トラフィック ストーム制御の概要
トラフィック ストームは、パケットが LAN でフラッディングする場合に発生するもので、過剰なトラフィックを生成し、ネットワークのパフォーマンスを低下させます。トラフィック ストーム制御機能は、LAN ポートが、物理インターフェイスのブロードキャスト、マルチキャスト、またはユニキャスト トラフィック ストームによって中断されるのを防ぎます。
トラフィック ストーム制御(トラフィック抑制)は着信トラフィック レベルを、1 秒ごとのトラフィック ストーム制御でモニタします。そのインターバルの中で、トラフィック レベルを、設定したトラフィック ストーム制御レベルと比較します。トラフィック ストーム制御レベルは、ポートの利用可能な帯域幅全体に対する割合です。各ポートには、すべてのタイプのトラフィック(ブロードキャスト、マルチキャスト、およびユニキャスト)用に使用されている単一のトラフィック ストーム制御レベルがあります。
トラフィック ストーム制御は、1 秒ごとのトラフィック ストーム制御インターバルで、トラフィック ストーム制御をイネーブルにする各トラフィック タイプのレベルをモニタします。1 つのインターバルの中で、トラフィック ストーム制御がイネーブルにされている入力トラフィックが、ポートで設定されているトラフィック ストーム制御レベルに達する場合、トラフィック ストーム制御は、そのトラフィック ストーム制御インターバルが終了するまでトラフィックを廃棄します。
図 43-1 は、一定時間における LAN インターフェイスのブロードキャスト トラフィック パターンを示しています。この例では、トラフィック ストーム制御が時間 T1 と T2 の間、および T4 と T5 の間で発生します。これらのインターバル中に、ブロードキャスト トラフィックの量が設定済みのしきい値を超過しています。
図 43-1 ブロードキャストの抑制
トラフィック ストーム制御しきい値の数値とタイム インターバルの組み合わせにより、トラフィック ストーム制御アルゴリズムがさまざまな粒度で機能します。しきい値が高いほど、通過できるパケット数が多くなります。
Cisco 7600 シリーズ ルータ上のトラフィック ストーム制御は、ハードウェアに実装されています。LAN インターフェイスからスイッチング バスへ流れるパケットはトラフィック ストーム制御回路でモニタされます。パケットの宛先アドレスの個別/グループ ビットを使用すると、トラフィック ストーム制御回路はパケットがユニキャストまたはブロードキャストの場合、1 秒のインターバル内の現在のパケット数を追跡します。この値がしきい値に達すると、以降のパケットは排除されます。
ハードウェアによるトラフィック ストーム制御では、トラフィックの測定に帯域ベースの方式が使用されるので、制御されたトラフィックが使用できる総帯域幅に対する割合の設定が、実装上の最も重要な要素になります。パケットは均等な間隔で着信するわけではないので、制御されたトラフィック アクティビティが測定される 1 秒のインターバルによって、トラフィック ストーム制御の動作が影響を受ける場合があります。
次に、トラフィック ストーム制御動作の例を示します。
• ブロードキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにし、ブロードキャスト トラフィックが 1 秒間のトラフィック ストーム制御インターバルの間に制御レベルを超える場合、トラフィック ストーム制御はそのトラフィック ストーム制御インターバルが終了するまで、すべてのブロードキャスト トラフィックをドロップします。
• ブロードキャストおよびマルチキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにし、そのブロードキャストとマルチキャスト トラフィックの合計が 1 秒間のトラフィック ストーム制御インターバルの間に制御レベルを超える場合、トラフィック ストーム制御はそのトラフィック ストーム制御インターバルが終了するまで、すべてのブロードキャストおよびマルチキャスト トラフィックをドロップします。
• ブロードキャストおよびマルチキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにし、ブロードキャスト トラフィックが 1 秒間のトラフィック ストーム制御インターバルの間に制御レベルを超える場合、トラフィック ストーム制御はそのトラフィック ストーム制御インターバルが終了するまで、すべてのブロードキャストおよびマルチキャスト トラフィックをドロップします。
• ブロードキャストおよびマルチキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにし、マルチキャスト トラフィックが 1 秒間のトラフィック ストーム制御インターバルの間に制御レベルを超える場合、トラフィック ストーム制御はそのトラフィック ストーム制御インターバルが終了するまで、すべてのブロードキャストおよびマルチキャスト トラフィックをドロップします。
トラフィック ストームの検出および制御
このようなストーム イベントを検出して制御するメカニズムを、ストーム制御またはブロードキャスト抑制と呼びます。
トラフィック ストームは、次のことが発生した場合に検出されます。
• ポートが storm-control コマンドで設定された帯域幅の値を超えるマルチキャストおよびブロードキャスト トラフィックを受信した場合。
• show interface gig < slot/port > counters storm-control コマンドで表示される TotalSuppDiscards カウンタの値が増加した場合。
Cisco IOS Release 15.0(1)S には、67xx、6196、ES20 および ES+ ラインカードで次のストーム制御機能の強化が含まれています。
• ポートチャネル インターフェイス:ポートチャネル インターフェイスのサポート。
• シャットダウン:ストームが検出され、ストーム トラフィックが同意済みのしきい値を超えた場合、影響を受けるインターフェイスは error disable 状態に移行します。トラフィックのしきい値は、ポートの合計帯域幅に対するパーセンテージ(%BW)として算出されます。error disable の検出およびリカバリ機能、または shut/no shut コマンドを使用して、影響を受けるインターフェイス上のポートを再度イネーブルにします。
• トラップ:ストームの検出時に、SNMP トラップを送信できます。
トラフィック ストーム制御のデフォルト設定
トラフィック ストーム制御は、デフォルトではディセーブルです。
設定時の注意事項および制約事項
トラフィック ストーム制御を設定する場合、次の注意事項および制約事項に従ってください。
• マルチキャストおよびユニキャストのストーム制御は、WS-X6148-RJ-45、WS-X6148-RJ21、WS-X6196-RJ21、6196-21AF、WS-X6148X2-RJ-45、WS-X6548-RJ-45、WS-X6548-RJ21 では機能しません。これらのラインカード(ポート ASIC COIL/Pentamak)でサポートされるのは、ブロードキャスト ストーム制御だけです。
• WS-X6548-GE-TX、WS-X6548V-GE-TX、WS-X6148-GE-TX、WS-X6148V-GE-TX スイッチング モジュールでは、トラフィック ストーム制御をサポートしません。
• ES+ ラインカードでは、ユニキャスト パケットのストーム制御をサポートしません。
• ルータは、マルチキャストとユニキャストのトラフィック ストーム制御をギガビットおよび 10 ギガビット イーサネット LAN ポートでのみサポートします。
• ルータは、ブロードキャスト トラフィック ストーム制御をすべての LAN ポートでサポートします。
• BPDU 以外、トラフィック ストーム制御は、制御トラフィックとデータ トラフィックを区別しません。
• マルチキャスト抑制をイネーブルにすると、次のモジュールでマルチキャスト抑制しきい値が超過した場合に、トラフィック ストーム制御によって BPDU が抑制されます。
– WS-X6748-SFP
– WS-X6724-SFP
– WS-X6748-GE-TX
– WS-X6748-GE-TX
– WS-X6704-10GE
– WS-SUP32-GE-3B
– WS-SUP32-10GE-3B
上記のモジュールでマルチキャスト抑制をイネーブルにする場合は、BPDU を受信する必要がある STP 保護されたポートには、トラフィック ストーム制御を設定しないでください。上記のモジュール以外では、BPDU はトラフィック ストーム制御によって抑制されません。
• 6196 ラインカードでは、ブロードキャスト トラフィックの抑制をサポートしますが、マルチキャスト トラフィックはサポートしません。
• ES20 および ES+ ラインカードのポートチャネル インターフェイスでのストーム制御は、Cisco IOS Release 15.0(1)S でサポートされます。
• ユニキャスト トラフィックは、67XX ラインカードでサポートされますが、ES20 および ES40 ラインカードではサポートされていません。
• ポートチャネル インターフェイス上のストーム制御設定に対して行われた追加または変更は、ポートチャネル メンバー リンク上で自動的に更新されます。
• メンバー リンクでは、ストーム制御の設定または削除はできません。
• インターフェイスとポートチャネルのストーム制御設定が同様の場合は、インターフェイスをポートチャネルに追加できます。
– インターフェイスをポートチャネルに追加する前に、メンバーリンクをまとめてポートチャネルを形成してからポートチャネルを設定するか、ポートチャネルと一致するようにインターフェイス上のストーム制御設定を変更することができます。
• default interface コマンドを 2 回実行すると、ストーム制御機能がメンバーリンク インターフェイスから削除されます。
トラフィック ストーム制御のイネーブル化
トラフィック ストーム制御をイネーブルにするには、次の作業を行います。
|
|
|
ステップ 1 |
Router(config)# interface {{ type slot/port } | { port-channel number }} |
設定するインターフェイスを選択します。 |
ステップ 2 |
Router(config)# snmp-server enable traps storm-control trap-rate traps per minute |
(任意)SNMP ストーム制御トラップ パラメータをイネーブルにします。trap-rate の範囲は、1 分あたり 0 ~ 1000 トラップです。ただし、ストーム制御用に生成されるトラップの数は、1 分あたり 6 を超えることはできません(設計上)。 |
ステップ 3 |
Router(config-if)# storm-control broadcast level level [. level ] |
インターフェイス上のブロードキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにし、トラフィック ストーム制御レベルを設定し、そのトラフィック ストーム制御レベルを、インターフェイス上でイネーブルにされているすべてのトラフィック ストーム制御モードに適用します。 |
Router(config-if)# no storm-control broadcast level |
インターフェイス上のブロードキャスト トラフィック ストーム制御をディセーブルにします。 |
ステップ 4 |
Router(config-if)# storm-control multicast level level [. level ] |
インターフェイス上のマルチキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにし、トラフィック ストーム制御レベルを設定し、そのトラフィック ストーム制御レベルを、インターフェイス上でイネーブルにされているすべてのトラフィック ストーム制御モードに適用します。 コマンドは、ギガビット イーサネット インターフェイスでのみサポートされています。 |
Router(config-if)# no storm-control multicast level |
インターフェイス上のマルチキャスト トラフィック ストーム制御をディセーブルにします。 |
ステップ 5 |
Router(config-if)# storm-control unicast level level [. level ] |
インターフェイス上のユニキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにし、トラフィック ストーム制御レベルを設定し、そのトラフィック ストーム制御レベルを、インターフェイス上でイネーブルにされているすべてのトラフィック ストーム制御モードに適用します。 コマンドは、ギガビット イーサネット インターフェイスでのみサポートされています。 |
Router(config-if)# no storm-control unicast level |
インターフェイス上のユニキャスト トラフィック ストーム制御をディセーブルにします。 |
ステップ 6 |
Router(config-if)# storm-control action { shutdown | trap } |
|
ステップ 7 |
|
|
ステップ 8 |
Router(config-if)# end |
コンフィギュレーション モードを終了します。 |
ステップ 9 |
Router# show running-config interface |
設定を確認します。 |
トラフィック ストーム制御レベルを設定する場合、次の点に注意してください。
• トラフィック ストーム制御は、EtherChannel(ポート チャネル インターフェイス)に設定できます。
• トラフィック ストーム制御を、EtherChannel のメンバであるポートに設定しないでください。トラフィック ストーム制御を EtherChannel のメンバとして設定されているポートに設定すると、そのポートは中断状態になります。
• レベルをインターフェイスの帯域幅全体に対する割合として指定します。
– レベルは 0 ~ 100 の範囲で指定できます。
– 任意で、レベルの小数部を 0 ~ 99 の範囲で指定できます。
– 100% は、トラフィック ストーム制御がないことを意味します。
– 0.0% は、すべてのトラフィックを抑制します。
(注) 次のモジュールでは、0.03 未満のレベル値になるとトラフィックすべてを抑制します。
- WS-X6704-10GE
- WS-X6748-SFP
- WS-X6748-GE-TX
ハードウェアの制限およびサイズの異なるパケットがカウントされる方式のため、レベルの割合は概数になります。着信トラフィックを構成するフレームのサイズにより、実際に実行されるレベルは、設定レベルと数パーセント程度異なる場合があります。
次に、ギガビット イーサネット インターフェイス 3/16 でマルチキャスト トラフィック ストーム制御をイネーブルにして、トラフィック ストーム制御レベルを 70.5% に設定する例を示します。この設定により、トラフィック ストーム制御レベルが、ギガビット イーサネット インターフェイス 3/16 でイネーブルになっているすべてのトラフィック ストーム制御モードに適用されます。
Router# configure terminal
Router(config)# interface gigabitethernet 3/16
Router(config-if)# storm-control multicast level 70.5
トラフィック ストーム制御設定の表示
トラフィック ストーム制御情報を表示するには、 表 43-1 に記載されているコマンドを使用します。
表 43-1 トラフィック ストーム制御のステータスと設定の表示用コマンド
|
|
Router# show interfaces [{ type slot/port } | { port-channel number }] switchport |
すべてのレイヤ 2 LAN ポートまたは特定のレイヤ 2 LAN ポートの管理および動作ステータスを表示します。 |
Router# show interfaces [{ type1 slot/port } | { port-channel number }] counters storm-control Router# show interfaces counters storm-control [ module slot_number ] |
すべてのインターフェイス上、または指定のインターフェイス上で、3 つのトラフィック ストーム制御モードすべてで廃棄された合計パケット数を表示します。 |
(注) show interfaces [{interface_type slot/port} | {port-channel number}] counters コマンドは、廃棄数を表示しません。廃棄数を表示するには、storm-control キーワードを使用する必要があります。