
次に、デフォルト MDT として 239.1.1.1 を設定する例を示します。
Router(config-vrf)# mdt default 239.1.1.1
データ MDT の設定(任意)
任意のデータ MDT を設定するには、次の作業を行います。
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Router(config-vrf)# mdt data group_address wildcard_bits [ threshold threshold_value ] [ list access_list ] |
(任意)マルチキャスト アドレスの指定範囲にデータ MDT を設定します。 |
Router(config-vrf)# no mdt data |
データ MDT を削除します。 |
任意のデータ MDT の設定時には、次に注意してください。
• group_address1 :マルチキャスト グループ アドレス。アドレスは 224.0.0.1 ~ 239.255.255.255 の範囲にすることができますが、デフォルト MDT に割り当てたアドレスと重複させることはできません。
• wildcard_bits :可能なアドレスの範囲を作成するため、マルチキャスト グループ アドレスに適用するワイルドカード ビットマスク。これにより、各 MVRF がサポートできるデータ MDT の最大数を制限できます。
• threshold threshold_value :(任意)しきい値をキロビット単位で定義します。このしきい値を超えると、マルチキャスト トラフィックはデフォルト MDT からデータ MDT に切り替わります。 threshold_value パラメータの範囲は 1 ~ 4294967 キロビットです。
• list access_list :(任意)このトラフィックに適用するアクセス リスト名または番号を指定します。
次に、データ MDT を設定する例を示します。
Router(config-vrf)# mdt data 239.1.2.0 0.0.0.3 threshold 10
データ MDT ロギングのイネーブル化
データ MDT ロギングをイネーブルにするには、次の作業を行います。
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Router(config-vrf)# mdt log-reuse |
(任意)データ MDT が再利用されるたびに Syslog メッセージを生成することで、データ MDT 再利用情報の記録をイネーブルにします。データ MDT が頻繁に再利用される場合は、 mdt data コマンドで使用されるワイルドカード ビットマスクのサイズを増やして、データ MDT の許可数を増やす必要があります。 |
Router(config-vrf)# no log-reuse |
データ MDT ロギングをディセーブルにします。 |
次に、データ MDT ロギングをイネーブルにする例を示します。
Router(config-vrf)# mdt log-reuse
設定例
次のコンフィギュレーション ファイルからの抜粋は、VRF の範囲の典型的な VRF 設定を示しています。表示を簡素にするため、先頭の VRF および末尾の VRF だけを示します。
route-target export 200:1
route-target import 200:1
route-target export 200:2
route-target import 200:2
route-target export 200:3
route-target import 200:3
route-target export 200:249
route-target import 200:249
mdt data 239.1.1.128 0.0.0.7
VRF 情報の表示
ルータで設定されているすべての VRF を表示するには、 show ip vrf コマンドを使用します。
Name Default RD Interfaces
green 1:52 GigabitEthernet6/1
red 200:1 GigabitEthernet1/1
すべての MVRF 用に現在設定されている MDT に関する情報を表示するには、 show ip pim mdt コマンドを使用します。次に、このコマンドの典型的な出力例を示します。
MDT Group Interface Source VRF
* 227.1.0.1 Tunnel1 Loopback0 BIDIR01
* 227.2.0.1 Tunnel2 Loopback0 BIDIR02
* 228.1.0.1 Tunnel3 Loopback0 SPARSE01
* 228.2.0.1 Tunnel4 Loopback0 SPARSE02
(注) 特定トンネル インターフェイスに関する情報を表示するには、show interface tunnel コマンドを使用します。トンネル インターフェイスの IPv4 アドレスは、MVRF のデフォルト MDT のマルチキャスト グループ アドレスです。
特定の VRF に関するエントリを表示するには、 show platform software multicast ip vrf コマンドを使用します。次に、このコマンドの典型的な出力例を示します。
Router# show platform software multicast ip vrf
State: H - Hardware Installed, I - Install Pending, D - Delete Pending,
VRF VPN-ID MDT INFO MDT Type State
BIDIR01HWRP 1 (10.10.10.9, 227.1.0.1) default H
BIDIR01SWRP 2 (10.10.10.9, 227.2.0.1) default H
SPARSE01HWRP 3 (10.10.10.9, 228.1.0.1) default H
SPARSE01SWRP 4 (10.10.10.9, 228.2.0.1) default H
red 5 (6.6.6.6, 234.1.1.1) default H
red 5 (131.2.1.2, 228.1.1.75) data (send) H
red 5 (131.2.1.2, 228.1.1.76) data (send) H
red 5 (131.2.1.2, 228.1.1.77) data (send) H
red 5 (131.2.1.2, 228.1.1.78) data (send) H
特定 VRF のルーティング情報を表示するには、 show ip route vrf コマンドを使用します。
Router# show ip route vrf red
Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP
D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area
* - candidate default, U - per-user static route, o - ODR
P - periodic downloaded static route
Gateway of last resort is not set
2.0.0.0/32 is subnetted, 1 subnets
C 2.2.2.2 is directly connected, Loopback2
3.0.0.0/32 is subnetted, 1 subnets
B 3.3.3.3 [200/0] via 3.1.1.3, 00:20:09
C 21.0.0.0/8 is directly connected, GigabitEthernet3/16
B 22.0.0.0/8 [200/0] via 3.1.1.3, 00:20:09
特定 MVRF のマルチキャスト ルーティング テーブルおよびトンネル インターフェイスに関する情報を表示するには、 show ip mroute vrf コマンドを使用します。次に、BIDIR01 という名前の MVRF の典型的な出力例を示します。
Router# show ip mroute vrf BIDIR01
IP Multicast Routing Table
Flags: D - Dense, S - Sparse, B - Bidir Group, s - SSM Group, C - Connected,
L - Local, P - Pruned, R - RP-bit set, F - Register flag,
T - SPT-bit set, J - Join SPT, M - MSDP created entry,
X - Proxy Join Timer Running, A - Candidate for MSDP Advertisement,
U - URD, I - Received Source Specific Host Report, Z - Multicast Tunnel
Y - Joined MDT-data group, y - Sending to MDT-data group
Outgoing interface flags: H - Hardware switched
Interface state: Interface, Next-Hop or VCD, State/Mode
(*, 228.1.0.1), 00:16:25/stopped, RP 10.10.10.12, flags: SJCF
Incoming interface: Tunnel1, RPF nbr 10.10.10.12, Partial-SC
GigabitEthernet3/1.3001, Forward/Sparse-Dense, 00:16:25/00:02:49, H
(6.9.0.100, 228.1.0.1), 00:14:13/00:03:29, flags: FT
Incoming interface: GigabitEthernet3/1.3001, RPF nbr 0.0.0.0, RPF-MFD
Tunnel1, Forward/Sparse-Dense, 00:14:13/00:02:46, H
(注) この例では、show ip mroute vrf コマンドによって、VRF が使用している MDT Tunnel Interface(MTI)が Tunnel1 であることが示されます。
IPv4 マルチキャスト ルーティングのグローバルなイネーブル化
IPv4 マルチキャスト ルーティングをグローバルにイネーブルにするには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# ip multicast-routing |
IPv4 マルチキャスト ルーティングをグローバルにイネーブルにします。 |
Router(config)# no ip multicast-routing |
IPv4 マルチキャスト ルーティングをグローバルにディセーブルにします。 |
次に、IPv4 マルチキャスト ルーティングをグローバルにイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# ip multicast-routing
IPv4 マルチキャスト VRF ルーティングのイネーブル化
IPv4 マルチキャスト VRF ルーティングをイネーブルにするには、次の作業を行います。
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Router(config)# ip multicast-routing vrf vrf_name [ distributed ] |
IPv4 マルチキャスト VRF ルーティングをイネーブルにします。 |
Router(config)# no ip multicast-routing |
IPv4 マルチキャスト VRF ルーティングをディセーブルにします。 |
IPv4 マルチキャスト VRF ルーティングをイネーブルにするときは、次の情報に注意してください。
• vrf_name :マルチキャスト ルーティングの特定 VRF を指定します。 vrf_name には、「マルチキャスト VPN ルーティング/転送インスタンスの設定」で指定したように、以前作成した VRF を指定する必要があります。
• distributed :(任意)Multicast Distributed Switching(MDS)をイネーブルにします。
次に、IPv4 マルチキャスト VRF ルーティングをイネーブルにする例を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# ip multicast-routing vrf blue
PIM VRF 登録メッセージ送信元アドレスの設定
PIM VRF 登録メッセージ送信元アドレスを設定するには、次の作業を行います。
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Router(config)#
ip pim
vrf
vrf_name
register-source
interface_type interface_number
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(任意)PIM VRF 登録メッセージ送信元アドレスを設定します。登録メッセージの送信元としてループバック インターフェイスを設定できます。 |
Router(config)# no ip pim vrf vrf_name register-source |
IPv4 マルチキャスト VRF ルーティングをディセーブルにします。 |
次に、PIM VRF 登録メッセージ送信元アドレスを設定する例を示します。
Router(config)# ip pim vrf blue register-source loopback 3
PIM VRF ランデブー ポイント(RP)アドレスの指定
PIM VRF Rendezvous Point(RP; ランデブー ポイント)アドレスを指定するには、次の作業を行います。
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Router(config)#
ip pim
vrf
vrf_name
rp-address
rp_address [
access_list ] [
override ] [
bidir ]
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PIM RP IPv4 アドレスを指定します(スパース PIM ネットワークの場合必須)。 |
Router(config)# no ip pim vrf vrf_name rp-address rp_address |
PIM RP IPv4 アドレスをクリアします。 |
PIM VRF RP アドレスの指定時には、次の情報に注意してください。
• vrf vrf_name :(任意)使用する特定 VRF インスタンスを指定します。
• rp_address :PIM RP ルータのユニキャスト IP アドレス。
• access_list :(任意)RP のマルチキャスト グループを定義するアクセス リストの番号または名前。
• override :(任意)RP アドレスが競合する場合は、この特定 RP により、Auto-RP で学習した RP を上書きします。
• bidir :(任意) access_list 引数で指定したマルチキャスト グループが双方向モードで動作することを指定します。このオプションを指定しない場合、グループは PIM スパース モードで動作します。
• できるだけ双方向モードを使用してください。拡張性がより適切になります。
次に、PIM VRF RP アドレスを指定する例を示します。
Router(config)# ip pim vrf blue rp-address 198.196.100.33
Multicast Source Discovery Protocol(MSDP)ピアの設定
Multicast Souce Discovery Protocol(MSDP)ピアを設定するには、次の作業を行います。
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Router(config)# ip msdp vrf vrf_name peer { peer_name | peer_address } [ connect-source interface_type interface_number ] [ remote-as ASN ] |
(任意)MSDP ピアを設定します。 |
Router(config)# no ip msdp vrf vrf_name peer { peer_name | peer_address } [ connect-source interface_type interface_number ] [ remote-as ASN ] |
PIM RP IPv4 アドレスをクリアします。 |
MSDP ピアの設定時には、次の情報に注意してください。
• vrf vrf_name :使用する特定 VRF インスタンスを指定します。
• { peer_name | peer_address }:MSDP ピア ルータのドメイン ネーム システム(DNS)名または IP アドレス。
• connect-source interface_type interface_number :プライマリ アドレスが TCP 接続の送信元 IP アドレスとして使用されるインターフェイスのインターフェイス名および番号。
• remote-as ASN :(任意)MSDP ピアの自律システム番号。これは表示専用です。
次に、MSDP ピアを設定する例を示します。
Router(config)# ip msdp peer router.cisco.com connect-source fastethernet 1/1 remote-as 109
IPv4 マルチキャスト ヘッダー ストレージのイネーブル化
IPv4 マルチキャスト ヘッダー ストレージをイネーブルにするには、次の作業を行います。
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Router(config)# ip multicast vrf vrf_name cache-headers [ rtp ] |
(任意)IPv4 マルチキャスト パケット ヘッダーを保存する循環バッファをイネーブルにします。 |
Router(config)# no ip multicast vrf vrf_name cache-headers [ rtp ] |
IPv4 マルチキャスト ヘッダー ストレージをディセーブルにします。 |
IPv4 マルチキャスト ヘッダー ストレージをイネーブルにするときは、次の情報に注意してください。
• vrf vrf_name :指定した VRF にバッファが割り当てられます。
• rtp :(任意)Real-Time Transport Protocol(RTP)ヘッダーもキャッシュします。
• バッファは show ip mpacket コマンドで表示できます。
次に、IPv4 マルチキャスト ヘッダー ストレージをイネーブルにする例を示します。
Router(config)# ip multicast vrf blue cache-headers
マルチキャスト ルートの最大数の設定
マルチキャスト ルートの最大数を設定するには、次の作業を行います。
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Router(config)# ip multicast vrf vrf_name route-limit limit [ threshold ] |
(任意)マルチキャスト トラフィックに追加できるマルチキャスト ルートの最大数を設定します。 |
Router(config)# no ip multicast vrf vrf_name route-limit limit [ threshold ] |
設定されているルートの最大数をクリアします。 |
ルートの最大数の設定時には、次の情報に注意してください。
• vrf vrf_name :指定した VRF のルート制限をイネーブルにします。
• limit :追加できるマルチキャスト ルートの数。範囲は 1 ~ 2147483647 であり、デフォルトは 2147483647 です。
• threshold :(任意)警告メッセージが発生する前に追加できるマルチキャスト ルートの数。有効範囲は、1 から limit パラメータの値までです。
次に、マルチキャスト ルートの最大数を設定する例を示します。
Router(config)# ip multicast vrf blue route-limit 200000 20000
IPv4 マルチキャスト ルート フィルタリングの設定
IPv4 マルチキャスト ルート フィルタリングを設定するには、次の作業を行います。
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Router(config)# ip multicast mrinfo-filter access_list |
(任意)アクセス リストで IPv4 マルチキャスト ルート フィルタリングを設定します。 access_list パラメータは、アクセス リストの名前または番号にすることができます。 |
Router(config)# no ip multicast mrinfo-filter |
設定されているルートの最大数をクリアします。 |
次に、IPv4 マルチキャスト ルート フィルタリングを設定する例を示します。
Router(config)# ip multicast mrinfo-filter 101
設定例
次のコンフィギュレーション ファイルからの抜粋は、VRF の範囲でマルチキャスト ルーティングをサポートするために必要となる最低限の設定を示しています。表示を簡素にするため、先頭の VRF および末尾の VRF だけを示します。
ip multicast-routing vrf lite
ip multicast-routing vrf vpn201
ip multicast-routing vrf vpn202
ip multicast-routing vrf vpn249
ip multicast-routing vrf vpn250
ip multicast cache-headers
ip pim rp-address 192.0.1.1
ip pim vrf lite rp-address 104.1.1.2
ip pim vrf vpn201 rp-address 192.200.1.1
ip pim vrf vpn202 rp-address 192.200.2.1
ip pim vrf vpn249 rp-address 192.200.49.6
ip pim vrf vpn250 rp-address 192.200.50.6
IPv4 マルチキャスト VRF ルーティング情報の表示
特定 MVRF の既知の PIM ネイバーを表示するには、 show ip pim vrf neighbor コマンドを使用します。
Router# show ip pim vrf 98 neighbor
Neighbor Interface Uptime/Expires Ver DR
40.60.0.11 Tunnel96 00:00:31/00:01:13 v2 1 / S
40.50.0.11 Tunnel96 00:00:54/00:00:50 v2 1 / S
マルチキャスト ルーティング設定の概要
IPv4 マルチキャスト トラフィック用に使用されているすべてのインターフェイスでは、Protocol Independent Multicast(PIM)を設定する必要があります。VPN マルチキャスト環境では、最低でも次のインターフェイスのすべてで PIM をイネーブルにする必要があります。
• バックボーンに接続されているプロバイダー エッジ(PE)ルータの物理インターフェイス。
• BGP ピアリングに使用されているループバック インターフェイス。
• スパース PIM ランデブー ポイント(RP)ルータ アドレスの送信元として使用されているループバック インターフェイス。
マルチキャスト トラフィックを転送する予定のインターフェイスと MVRF を関連付ける必要もあります。
マルチキャスト トラフィックの送受信を行うすべてのルータでは、BGP を設定して動作させる必要があります。BGP 拡張コミュニティをイネーブルにしないと( neighbor send-community both コマンドまたは neighbor send-community extended コマンドを使用)、ネットワークにおける MDT の使用がサポートされません。
インターフェイスでの PIM の設定
インターフェイスで PIM を設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# interface type { slot/port | number } |
特定のインターフェイスのインターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)#
ip pim {
dense-mode |
sparse-mode |
sparse-dense-mode }
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インターフェイスで PIM をイネーブルにします。 |
Router(config)# no ip pim [ dense-mode | sparse-mode | sparse-dense-mode ] |
PIM をディセーブルにします。 |
インターフェイスでの PIM の設定時には、次の情報に注意してください。
• 次のうちいずれかのインターフェイス タイプを使用できます。
– バックボーンに接続されているプロバイダー エッジ(PE)ルータの物理インターフェイス。
– BGP ピアリングに使用されているループバック インターフェイス。
– sparse PIM ネットワーク Rendezvous Point(RP; ランデブー ポイント)アドレスの送信元として使用されているループバック インターフェイス
• PIM モードは次のとおりです。
– dense-mode :動作のデンス モードをイネーブルにします。
– sparse-mode :動作のスパース モードをイネーブルにします。
– sparse-dense-mode :マルチキャスト グループで RP ルータが定義されている場合はスパース モード、RP ルータが定義されていない場合はデンス モードをイネーブルにします。
• バックボーンに接続されているすべての PE ルータの物理インターフェイス、および BGP ピアリングに使用されるか RP アドレス指定の送信元として使用されるすべてのループバック インターフェイスには、 sparse-mode を使用してください。
次に、物理インターフェイス上で PIM スパース モードを設定する例を示します。
Router# configure terminal
interface gigabitethernet 10/1
Router(config-if)# ip pim sparse-mode
次に、ループバック インターフェイス上で PIM スパース モードを設定する例を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# interface loopback 2
Router(config-if)# ip pim sparse-mode
IPv4 VRF 転送用インターフェイスの設定
IPv4 VRF 転送用インターフェイスを設定するには、次の作業を行います。
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Router(config-if)#
ip vrf forwarding
vrf_name
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(任意)指定した VRF ルーティング テーブルおよび転送テーブルをインターフェイスと関連付けます。指定しない場合、インターフェイスのデフォルトはグローバル ルーティング テーブルの使用になります。 (注) インターフェイスでこのコマンドを入力すると、IP アドレスが削除されるので、IP アドレスを再設定してください。 |
Router(config-if)# no ip vrf forwarding [ vrf_name ] |
IPv4 VRF 転送をディセーブルにします。 |
次に、VRF blue 転送用インターフェイスを設定する例を示します。
Router(config-if)# ip vrf forwarding blue
設定例
次のコンフィギュレーション ファイルからの抜粋は、単一 MVRF 上でマルチキャスト トラフィックをイネーブルにするインターフェイス設定、および関連 MVRF 設定を示しています。
ip multicast-routing vrf blue
route-target export 100:27
route-target import 100:27
interface GigabitEthernet1/1
description blue connection
ip address 192.168.2.26 255.255.255.0
interface GigabitEthernet1/15
description Backbone connection
ip address 10.8.4.2 255.255.255.0
ip pim vrf blue rp-address 192.7.25.1
ip pim rp-address 10.1.1.1